コーラ白書
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今月のキューバ・リブレ ホテル阪急インターナショナル メインバー「CERES」

中本 晋輔

エレベーターホールを抜けると、開放的な吹き抜けの空間が広がる。階下のレストランを見下ろすホールの片隅にひっそりとそのバーはある。CERESの名は高いアーチの上に掲げられているだけで、無粋なメニューが前になければその存在に気づかないかもしれない。

アーチを抜けて薄暗い廊下を曲がると、大きなバーカウンターが出迎える。少し時間が早かったのか人影は疎らだった。アーチ状の高い天蓋からは大きなシャンデリアが掛かり、落ち着いた雰囲気のなかにも開放感がある。心地のよいソファに身を委ねながら、キューバ・リブレとオリーブ・アンチョビを頼んだ。

暫くして運ばれてきたのは、ストレートグラスに注がれた褐色のカクテル。底には厚切りのライムがごろりと沈んでいる。

一口含んだとき、私の舌が動揺した。予想していなかった味覚や触感を突然感じたときの、あの感じだ。重く力強いバカルディの味とコーラの香りの中に残る鋭い酸味と不思議な「食感」。その犯人はライムの果肉だった。はじめは驚いたが、慣れてくるにつれてその生々しい刺激が不思議と心地よく感じられるようになった。

オリーブ・アンチョビがしょっぱくて、もう一杯欲しくなった。今度はお奨めのラムでと頼むとバーテンダーは暫く棚を眺めて、「サンタ・テレサ」というベネズエラのゴールドラムを推してくれた。一転して今度は、羽が生えたような軽やかなカクテル。コカ・コーラの香り、ライムの酸味とのバランスが素晴らしく、あっという間に飲み干してしまった。

席を立とうとして、思っていたより酔いが回っていることに気づいた。今日は帰らなくていいことに感謝しながら、妻に手をとられエレベーターに乗った。

今日で、ちょうど5年になる。

◇ ◇ ◇

今月のキューバ・リブレ

ホテル阪急インターナショナル メインバー
「CERES」(セレス)

1155円