対決! Coke vs PEPSI アーティスト缶対決

中本 晋輔

記念缶のパッケージに著名なアーティストを起用する事はコーラ業界では珍しいことではない。古くはコカ・コーラのNorman Rockwell や Haddon Sundblomに始まり、国内でも篠原ともえやスージー甘金のペプシアート缶など、枚挙に暇がない。

これらのアートパッケージに共通するのは、あくまでコーラの宣伝として位置付けられていたという点だ。つまりまずメーカーの思惑ありきで、アーティスト達は提供されるロゴやメッセージを取り入れながら創作しなければならなかった。

しかし最近、この主従を入れ替えてアーティストにコーラのパッケージを使って好きなものを表現してもらうという一歩進んだコンセプトの缶が両陣営からリリースされはじめた。


コカ・コーラ・ベルギーはCoke Lightのイメージアップを目的に、5人のデザイナーにグラフィックデザインを依頼した。2003年5月に発表されたその作品中でひときわ目を引いたのが、ファッションデザイナー・ヴェロニク・ブランキーノ(VERONIQUE BRANQUINHO)デザインの本品である。

ダイエットコーラに使われない黒をベースに"Light MY FIRE"と赤で入れただけのシンプルなデザイン。内容的にはコカ・コーラ「ライト」に火をつけるの"Light"を引っ掛けてあるだけなのだが、注目すべきはその字体である。既存のLightのタイポを大きく使用することにより、ロゴを使わずにコカ・コーラのイメージを喚起させることに成功している。

25周年を迎える新宿ラフォーレはその記念キャンペーンの中で、オリジナルデザインのPEPSI Twistを1日2500缶限定で配布した。デザインを担当したのは目に「X」を入れる作風で有名なアーティスト・KAWS。

全4種類すべて目とラフォーレのロゴだけを入れたシンプルな構成ながら,それぞれ表情が異なる。バックの色も赤や黄・ベージュ(本品)などで、ペプシブルーは全く使われていない(これがペプシツイストである証拠は裏の小さなロゴマークのみ)。この結果ペプシの匂いを完全に消した、POPな印象の缶に仕上がっている。


どちらも甲乙つけがたいオリジナリティ溢れるアーティスト缶であるがが、私はコーク側に軍配を上げたい。このLightの文字が既にタイポグラフィとして意味を持っていることを見抜き、それを利用した手法があまりにも鮮やかだったからだ。

今後このような、新鮮な驚きをもってきてくれる記念缶が増えることを願いたい。


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