コーラ白書
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今月の一冊 金正日とコカ・コーラ

中橋 一朗

書籍画像かつては「近くて遠い隣国」などといわれた国、大韓民国(以下韓国)も、最近は随分と身近になった。ワールドカップの日韓(韓日?)共同開催はさて置いても、音楽や漫画、アニメーションなどを通じて、日本と韓国の文化交流は進みつつあると思う。非常に楽しみなことだ。

ところが、その隣国の隣国、朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)に関していえば、未だに「近くて遠い」。それは彼の国の徹底した鎖国政策によるところが大きいのだけれど、西側文化圏のやや屈折した社会主義嫌いも、原因のひとつだろう。

本書「金正日とコカ・コーラ」は、韓国人の著者が、韓国人の視点に立って、北朝鮮の現在と未来に関して論じたものである。つまりそこには、同胞への愛と、統一への仄かな希望、そして北朝鮮という統治体制に体する絶対的な憎悪が含まれている。

1994年から1995年にかけて勧告の新聞、論評誌などに掲載されたという論文の主要な論点は、「金正日は金日成の権力をいつ継承するのか」「金正日の政権はいつまで続くのか、北朝鮮の体制はいつ崩壊するのか」に収束されている。この問いに関する筆者の立場は時の流れ、状況の変化とともに微妙に揺れ、時には正反対の立場を取るかのようにも見えるが、その葛藤を覆い隠すことなくそのまま一冊の本に固定した潔さは、むしろ本書が冷やかしの類いではないことを証明しているように思う。

結果的にいえば、金正日は金日成の権力を完全に継承したし、その政権は未だに続いているし、体制は崩壊していないし、そのうえ金正日は国際社会の中でその評価を高めつつある。社会科学において将来の予測が当ったか外れたかを論ずるのはいささか意地が悪いと思うのでその点には触れずにおくが、とにもかくにも、朝鮮半島統一へ道のりは、まだまだ遠いようだ。

★ ★ ★

と、ここまで書き進めてみて、ふと思った。「コカ・コーラはどこいったの?」

実は本書でコカ・コーラネタについて割かれているページ数は、わずか4ページ。要約するとこういうことになる(と思う)。

「コカ・コーラ社が北朝鮮に進出を打診、当局はそれを受け入れる見込みで、北朝鮮経済救済の一翼を担うと期待される。そして北朝鮮が飢えから脱し、西側世界の豊かな生活に憧れを抱く余裕ができれば、体制はおのずから崩壊するであろう。」

それってズルいのでは?

「金正日とコカ・コーラ」といえば、

偉大なる主席は、積み重なる執務についに夜を明かされ、大変お疲れであった。しかし一杯のコカ・コーラをお飲みになって、元気を取り戻された。

なんて逸話とか、

北朝鮮と米コカ・コーラ社の急接近には、複雑な事情が絡んでいる。米政府はコカ・コーラ社の製品を「情報戦の切り札」と位置付け北朝鮮体制の転覆を狙っている。また北朝鮮は「コカ・コーラを受け入れた国」として国際世論の態度軟化を狙っている。

みたいな陰謀が少しぐらい渦巻いていないと、物足りない。

まあ、いずれにせよ、近くて遠い国よ、常識だけはわきまえてくれ。お願いだ。

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