コーラ小説
あなたはどちらのこーらが
おすきですか
丹原 匡彦
穴がぽっかりと開いていた.
中を覗いてみたのだが,暗くてよく見えない.
たまたま,男が胸のポケットに財布を入れていたのがよくなかった.
はっとする間もなく,財布は穴の奥深くに消えていた.
どぼんという音がした.
ちっとも働かない頭で男は考えてみた.
ラッキーとは言えない状況だ.
脳みそを使わなくても,それはわかった.
困ったもので,頭を掻きながら呆然と穴の縁に立ち続けた.
−−−???
乱気流とともに穴から白い煙が噴き出し,女神が現われた.
顔面蒼白の男に女神はこう言った.
「お前が落としたのは・・・」
するっと女神は両手を前に差し出した.
「金のインカコーラか,それとも銀のペプシか?」
できるだけ冷静になろうと思いながら,男は答えた.
「すいません.私が落としたのは財布なんですが」

書いてみて,私のこのCM企画書はボツるだろうと確信した.

[6月号表紙]
コーラ月報6月号

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