コーラ津々浦々 第1回

近畿コカ・コーラボトリング
京都工場編


バスを待て!

京都駅から急行で20分程であろうか,我々二人は近鉄京都線大久保駅に降り立った。 12月も間近な秋の風は結構冷たい。

さて,ここからバスで工場まで向かう予定だったのだが, このバスが待てど暮らせどやって来ない。 往々にして郊外のバスというものは余所者には判りにくくなっていて, 路線図は必要以上に緻密な網の目を描き, 時刻表は意味不明な例外記号で埋め尽くされているものである。 それはここ大久保でも例外ではなかった。 なんだかバスは次から次へ来るのだが, いったいどれに乗ったら良いのかさっぱり判りゃしない。

それでもまあ,とにかくそれらしきバスを待っていると, どうも目前の広い敷地は自衛隊の敷地であることが判ってきた。 中の建物にはこちらにむけて電光掲示板が取り付けられていて, 星占いだとか,諺だとかいった平和的なメッセージを流し続けている。 自衛隊が星占いでもって大久保市民に奉仕する意味合いについては今ひとつ理解しがたいものがあるが, たぶん誰か占いが好きな人がいるんだろう。自衛隊にも。

なんてくだらないことを考えている間にも時間は過ぎてゆく。 女性数人のグループがタクシーに飛び乗って行くのを見て, やっぱりタクシーで行ったほうがいいかなあと不安になる我々...

この辺のバスはその多くが「久御山団地」をいったん経由し, その後各目的地へと向かう。 我々の目的地もその「久御山団地」の少し先である。 ふふふ,なめてはいかん。 人間には知性と言うものがある。

「うーん,とりあえず久御山団地と言うところまで行って見よう。 きっとそこがバスターミナルになっているに違いない。」

しかし結果的にはこの判断は誤っていた。 久御山団地で降りた我々を待っていたのは, 水を打ったような静寂と,海より深い絶望感だった。 確かに団地はある。 けど他には何も無い。 バスも来ない。 時間も無い。 どうやら我々には知性がない。

辛うじて発見した公衆電話から工場に電話をかけると,

「そこからだったら,歩くしかないですね。」

それはつまり,走れということらしい。

工場発見

そうして走ること10分程度であろうか,ようやく見慣れたCoca-Colaの看板が見えてきた。 はあはあ言いながらも喜ぶ二人。 入り口で守衛さんに見学の旨を伝えると,バッジを渡された。 これを胸に付けて敷地に入る。 いやはや,日頃の運動不足が身に染みるぞ。


PR棟の入り口。 右側にあるミニチュア瓶が気になる...
守衛さんの指示通り入ったのはPR棟という建物である。 中には既に数人の人が待っていた。 今日我々と一緒に工場を見学することになる人々である。 中には見たことのある人もいる...わけがないと思って良く見たら, 大久保の駅でタクシーに飛び乗っていた女性達であった(笑)。

ここには休憩用のソファーのほかに, 世界各国のコカ・コーラのボトルのミニチュアがディスプレイされている。 また,記念写真用の「日付入りパネル」も置いてあって, 修学旅行にもピッタリといった雰囲気を醸し出していた。

工場見学


階段に掲げられている旗
Welcome To Kyoto Plant と書かれている
以下に,工場見学の順路を簡単に説明しよう。 工場入り口のすぐ近くにあるPR棟というところに集合した我々は, おねえさんに案内されてまず2階へ。 ここではコカ・コーラにまつわるクイズを行い, 正解すると記念品としてコカ・コーラのミニチュアボトル・キーホルダーがもらえてしまう。 ここで記念撮影もしてもらえる。

クイズに正解し,とても嬉しそうな中本。ピンボケで申し訳ない。
その後,近畿コカ・コーラボトリングの企業活動に関するビデオを観ながら, 瓶入りのコカ・コーラが振る舞われる。 走った後のコカ・コーラはことさら旨い。 その上瓶入りは,なぜか旨い。 説明のおねえさんも,

「瓶入りのほうがおいしいと良く言われますが,中身は(缶入りと)全く一緒です。」

とおっしゃっていた。 このことは,今後の研究課題である。

喉を潤した後は,いよいよ工場プラントの見学である。 順路は製造工程に沿って設けられており, 大きなガラス窓から工場内部を見学することができる。 残念ながらこの日工場はほとんど休みになっており, 実際に機械が稼動するところを見ることはできなかった。 以下は工場内部の様子を伺い知る写真。

一応,コカ・コーラの製造工程を簡単に説明しておこう。 まずは水。 水道水や井戸水には細菌やイオンが含まれているので,これを取り除かなくてはならない。 細菌はろ過し,イオンはイオン交換樹脂で取り除く。 ちなみに初めてヨーロッパでコカ・コーラを作ったときには, イオンの多いミネラルウォーターを使用したために大失敗したとか。

この水にシロップと原液を加える。 シロップは日本では砂糖とコーンシロップの混合液。 アメリカなどでは原料の相場によって砂糖のみ,コーンシロップのみになることもあるようだ。 オーストラリアでは砂糖のみが好まれる。 原液はアメリカのThe CocaCola Companyのみで作られ, その調合内容はは世界最高の企業秘密である。 公にされている範囲では,酸味料(リン酸),香料,カフェインといったところか。 企業秘密の本質は香料にあり, 中でも7Xと呼ばれる香料成分はコカ・コーラ社でも限られた最高幹部のみが知っているという。 脱コカイン処理されたコカインの葉が香料として含まれることは,むしろ公然の秘密である。


記念品をもらってこれまた嬉しそうな中本。
こうしてつくられた混合液は,すでに「コーラの味」がするが「気が抜けている」。 冷却しながら二酸化炭素を溶かしこめば,いつものコカ・コーラの出来上がりである。 あとは缶につめ,箱に詰めて出荷するだけだ。

見学の後には,お約束通りお土産をもらった。 中身は敢えて秘密にしておこう。 ぜひ自分の手で確かめて欲しい。

久御山探訪

帰りは久御山周辺を探訪することにした。 まず途中のサークルKでペプシコ・インクのCOOL UPを購入。 中橋のお気に入り飲料に決定。


ニッサン橋。
その他にも駄菓子屋やスーパーマーケットを探検するが, 残念ながらコーラとしての収穫が無い。 その上道は良く判らんし, かなりトホホ感が盛り上がったところで偶然発見したのがVIVA COLA。 何気ない住宅街の角の駄菓子屋(のようなもの)で, 魚屋のように発泡スチロールの箱に氷を入れて冷やされていたこのコーラ。 コーラ白書本編でも絶賛されているように,なかなか旨い。 その他にもチューペットコーラをGETして中本はすっかりご満悦である。

ちなみにぜんぜん関係ないけど,この辺には日産自動車の工場があるらしく, 「ニッサン橋」というものを発見することができた。 中本はこういうのを見つけると記念写真を撮りたがる。 そういう男である。

とかなんとかやってるうちに,無事大久保の駅にたどり着いて,本日のコーラ探訪はこれまで。


[3月号表紙]
コーラ月報3月号

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