コーラ白書
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スーパーは何処に?

3日目。予定の業務を無事に終えた帰り、グルガオンにあるショッピングモール「Ambient Mall」に立ち寄った。目的は二つ。名高きマクドナルドのチキンマハラジャマックと、スーパーマーケットの探索である。

前者はフードコートで簡単に見つかった。マハラジャマックはビッグマックに相当するインド独自のハンバーガーで、ビーフではなくチキンを使っているのが特徴。ディスクのようなチキンパティが2枚挟まっていて、かなりボリューミーだ。カレー味のソースが良く合い、なかなか美味であった。

興味深いのはミール(セット)メニューを頼むと自動的に飲み物がコカ・コーラになる点。飲み物を確認してくれないので、コーラ以外が飲みたいときはちゃんと主張しないといけない。

腹ごしらえがてきたところで、満を持してスーパーマーケットへと向かう。このモールにあることはリサーチ済だ。

しかしいくら探しても、それらしき店が見当たらない。

仕方なくインフォメーションに聞きに行く。担当の女性はとても残念そうな表情で、流暢な英語で答えた。

「少し前まではあったけど閉店してしまって、今はもうありません。」

 


 

その夜、非常用に持ってきたカロリーメイトをかじりながら部屋で一人考えた。

東南アジアや中国、北アフリカにある大型の食料品店は、デリーではあまり一般的ではないようだ。現地スタッフの言うように、小売の主役は個人商店やマーケットなのだろう。

個人商店を回ればインドのコーラ市場を理解することはできそうだが、明日は帰国日。今から調査するのは時間的にもロジスティック的にも不可能だ。多くの商品の集まるスーパーの飲料棚が見れれば、おおよその傾向がつかめるのだが・・・

そう考えると、どうしてもインドのスーパーに行きたくなってきた。メジャーな存在でなくても、全くないわけではないだろう。幸い明日のチェックアウトは午前11時。その前に探しに行けるかもしれない。

すぐにホテルのトラベルカウンターに向かう。レセプションも交えてスタッフ数人と相談した結果、少し離れたところにSupermart(スーパルマルトと発音する)という店舗があることが分かった。ホテルのスタッフに開店時間が10時であること確認すると、トラベルデスクに車とドライバーを確保してもらう。渋滞を考慮しても、開店直後に乗り付ければ11時までに帰って来れる算段だ。

翌日。霧は前日より濃く、高く昇った太陽がオレンジ色に輝いている。早めに朝食を済ませ、フロントでドライバーさんと合流して車に乗り込む。吐く息が白い。

道中は意外なほどスムーズで、目的地にはかなり余裕を持って着いた。駐車場でドライバーさんの身の上話しを聞いて時間調整をしたあと、10時ちょうどに店に向かった。

スーパルマルトは大きな食料品店ではなく、小さな店の集合体といったところだった。10時開店とはいえ人影はまばらで、シャッターが降りたままの店が目立つ。なんか想像していたのと違うなぁ…と嫌な予感がよぎる。

 

中を暫く歩き回ったか個人商店や電気屋、散髪屋などがあるだけで、お目当てのスーパーマーケットが見つからない。時間が刻々と過ぎ、焦りだけが募る。

なかば諦めかけた頃、スーパルマルトの外側にあるペプシの看板が目に止まった。もしやと思って行ってみると…

 

あったー!(涙)

インドで初めて見る「Supermarket」の文字。規模はそれほど大きくないが、清潔な店内には大きな棚に商品が整然と並んでいる。奥には生鮮食料やアイスクリームのケースがあり、出口にはPOSキャッシャーもある。おおぉ、ちゃんとしたスーパーだ。

1階は食料品全般を扱い、2階は文房具や衣類などが並ぶ。やや奥まったところに飲料のコーナーがあるのだが、興味深いのはペプシ・コカ・コーラがそことは別にそれぞれの販売スペースを確保している点。

ペプシ(左)とコカ・コーラ(右)の販売棚。他のメーカーは別の場所で売られている。

ローカル飲料は果汁系がメインのようで、炭酸飲料は海外メーカー品が大部分を占めている。オランジーナやレッドブルなど、日本で馴染みのある商品の姿もあった。Compa colaはここでも見つけることはできなかった。

価格は250ml缶のペプシとダイエットペプシが20ルピー(約36円)、少し大きめのコカ・コーラ300ml缶が25ルピー(約45円)。会社の食堂でも同じ価格なので、このへんが相場なのだろう。

レジ係はちょっと無愛想だけど、英語も通じるしお釣りもきっちり渡してくれた。何よりレシートが出るのが嬉しかった。

ガラス戸の向こう

念願のスーパーの調査を終え、コーラで重くなった鞄をかかえて意気揚々と引き上げる。

この市場のなかにはインド料理や中華料理、タイ料理などの食堂がある。イートインスペースはないが、ちゃんした調理場とカウンターを備えている。この時間はまだ閉まっているが、お昼時にはテイクアウトの客で賑わうのだろう。

これらの店には個人商店のようなコーラのロゴ入り看板はないが、店の前にコカ・コーラかペプシの大型ディスプレイクーラー(ガラス戸の冷蔵庫)が設置されている。ちゃんとそのメーカーの飲料が入っていることもあるが、中にはチーズや肉などの食材庫にされているところもある。店の外にあるので、閉店時は鎖で巻いて南京錠でカギをかけてある。

道中の一軒のクーラーを何気なく覗いてみると、中に見慣れないコーラがあるではないか!

PEPSI ATOM?

アトム? げ、原子?

聞いたことのないコーラだが、ペプシのものに間違いなさそう。キャッチコピーは「JOSH COLA from PEPSI(ペプシからの冷やかしコーラ)」と、コンセプトすらわからない。周りの店のクーラーも見て回ったが、扱っているのはお店だけ。

かなり欲しい。だがシャッターは下りたまま。トランペットが欲しい黒人の子供のようにクーラーに張り付く私を、現地の人が不審そうな目で見ている。

時計を見ると残された時間はあと5分。その間にお店開かないだろうか。いや、開かなくても店の関係者が来てくれれば、何とか交渉するのだが・・。祈るような気持ちで店の前で待ってみる。

しかし誰も来ることなく、非情のタイムアップ。南京錠を恨めしく思いながら、心を残してスーパルマルトを後にした。


 

今回のインド訪問は、たったの4日間。しかもほとんど仕事だったので、残念ながら人生観が変わるほどの経験はできなかった。

しかし短い滞在で強く印象に残ったのは、インドという国のレンジの広さだった。経済、文化から食べ物に至るまで、あらゆるレベルのものがこの国にあるのではないかという気持ちにさえなる。

個人的に嬉しかったのは、多くの人がある程度の英語を理解してくれる点。現地のドライバーさんや店員さんから直接話を聞けるのは、中華圏にはない楽しみだ。

また来るぜ、インド!