コーラ白書
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2000年10月号
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コーラ津々浦々 泉大津 レッドバーン編

中本 晋輔

前回のあらすじ
「コーラの専門店がある」という情報を得た我々は早速取材のために泉大津に向かう。全く期待をしていなかった我々をそこで待っていたのは、物凄い量のコカ・コーラヴィンテージグッズであった。圧倒的なグッズの前に言葉を失う我々にオーナーの福田さんが「倉庫にもまだ在りますけど」と・・・。

圧倒的な質と量のヴィンテージを前にすっかりお腹いっぱいになった我々は、倉庫に向かう前に下の店のほうを見せてもらうことにした。この「Red Burn」は関西では珍しいアメリカン・ヴィンテージ専門店で、全てオーナーがアメリカで直接購入してきたという本格派ショップだ。アメリカの黄金時代のものを中心に、ランプや馬具といった実用的なものから自転車・ステンドグラスの嵌った店のドアに至るまで様々なものが揃っている。

そして店の真中にはコカ・コーラの流通モノのコーナーが設置されていた。「流通モノ」とは現在製造されているコカ・コーラグッズのことで、この店ではヴィンテージと厳密に区別されている。

「最近東京のWorld of Coca-Cola のせいでなかなか(商品が)入って来なくて・・・」と福田さんは言うが、こちらもかなりのラインナップだ。小物類を中心にボールペンやベルグラス、時計といった定番モノが揃っており、東急ハンズなんかの「コカ・コーラフェア」なんかよりずっと充実している印象をうけた。こういった小物がさりげなく年代もののボトルキャリアーに入っているあたりも心憎い演出だ。

また店の奥にはコカ・コーラのヴィンテージがガラス棚にカテゴリー別にディスプレイされていた。こちらは商品の陳列というよりは展示に近い形式で、初心者でも分かりやすいようにアイテムごとに説明が加えられている[写真]。

その中でも特筆すべきは1931年に発売されたコカ・コーラのミニチュアトラックである(右写真。これはStLouis Bottling社が当時使用されていたトラックを模して作ったもので、ミニチュアトラックの中では最も古いものである。現在でも非常に人気が高いモデルで、多くのプライスガイドに掲載されている。私は実物を見たのは初めてだったので、結構感動してしまったぞ。

一通り店内を見たところで倉庫のほうへ。話によると近くの貸し倉庫一部屋をまるまるコカ・コーラヴィンテージ用に使用しているという。一体どれほどのアイテムがあるのか検討つかず期待より不安が先行する我々を尻目に福田さんはにこにこしながら案内してくれた。

はたして倉庫は、まさにコカ・コーラヴィンテージで埋まっていた。6畳ほどの空間の中にコカ・コーラと名のつくものがひたすら詰め込まれているその光景に、我々はまた言葉を失ってしまった。とにかく凄い量だ。

Red Barn2Fのミュージアムと比較して、ボトル類がかなり充実している。特に記念ボトルは全て中身入り・紙ケース入り6本パックで揃っていた(コーラの紙ケースはそれだけでもアンティークとして人気があるのだ)。また後ろの棚には日本になかなか入ってこない、大型のヴィンテージグッズが無造作に並べられている。

この中でも特に目を引いたものをいくつかピックアップしてみた

■Diet Coke full bottle(8本セット)

現在ではアメリカでも目にすることのなくなったダイエットコークのボトル。8本揃って紙箱に入っているものは特に価値が高い。日本にはないスマートな1 paint (=16 oz =486ml) ボトル。

■Coke ディスプレイボトル

店頭ディスプレイ用に作られたhobbleskirtタイプのボトル。日本でもプラスチック製の貯金箱で似たようなものがあるが、こちらはガラス製。かなりのレアアイテムとのこと。

■Sprite boy プラーク

40年代にCoca-Colaのマスコットとして使われた"Sprite Boy"をモチーフにしたプラーク。くせ毛やトレードマークの頭のキャップ(王冠)までちゃんと再現されている。ただ立体にするには無理があったのか、イラストと比べるとかなり不気味な仕上がりだ(目が・・・)。ちなみにプラーク(plaque)とはバーやレストランの装飾に使われる飾り板のこと。

■RC Cola ボトルキャリアー

山積みにされたCokeの中に紛れていたRoyal Crown Colaの木製キャリアー(輸送用の箱)。鮮やかなオレンジが目を引く。これだけ大量のコカ・コーラヴィンテージを見た後だったので、何だかホッとした。

★ ★ ★

帰り道、思い切ってに尋ねてみた。これだけのコレクションを持ちながら、何故泉大津で店を始めたのか。東京や大阪で店を出せばかなりの反響になることは間違いないのに・・。

「いや、自宅がここだったもので」

な、なるほど。なんとなく納得してしまった私に、オーナーはこう続ける。

「古いものって、日本ではあまり評価されていないでしょう。特に大阪の人は新しいものが好きだから、ヴィンテージに対する理解は東京より5年は遅れていると思うんです。私達はここで世間より10年進んだことをやっているつもりなんですよ」

時代に媚びる必要はない、何故なら自分達のほうが前にいるのだから。これだけの信念をもっている福田さんにとって、店の場所など些細な問題だったのではないだろうか。

「Red Barn」の取材を通して感じられたのは、「本物」に対する圧倒的なこだわりであった。モノに対する妥協を許さない姿勢があったからこそ、これほどのクオリティのヴィンテージ・コレクションが実現し得たのだろう。もし貴方がヴィンテージに興味があるのなら、是非一度足を運んでみていただきたい。彼らのこだわりを堪能することが出来るだろうから。


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