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中本晋輔 ミニバー拝見ドリンクを持ってきたベルマンが立ち去ったのを確認して、早速ミニバーを確認。下に冷蔵庫、上にグラスやポットが置かれた標準的なレイアウトである。 [別角度] 一般のホテルなら伝票がクリップつきのボードに止められて棚に無造作に置いてあるのだが、このあたりも一味違う。ここでは二つ折りの黒い革製バインダに伝票を留め、こちらに背を向ける形で屏風のように立ててあるのだ。これは値段を直接目に触れないようにしながら、どこに伝票があるのがすぐに分かるようにしてあるのだろう。 さて、気になるコーラのお値段は・・・ 525円!!!
記録更新きた−−−−−−−! 缶コーラの販売単価としては、これまでの調査で最高である。不動のものと思われてきた富士山頂のコーラ国内最高販売価格(500円)を、ホテルのコーラが追い抜いた瞬間であった。 冷蔵庫はもちろん陳列式で、コカ・コーラ、ダイエットコークとも350ml。250ml缶が多いミニバーでは珍しい。ラインナップは40種類程度と充実しており、中にはシャンパン7350円などリッツ・カールトンらしいものも。珍しいところでは液キャベ(630円)というのもあった。 正直、ここの冷蔵庫が自動清算式で150円くらいだったらどうしようと心配していたのだが、全くの杞憂であった。 リッツ・カールトンは、常にお客の期待を裏切らない。 憧れのルームサービスハービスのピエトロで晩飯を食べ、バーで2杯ほど飲んで帰ってきたのが夜の9時ごろ。雨に曇る夜景が窓を彩り、ちょっとロマンチックな雰囲気に。正面の毎日新聞がバリバリ仕事中なのは、この際見ないことにしよう。 せっかくの機会なので、思い切ってルームサービスを取ってみることにしよう。恥ずかしながら、自分でルームサービスを頼むのは生まれて初めての経験である。 ベッドの上にあった長細いメニューをめくってみると
コカ・コーラ 850円 (1008円)
高。
なんか普通に書いてありますけど、結構高いよね、これ。()の中は消費税+サービスが乗ったお値段。ちなみにリッツのサービス料は13%と国内屈指の高さだ。 うーむ、ついに戦いは4桁へ突入である。会社の下でお昼に売ってるお弁当(プリンつき)が3個買えてしまう値段である。ホテルの喫茶店だって、千円出せばお釣りは来るよね。 ・・・後学のために、頼んでみることにした。 リッツカールトンの部屋の電話には、ルームサービス用のボタンがある。それを押して待っていると、2コール目あたりで 「はい中本様。ルームサービスでございます」 と、やはり名前を呼んで対応してくれた。たった2コールで名前を確認して対応するのは、結構大変だろうなぁ。 コカ・コーラを頼むと 「コーラにはレモンかライムを御付けいたしますか?」 と返ってきた。 【むむむ】。よくコーラとレモンを組み合わせるケースはあるが、実はライムのほうがずっと相性がいいことは余り知られていない。なかなか分かってるじゃないか君。迷わずライムを注文する。 「15分ほど頂いてよろしいでしょうか?なるべく早くお持ちいたします」 15分はちょっと長いなと思ったが、受話器を置いて10分足らずで入り口のベルが鳴った。
ベルマンが手にした銀のトレーにはコカ・コーラセットというべきものが、小奇麗に並べられていた。このセットの内容は以下のとおり。
まさに完璧な布陣である。コカ・コーラの象徴であるコンツールボトル。それを客の目の前で空け、グラスに注ぐときの視覚効果。ちょうど190mlが入るトールグラス。皮の苦味が入らないよう厚皮を剥いたライム。そしてコーラが「喉の渇きを癒さない」事を理解し、それ補うための水。 ここまでコーラを飲む人間のことを考えてサーヴするところが他にあるだろうか。いやない【反語】。 不覚にも、これで1008円はとてもリーズナブルに思えてしまった。海外だったら、さらにチップを弾んでしまったかもしれない。まさにサービスの魔力である。 ホテル王セザール・リッツが「旅人が心からくつろげる場所」を目指してホテル・リッツを開業してから約100年。そのホスピタリティはザ・リッツ・カールトン大阪にも連綿と受け継がれていた。彼らのサーヴィスに対する真摯な姿勢は、コーラを買いに来た変な旅人の心まで豊かにしてくれた。 翌日、午前中のアポのことを完全に忘れていた私が朝一で家まで背広を取りに帰ったのは内緒である。 |
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