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第2特集 / 速報! コミックマーケット55 & コーラ津々浦々スペシャル
中橋 一朗

モノづくりの祭典 コミケット

有明ビッグサイト 盆のくそ暑い時と,年末のくそ忙しい時に,それは開かれる。

「や,あなたも東京ですか?」

「ええ,まあ。ただの売り子ですけど。」

こんな会話は,既に全国的に恒例行事となった。そう,それはコミックマーケット。コミケット,もしくは単にコミケとも略される,同人誌の大即売会である。

同人誌というと,つるぺためがねっことか,やおいとか,そういういかがわしいイメージが先行しがちである。でも,もちろんそういうのもアリなのだが,実際にはもっと広い意味での創作活動の成果が一同に会する場所,それがコミックマーケットなのだ。漫画,小説,コンピューターのソフトウェア,音楽,人形,その他ありとあらゆる創作物が,オリジナル,アレンジを問わず,あの広大な有明ビッグサイトを埋め尽くす。そのスケールとエネルギーは,現在の若者が夢を失ったなどという論調のよい反証となろう。

というわけで,1998年12月,コミックマーケット55に,「珈琲番付」でおなじみのきりん本舗さんが出店されると聞き,我々は急遽取材へと赴いた。

クイーンズスクエアは輸入食材がいっぱい

というわけで,何故か2名とも徹夜明けの我々は,大阪伊丹から空路東京へ。眠い頭を引きずるようにしてまず訪れたのは,以前からマークしていた横浜みなとみらい21周辺だ。 みやくんの「コーラ・コレクションの部屋」 によれば,クィーンズスクェアの輸入雑貨店で輸入コーラ数種を手に入れることができそうである。

到着した我々は,まず横浜ランドマークタワーの巨大さに圧倒された。大阪にも高い建物はたくさんあるが,これは高いというより,でかいという感じである。そして動く歩道を進んでいく。

果たしてクイーンズスクエアは,輸入食材のパラダイスであった。幼少のころよりアメリカのジャンクフードに親しみ,留学経験もある中本の双眸がギラリと光った。ベーコンチップ,タコスソースやチリソース,そして本場のポテトチップスもある。

ふと気が付くと我々は,ブルーチーズと生ハムを手にワイン売場を徘徊していた。何か重大なことを忘れているような気もするが,そこはほれ,時間というやつが癒してくれるのだろう。

輸入食材といえば,池袋のサンシャインシティーも忘れてはならない。ここはかつて クレヨンしんちゃんコーラセーラームーンRコーラ が発見された重要な場所である。しかし今回の成果は残念ながら,ジャンケンに負けた中橋が地獄ラーメンを食って死にそうになるにとどまった。

アジアの妖しさ漂う街 秋葉原

おでん Dr Pepper の似合う街,秋葉原も外すことのできないスポットである。おやじの店で予備の Happy Hacking Keyboard を購入するかどうか悩んでいた中橋の目前に飛び込んできたのは,あの DOS/V 仮面! ではなくて,なんと自動販売機で売られる「おでん」だった。

この「おでん」,要はただの缶詰なのだが,何より我々を震撼させたのは「箸がない」という事実である。仮にこのおでんが非常にデリシャスであったとしても,箸が無ければ絵に描いた餅。それとも我々にインド人であることを要求しているのか!? やっぱり東京は恐いところである。

ちなみに Dr Pepper といえば, こんな自販機 を発見。藤沢市湘南台にて。

味覚の王道! 横浜中華街

さらに我々は,最後の期待を込めて横浜中華街を訪れた。横浜ベイスターズの本拠地である横浜スタジアムを抜けて,肉まんと餃子の香りのする方へ歩く。

着いてみると,学校が冬休みであることも手伝ってか,平日であるにもかかわらず結構な人出である。街は中華料理屋と,中華の食材の店だらけ。アメリカ村とかいうと洋服やアクセサリーの店が多いのに,中華街というと食い物ばかりというのは偏見のような気もするが,まあそういうものなんだろう。

ここでの収穫は,中国風(?)の自販機だけ。またも空振りの感もあるが,うまい食事にありついて,またもやご満悦の一行であった。

自動販売機1 自動販売機2

そして有明へ

新橋駅 そうこうしているうちに,取材は最終日を迎えた。食欲をすっかり満たして「お疲れさーん」と解散したい気分ではあったが,まだ肝心のコミケ取材が残っている。

山手線の新橋駅から,新交通ゆりかもめに揺られ,やってきました有明ビッグサイト。 AsiaBev'97 以来だから,ほぼ1年ぶりとなる。

会場は予想通り,一種異様な熱気に包まれていた。とにかく人,人,人。人が多い。しかも,変な人が多い。みんな変な格好をしている。噂に名高いコスプレである。特に目についたのはピカチュウのコスプレをした,サングラスのおやじ。「俺の神聖なピカチュウを汚しやがって...」と,中本は低いうなり声を上げていた。どうどう。そんな中本をなんとかなだめつつ,お目当てのきりん本舗さんのブースに辿り着いたのは,もう終了間際のことであった。

