コーラ白書
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中本晋輔

コカ・コーラの生んだ造形美のひとつにベルグラスがある。ベルを逆さにしたような先端が膨らんだ形状のグラスは、ホブル瓶と並ぶ同社をアイコンだ。このあまりにも有名なグラスを逆手にとったセブンナップのプロモーションアイテムが、このアンコーラグラスである。

このアンコーラグラス、ベルグラスを逆転させた形状をしているのだ。底の直径が最も大きく上に行くほどすぼまる形状は、人間工学を無視した持ちにくさ。持つと下に逃げるのだから始末が悪い。

この形状は製造面でも非常に不利だ。アンダーカットのため側面と底面を作ってあとから溶着させるという手間のる手法で作られている。洗うのも大変だ。

このあまりにも使いにくいグラス、実は1960年代のセブンナップのアンコーラ(Uncola)キャンペーンで生まれた一種のジョークアイテムなのだ。

アンコーラ(Uncola)とはColaに否定の接頭語Unをつけた造語。日本語に訳せば「非コーラ」あたりだろうか。当時圧倒的なシェアを誇ったコカ・コーラに対して、セブンナップはコーラではない清涼飲料水という意味をこめて「Uncola」を名乗った。

このキャンペーンは大々的に展開されGoeffrey Holderを起用したCMまで放送された。その中でセブンナップには「アンコーラナッツ」が使用されていると宣伝してるが、そんなものは当然存在せず、それはレモンやライムを指していた。

このキャンペーンでセブンナップはコーラより清純で爽やかな印象を与えて差別化に成功し、売り上げを伸ばしたという。そしてそのキャンペーンの一環で生まれたのがベルグラスを逆さにしたこのグラスというわけである。

セブンナップのパロディ精神が生んだエスプリの効いた一品だが、同時にベルグラスが当時いかにコカ・コーラのイメージとして定着していたかを伺い知ることができる。


参考

 ・YouTube -セブンナップ "Un-cola Nuts"ad
今から見てもハイセンスなCM。Absolutely marvelous!