コーラ白書
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清涼飲料の容器の歴史は利便性の歴史でもある。当初主役だったガラス瓶は軽くて開けやすいアルミ缶に主役の座を譲り、そのアルミ缶もリシーラブル(再栓可能)で軽量なPETボトルに取って代わられようとしている。

しかしアルミ缶メーカーはこの状況を黙ってみているわけではない。PETボトルのように途中で栓のできる新しい缶を日々研究・開発しているのだ。

今回は北米で試験販売されたちょっと変わったリシーラブル缶を紹介したい。

本品は米コカ・コーラ社が2009年に地域限定で試験販売したもの。コカ・コーラ、ダイエットコーク、スプライトとコカ・コーラゼロの4種類が確認されている。側面には「RESEALABLE CAN」の表記に加え「REFLESHING NOW, REFLESHING LATER」という気の効いたキャッチが目を引く。

一見普通のアルミ缶に見える本品、秘密はその開口部にある。プルタブのあるべき位置に、見慣れないプラスチックの部品がついているのだ。丸い部品の表面には曲がった楕円状の凹み、そして横には羽のような出っ張りがついている。

部品の羽の部分をゆっくりと反時計回りに回すと・・・

途中まで回すと中で「プシュ」っという音。180度回し切ると部品の一部がスライドし飲み口と空気穴が現れる。動きは驚くほどスムーズで、親指の力だけで簡単に開けられる。穴から直接コーラの液面は見えないが、傾けるとコーラがスムーズに出てくる。

蓋をするときは、羽を逆に回すだけ。またピッタリと開口部が閉じるのだ。一旦閉じれば逆さにしてもコーラは一滴もこぼれない。男心をくすぐる、とてもメカニカルなギミックだ。

 

いったいどんな仕組みなのだろう。コカ・コーラをばらすのは気が引けたので、同じ構造のスプライトを分解してみた。

この開口部は上下の2つの部品が缶を挟むように取り付けられていた。上下の蓋には中央にネジが切ってあり、回すことで下の部品が押し下げられ中央にコーラの流路ができる仕組みになっている。逆に回せば部品が密着して流路が塞がれ、コーラが漏れてくることはない。飲み口の開閉と合わせて、二重の安全構造になっているのだ。

上部(左)と下部(右)。中央のネジが噛みあう

 

閉じた状態。上下部品が密着し中央の流路に栓がされている

とてもよく考えられた構造だが、すぐに思ったのが「高そう・・」という点。両方ともネジ構造のあるPEとTPEの二色成型品。それをさらに缶に取り付けるのだから、普通のアルミ缶と比べてコストはかなり上昇しそうだ。

 


 

上記の理由かどうかは分からないが、このリシーラブル缶は結局正式採用されることなく姿を消した。しかし近年はアルミ製のスクリューキャップタイプのボトル缶が登場、PETボトルに一矢報いることになった。