きりん本舗 もうみんな知っていると思うが, きりん本舗 さんといえば,「珈琲番付」「コーラ番付」で有名な,あの方々である。我々の長年の懸案事項であったコーラ白書が具体化できたのも,このきりん本舗さんの「コーラ番付」に刺激されたところが大きい。しかも,今年はあの The Archive of Softdrinks の久須美さんも参加されており,お上りさんの我々としては緊張してウハウハであった。

きりん本舗さんは,「珈琲番付」「紅茶番付」「トマトジュース番付」「チチヤスヨーグルト番付」など,特定のジャンルの飲み物(?)を徹底的に飲み比べたものを,同人誌として多数出版されている。特に珈琲は毎年毎シーズン,新製品が雨後の筍のように登場するジャンルであり,そのほとんどすべてを試飲され,詳細な分析をされている気合いには,ただただ頭の下がる思いである(中にははっきり言って不味いものも多いはず)。

久須美さんは,清涼飲料水一般を収集・研究されており,Nifty のコレクターズフォーラムでも活躍されている。その収集量だけでも日本のトップを行く方なのだが,おそるべしはその知識量。さまざまな清涼飲料水の歴史について,さまざまなエピソードをホームページで紹介しておられるので,是非ご覧あれ。

最後になったが,アポも無しに突然お邪魔した我々を暖かく迎えて下さったきりん本舗のよろづ山親方と,久須美さんに,改めてお礼を申し上げたい。 [記念撮影・手ブレ]

埋立地の黄昏

かくして無事,東京での取材を終えた我々を追い抜くようにして家路を急ぐ人の群。ここコミケットは,恐らく現代に残された最後の「モノづくりの砦」に相違ない。しかしこの人の群のほとんど全てが,ただ欲望を消費するためだけに此処へやってきたというのもまた事実である。

Coke Station 羽田空港で偶然発見した Coke Station で良く冷えたコーラをのみながら,我々は決意を新たにした。モノつくる人々の一員であり続けるために,我々も新しいコーラ白書を模索し続けなければならない。そしてそれが,現在も良いものを創り続ける人々に対する,何よりの表敬となろう。

関連サイト


恒例行事
少なくとも筆者の周辺では日常的な光景となった。たいへん遺憾なことである。
つるぺためがねっこ
みんな知っていると思うが,要するに,眼鏡をかけた小中学生の女の子(の大人向け漫画)。胸が大きくてはいけない。詳しくはそういう人に聞いてくれ。
やおい
みんな知っていると思うが,要するに,男同士でストーリーが進行すること(の大人向け漫画)。詳しくはそういう人に聞いてくれ。あさりちゃんの作者である室山まゆみは,「少女漫画家なら必ず一度は通る道」とその単行本中で述べている。
アメリカのジャンクフード
アメリカのジャンクフードといえばまず思い出すのがマクドナルドだろう。でも本場はそんなものでは済まない(と中本は言う)。間にはさまっているハンバーグは200gだし,コーラのLは1リットル近く入っている。吉野屋ではメニューにケーキがあって,みんな食後にもりもり食うらしい(すべて実話)。
地獄ラーメン
サンシャインシティーのどこかの中華料理屋で食った,死ぬほど辛いラーメン。ほんとはチャンポンか皿うどんが食いたかったというのは秘密である。
おやじの店
カメラのナニワのおやじよりは,ずいぶん威勢がいい。「なぁに買って来たの? 駄目だよ,うちで買わなきゃ」
DOS/V 仮面
今は亡き某ショップのビラ配りの人。頭に DOS/V キャップをかぶっていた。実質的なオーナーであった某宗教団体は現在も存続しており,新たなショップを経営していると聞くがその真偽は定かではない(見ればわかるという話もあるけど)。
インド人
みんな知っていると思うが,ヒンズーの教えでは食べ物は右手でそのまま掴んで食べる。左手は不浄の手であるので,食事には絶対に使わない。
Coke Station
自販機と休憩所が併設されたもの。要するに,椅子に座って缶コーヒーや缶コーラが飲める。

[四季報 1999年1月号] [コーラ白書] [HELP] - [English Top]
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