コーラ白書
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なかはしいちろう 

コーラ白書の首謀者である中本は時々変なコーラを見つけてくるのだが、今回のものは飛び切りの珍品である。もしかしたら黒歴史とすら言えるかもしれない。お題はAppleのMacintoshだ。

“The new Power Macintosh G3”というコピーと特徴的な外観写真から判断して、1999年に発売された通称Blue & White(もしくは「ポリバケツ」)というモデルの発売を記念して制作された販促グッズと思われる。

1990年代後半、MicrosoftのWindows 95が空前のPC&インターネットブームを引き起こす一方、Appleは迷走していた。売れ筋商品は品薄が続く一方、売れない商品の在庫が積み上がり、新OSの開発も頓挫。今からは考えにくいことだが、「Appleを買収するのは誰か?」というのが、インターネットの黎明期を彩ったゴシップのひとつだったのである。

そこでAppleが放ったウルトラCが、かつて自ら追放したSteve Jobsを復帰させ、しかもJobsらが開発したNeXTSTEP(OPENSTEP)というシステムをMacの新OSとして採用することであった(後のMac OS X)。そしてこの新OSの導入を見据え、外観だけでなく内部構造も刷新して登場したのがあのiMac(1998年発売)であり、この「ポリバケツ」なのである。

Appleはロゴ入りのマグカップやキーホルダーを昔から販売しており、ノベルティーグッズの存在自体は特に珍しいわけではない。しかしこのように特定の商品を題材にすることは珍しいし、食品を用いたことは恐らく他には皆無であろう。

この”THE WORLD OF MACINTOSH”コーラ、Appleの関連製品としてはデザインの完成度においても異例といえる。白地の背景にちりばめられた黒のAppleロゴがどうにも野暮ったいし、文字と写真の配置もアンバランスだ。全体的に素人っぽいのである。そもそも、ロゴ入りコーラがMacのブランド価値を高めるということがあるだろうか? もしあなたがiPhoneユーザーだったとして、Appleが「iPhoneコーラ」を配り始めたら、どう感じるだろう?

当時のAppleが「ポリバケツ」に賭けた期待はそれだけ大きかった、ということなのか、あるいは若き日のJobsはまだまだ隙があったということなのか。いずれにせよ、歴史を感じさせる一品である。