中本 晋輔
コーラグッズの人気の高いカテゴリの一つに「キャリア/ホルダー」がある。これは名の通りコカ・コーラのボトルを運んだり置いたりするためのもので、紙でできた家庭用のものからクレートと呼ばれる木製の箱、金属製のものまで様々な種類がある(註1)。これらのほとんどがたくさんのボトル(4本以上)を手で運ぶことを目的に作られているが、今回紹介するアイテムはその例外的な存在である。
本品は1950年代に作られたアルミ製のホルダーで、後ろにツメが2本ついた独特の形状をしている[写真]。これはスーパーマーケットのカートに引っ掛ける用にデザインされているため。つまりスーパーで買い物しながらコークが飲める、という凄いアイテムなのだ。
1950年代アメリカは本格的な車社会が到来し、郊外に巨大な食品店が出現した。日本でいう「スーパーマーケット」の出現である。一度でも行ったことある人はお分かりだろうが、アメリカ人はスーパーでやたらものを買う。これは日本のように毎日スーパーに行くのではなく、週に数回スーパーに車でいって食品を買いだめするタイプの人が多いからだろう。このため店内では手さげかごよりもカートがよく使われる。
そこでコカ・コーラはショッピング中にコーラを飲んでもらおうと考えたらしく、この「カート用ボトルホルダー」を製作しスーパーに配布したのだ。買い物の邪魔にならないように軽いアルミで作られており、収容数も2本とコンパクト。正面には「買い物中コカ・コーラをお楽しみください」みたいなことが書いてある。だからスーパーでコーラ飲むなっての。
もっともこの試みはあまり成功しなかったようで、その後新たなカート用ホルダーは製作されていない。これはアメリカが急速に成長し生活様式が大きく変わった50年代に、時代についていこうというコカ・コーラの姿勢が生んだアイテムと言えよう。
ところで店内でコーラの飲むときって、いつ金払うんやろう?