コーラ白書
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師匠のひょうさん(仮)がやってきたのは、この冬一番の冷え込みの日だった。大阪府下には低温注意報と乾燥注意報が発令されている。どう考えても植え替えに向いた日とは思えない。

我が家のコラノキを見るなり、師匠が一言

「バランス悪いですねぇ」

心配したとおりコラノキ君は、この規模の木としてはかなりノッポに育っているようだ。特に根元と第一葉(元双葉)との間が長く、この部分で徒長が起こった可能性があるという。確かに発芽してからすごい勢いで伸びてたっけ。

植木鉢の底から根が出ているということは、鉢全体に根が回っている可能性がある。根がこれ以上成長できないくらいパンパンになっているのであれば、より大きな鉢に植え替えるしかない。

とりあえず割り箸を土に突き刺してみると、全体的に結構堅い感じだった。とはいえコラノキの根の形の情報がないので、鉢の中がどんな状況なのかイマイチ状況が把握できない。

「・・・・植え替えしましょうか」

長考の末に師匠がつぶやいた。

すでに新たな鉢は入手済みだ。前日にホームセンターを回って、9号鉢の2倍の深さの陶器鉢(メイド・イン・イタリィの舶来品)を購入してきたのだ。これだけ深さがあれば思う存分根を伸ばしても大丈夫なはずだ。室内に置くにはちょっと大きいが、うちの子の健全な育成のためには仕方あるまい。

必要なものを庭に並べ揃え、寒空の下の植え替え作戦が始まった。今回師匠は室内からガラス越しに指示を出し、実際の作業は私が一人で行う。師匠は寒さに弱いのだ。

まずはイタリィ製の鉢に土流出防止ネットを置き、底石を敷き詰める。その上に園芸用の土を入れる。土の下のほうに固体肥料を入れることも忘れない。これで引越し先の鉢の準備はOKだ。

そして植え替え最大の山場である、古い鉢からのコラノキを引き抜く作業に取り掛かる。前回の植え替えに比べコラノキは格段に大きくなっていて、下手に力をかけると折れてしまいそうだ。茎を指で挟むようにして土に手を置き、鉢をひっくり返してコラノキを鉢から取り出す。

あれ・・・・

根っこ、回ってないよ。

それどころか、根っこの本体が全然見えない。恐る恐る土を落としていくと・・・

 

ちっさ!

コラノキ君の根っこは、びっくりするぐらい小さかった。植え替えどころか、一回り小さい鉢にだって収まりそうだ。師匠もびっくりして出てきた。

よく見ると、コラノキの根っこは真ん中の1本が長いものの、他は細いヒゲ根状になっている。この太い根がやんちゃなだけで、他の根は至極控えめだった。

土だらけのコラノキを持ったまま、緊急会議が開催された。この根の大きさではイタリィ製の鉢は明らかに大きすぎる。元の鉢に「植え戻す」のが適当だという結論になった。

根が出ないように底石を入れ、根をかるく丸めて土をかぶせてやる。なんだか以前に比べてグラグラするようになった気がする。おそらく細かい根が切れてしまったのだろう。

こうして真冬の植え替え作戦は失敗に終わったのだった。

 



ここからコラノキの試練が始まった。植え戻しして3日ほどたったころ、葉っぱの先端付近に茶色い斑点が発生し始めたのだ。水は十分にやっているのに、根が切れたせいでうまく吸えないのだろうか。前年の夏に生えた葉にも斑点が広がり、明らかに枯れ始めている。コラノキ育成始まって以来の危機である。

この寒さでは根の成長は期待できない。とりあえず我が家で最も暖かい寝室に移動させて、エアコンを18℃で常時稼動させる。加湿器もあわせて設置。葉からの蒸散を少しでも抑えるため、霧吹きで朝晩葉っぱに水を吹きかける。電気代と手間はかかるが、この際しかたあるまい。

そしてこの危機打開の切り札として投入したのが、メネデール株式会社の植物活力素「メネデール」だ。二価の鉄イオンパワーで切り口を保護し、さらに弱った植物を回復させるという魔法の薬なのだ。「メネデーロ、メネデーロ」と念仏を唱えながら水にこの薬を加えて与え続けた。

広がり続けた葉の枯れが止まったのは、植え直しから2週間後のことだった。昨年の新葉を含めほとんどの葉の先端が茶色く変色したものの、木そのものが枯れるという最悪の事態は回避されたようだった。ありがとうメネデール!

そして、毎日じっくりコラノキを観察したことで分かったことがひとつ。このコラノキはかなり水が好きだということだ。水をたっぷりやった後は葉がぴんと上を向くが、表面が軽く乾いてくるとたちまち葉っぱがダランと垂れ下がる。地面がまだ少し湿っていても、たっぷり水をやるほうが良いようだ。

 


 

4月、我が家の寝室には満身創痍ながらなんとか2度目の春を迎えたコラノキの姿があった。この夏に逞しく成長してくれることを心から祈りつつ・・・