コーラ津々浦々 第3回

「通天閣・新世界界隈編」

中本 晋輔

ある日、中橋氏から変なメールがフォワードされてきた。送り主はK君。 前回の「津々浦々」で紹介したペプシマン回収計画に参加、 愛車シルヴィア号を大破させた男である。

「通天閣の展望台でサントリーコーラが瓶で売ってる」

サントリーコーラ。 大手SUNTORYのコーラで、 缶で販売されていないのに妙にシェアの広い謎のコーラである。 それがこんな近くで売られていたなんて! 瓶で売られているのすら見た事がなかった我々はすぐさま調査隊を結成、 日本橋でぶらぶらしてから (笑)さっそく行ってみる事にした。 というわけで今回は「通天閣、新世界界隈編」である。

大阪の電気屋街、 日本橋から南へほんの少し行った処に新世界と呼ばれる地域がある。 現在では大阪でも有数の濃ゆいスポットとして知られる同地は、 実はパリを真似て作られた地域なのだそうだ。 通天閣はエッフェル塔で、 そこから放射状に道が伸びている所など何となくやりたい事はわかるが、 やっぱいまいちピンと来ないぞ。 パリには「ふぐのづぼらや」の巨大提灯とかパチンコ屋とか 「日活ポルノ劇場」とかないだろうし。

この新世界は未知の飲み物の宝庫でもある。 まず我々の目に留まったのがこの店。 店名は良く分らないが、ただならぬ雰囲気である。 いまだ氷を浮かべた水槽で売られている 瓶ジュースの中に強烈なのを見つけたので紹介しておこう。 Ceehope Bottoling社の「Cee Hope サワー」がそれである。 とにかく色が強烈。 我が家の入浴剤ですらここまで鮮やかな色は出ない。 まさに着色料黄色4号と青色1号の織り成す芸術である。 味の方は「サワー」の名のとおり酸味のある、 脱脂粉乳が使用されているにもかかわらず まろやかさの全く感じられない不思議な味だった。 妙に味が残るのも印象的である。 味を敢えて喩えるならお菓子「ねるねるねるね」の緑色のゲル状のやつに似ている。 めちゃめちゃ不味いという事はないが、 飲んでるうちに不安になる飲み物だった。瓶ごと買って¥110。 これは高いのか安いのか......。 この他に「3つ扇サイダー」なんかもあってかなり良い感じの店であった。

それともう一つはジャンジャン横丁入り口にある飲料スタンド「ジュース専門店」。 店の前にミキサーとピッチャーが並べられ、 注文するとその場で注いでくれるシステムの店である。 昔から気になっていたのだけど、今回初めて挑戦してみた。 中橋氏から「卵の入ったのは止めとけ」と有り難いアドバイスをもらったので ミルクセーキはパス、 迷った挙げ句「コーヒ」(註:「コーヒー」ではない)を注文。 すると店のおっちゃんは並べてあった肉厚のグラスに氷を入れ、 ピッチャーからコーヒを注いでくれた。 グラスを持ったままどこへも行けないので、 おっちゃんと周りの人の視線を若干感じながらその場で飲む。 ミルクは入っていないのだが、かなり甘い! どちらかといえば「コーヒー風味の砂糖水」と言った方が正確な程だ。 ただ、これはこれで美味しい。 冷えてるし、量も手ごろだし、喉が渇いた時に立ち寄って飲んでいくには最適である。 勇気のある人は是非試してみて欲しい。

さていよいよ通天閣突入である。 エレベーターで二階(実際は4階ぐらいの高さがある)に上がると 広いフロアに土産物屋とチケット売り場、やたら小規模のゲーセン、 それに散発的な電気器具の展示なんかがあった。 それにしても予想外に人が多い。 これも「ふたりっこ効果」というやつだろうか? チケット売り場で展望台の券を購入。 大学生は¥500、大人で¥600だそうだ。 しばらく待たされた後エレベーターで最上階へ。 このエレベーターが遅いのなんの、なかなか着かないのだ。 その上見晴らしもよくないのでじっと黙って到着を待つしかない。

展望台でエレベーターのドアが開くといきなり大阪の町の大展望が広がる。 が、我々の目的は観光ではない。 すぐに売店を探すと、ディスプレイに大量のサントリーコーラが!! お洒落な蝶ネクタイの模様がプリントされたすらっと背の高い瓶に入ったコーラこそ、 目的のサントリーコーラである!! ・・・・・なんかあっさりすぎて盛り上がりにかけるなぁ ・・・・まぁ、早速購入して飲んでみる事にした。 飲んでみて思わず口元が緩む。 間違いなくサントリーコーラである。 独特の柔らかさと切れの無さ、喉で飲むより腹で飲む感覚。 馬でいえば伸びないがバテない、 スタミナ十分で得意なレースは東京芝3200mダイアモンドステークスといったタイプである。 残念ながら瓶ごと購入できなかったので、その場で写真を撮ることにする。 ビリケン様に今回の探索成功を感謝しながら、我々は帰途についた。

NHKの「ふたりっこ」で全国区の観光スポットとなった大阪・通天閣界隈。 最近は町もきれいになりずいぶん行きやすくなった。 道頓堀からも歩ける距離なので、大阪観光のついでに一度是非足を運んで欲しい。 今回は奇麗にまとまったね。


[5月号表紙]
コーラ月報5月号

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