サントリーは炭酸水や家庭用カーボナイザーの普及を受け、家庭向けに炭酸飲料の原液の販売に力を入れている。先行して発売されたCCレモンやデカビタCの濃縮タイプが好評なことから、満を持してペプシコーラを投入した。
パッケージは「おうちドリンクバー」の非炭酸用オリジナルペットボトルを使用し、蓋に大きく「割るタイプ」と書くことで風呂上りに一気飲みされるリスクを軽減。希釈倍率は5倍で、炭酸水で割ることでの340ml 入りの本品1本から1.7リットルのペプシコーラを作ることができる。サントリーのサイトには「日本初!あの“ペプシ”の原液タイプが登場」と銘打たれたニュースリリースが発表され、一部の店舗では混合比率を印刷したオリジナルジョッキが配布されるなど、積極的にプロモーションをかけている。
「原液」と謳われているが、本品は実際にペプシコーラに使用されている原液ではない。ペプシコーラの甘味料は糖類のみだが、本品は濃縮倍率をかせぐため糖類に加えてアセスルファムやスクラロースなどの人工甘味料が使用されている。甘味料の風味はうまくマスキングされているものの、割ってみると若干ペプシの「ニセモノ感」が残る。
小規模なクラフトコーラでは原液の販売は一般的だが、すでに自社の充填ラインに多額の設備投資をした大手清涼飲料メーカーにとって濃縮シロップの家庭用販売は禁じ手である。これは自社の商品と直接競合する上、上流の商品ほど利益率が低くなるからだ。希望小売価格ベースではペプシコーラ1500mlが420円なのに対して、本品1本(328円)で1700mlのペプシコーラを作れてしまう。
サントリーはアレンジレシピやまぜまぜレシピなどを公開しているが、新たな需要の創造は限定的だと筆者は見ている。ペプシコーラの販売への影響はあるだろうが、サントリーは国内でオリジナルコーラ「ペプシ<生>」シリーズをフラッグシップに置いていることから影響は限定的なのかもしれない。
濃縮ペプシコーラをめぐるサントリーの戦略に興味は尽きないが、もし日本のコーラ市場が成長を続けていればこのような商品が日の目を見ることはなかっただろう。日本のコーラ市場が成熟し、嗜好が多様化する中でいかにブランド価値を最大化するか、サントリーの挑戦は続きそうだ。