コーラ白書
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悠久の地、インド。長い歴史と種々の文化に彩られたその国は、古くより旅人を惹き付けて止まない。また近年は経済成長著しく、世界中の企業が熱い視線を向けている。

私がインドに興味を抱いたのは、大学に入った頃だった。当時は個人でインドを旅する勇気はなく沢木耕太郎氏の「深夜特急」を読みふけったりバックパッカーの先輩の武勇伝を聞いては憧れを募らせていた。なんでもかの地では屋台で怪しげなコーラが売られていて、お腹をこわすかどうかは運次第だという・・・

いつかインドに行ってみたい。その願いは20年後に叶うことになった。デリーにある事業部へ出張する事になったのだ。インドの経済発展に感謝しつつ、ビジネス査証の手続きの煩雑さに辟易しながらも、1月上旬私はナショナルフラッグキャリアの機中の人となった。

ペプシのお出迎え

インディラ・ガンジー空港に降り立ったのは、ちょうど日が暮れた頃だった。窓の外は霧がかかり、街灯が幻想的に道路を照らしている。この時期デリーは霧が多く、飛行機が着陸できない日もあるという。

広く近代的なコンコースには、ペプシの自動販売機があちこちに設置されていた。すべて商品が見える汎用タイプで、ペプシやミネラルウォーター、スナック菓子などが並んでいる。炭酸飲料は細身の250ml缶で、ペプシコーラのみ「My Can」というオリジナルデザインが採用されている。インドではシンメトリックな旧グローブが現在も使われていて、ちょっとノスタルジックな気分になる。

ペプシは一本60ルピー(102円)。日本とあまり変わらない値段に驚く。後で分かった事だがインドは場所による価格差が大きく、街中ではこの三分の一程度が相場だった。そもそも自販機も空港以外で目にすることはなかったのだが。

イミグレーションを抜けて外に出ると、頼んでいたピックアップはすぐに見つかった。駐車場で車に乗り込み、ホテルへと向かう。高速沿いには巨大なモールやビジネスセンターが並び、名だたるグローバル企業の看板があちこちに輝いている。

しかし30分ほどして高速を降りると、風景は一変。道には車が溢れ、いたるところでクラクションが響いている。みんな運転はかなり荒っぽくて、遠慮していると前には進めない雰囲気だ。中にはサイドミラーを折ったままの車や、側面がボコボコになった車なんかも。そのエネルギッシュな光景に、急に自分がインドにいることを実感した。

悲しみのカツカレー

今回滞在するのは駐在の方から紹介された日本人向けホテル。部屋の説明書きはすべて日本語だし、朝食も和定食が選べてしまう。その上地下階には大浴場まであって、日本のビジネスホテルと遜色ないサービス内容だ。そういえば昔「ガイアの夜明け」か何かで観た気がしてきた。

荷物をほどいて一休みした後、食事を取るためにロビーに降りた。ホテルの周りは何もなさそうなのでレセプション横のカフェへ。さぁパンチの効いたもの食べようとメニューを見ると、天丼、カツどん、うどん・・・すべて和食じゃないすか!

異国モードに冷や水を浴びせられた私は、すがる思いでウェイターを呼び止めた。

「もっとスパイシーなの、ないですか?」

「今はジャパニーズしかありません」

がっかりした私は、とりあえずインドのカールフィッシャービールと、メニューで最もインド料理に近そうな「カツカレー(日本風)」を注文した。マイルドなカレーと薄いカツに嘆息しつつ、初日の夜は更けていった。

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