コーラ白書
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今月の一冊「WHEN YOU ENTERTAIN」

中橋 一朗

この本の正式なタイトルは、"WHEN YOU ENTERTAIN / WHAT TO DO, AND HOW"。邦題をつけるとしたら、「おもてなしの作法」といったところか。1932年にアメリカで出版されたものだが、一般の書店には並ばなかったものと考えられる。実はこれ、コカ・コーラ社の販促グッズなのだ。

著者は Ida Bailey Allen という女性で、"Home Entertaining" (一応「おもてなし」と訳してみた)に関する世界的な権威と紹介されている。内容を目次からざっと拾ってみると、

など、まさに有閑マダムのたしなみ。当時のアメリカの豊かさが伝わってくるようだ。そして内容も、至極親しみやすく、参考になる。私は正式なダンスパーティーに誘われたりしたことはないし、今後もそういうことはないと思うが、この本があればとりあえず恥をかくことはなさそうだ(でも、やや古風な人と思われるかもしれない)。

だが、騙されてはいけない。これはあくまでも、コカ・コーラによる、コカ・コーラのための本なのだ。その証拠に、この本の至る所に、"Ice-cold Coca-Cola" (よく冷えたコカ・コーラ)が登場する。

「コーヒーの代わりとしてみんなが喜ぶもの、そしてその爽やかさに家族も友達も虜になってしまうもの、それはコカ・コーラです。よく冷やして、氷のたっぷり入ったグラスにビンの中身をそのまま注ぎ、振る舞ってください。」

「ブリッジを楽しんでいる間、お客様にはよく冷えたコカ・コーラを楽しんでいただきます。そうすれば、名試合がたくさん生まれるかも。」

そうして、読者が「よく冷えたコカ・コーラ」にすっかり慣れた頃(もしかしたら、辟易した頃)、読者は家庭でコカ・コーラを飲むことの重要性を説き始める。少し長いが、本書の最後の方から引用しよう。

例えば夏には、ご主人がお仕事から帰られた時や、お子さまが学校や遊びから跳んで帰ってきたとき、手作りのお菓子とよく冷えたコカ・コーラがあれば家庭全体の雰囲気が明るくなります。これはまさに、ヨーロッパの伝統をアメリカ式に取り入れたものです。イギリスには伝統的なティータイムがあります。フランスやドイツではコーヒーに時間を割きます。スイスではチョコレートで休憩します。このアメリカ大陸では、よく冷えたコカ・コーラでリフレッシュのひとときを過ごすのです。家庭での「リフレッシュのひととき」は、数え切れないほど繰り返されているでしょう。そして私がここで指摘しておきたいのは、家庭の奥様も、ご自分のためにこのようなひとときを過ごすことができるということです。そうすれば、家事を気持ちよく始めたり、楽しいレジャーを過ごすことができます。

私の訳はいい加減だが、原文はなかなかの名文と思われる。この本を手にしてコカ・コーラ党になった有閑マダムの数は、相当数に上っただろう。そしてこのような宣伝活動の積み重ねの結果として今のコカ・コーラがあるのだとすれば、実に侮れない。

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