コーラ津々浦々「バンフ・バンクーバー編」

中本晋輔

もう半年以上昔の話になるが、05年の夏休みはモリゾー嫁の希望でBanffへ行くことになった。

Banffといえばカナダ初の国立公園に指定された、世界的に有名な山岳リゾートである。北米の国立公園内はコカ・コーラとペプシの寡占状態でローカルコーラなど望むべくもないが、カナダ西部に行くには必ずVancouverを経由することになる。この街は4年前の訪問で記録的な量のニューエイジ系コーラを発見した思いで深い場所。北米のコーラブームが一段落した現在の様子を見ておきたかし、あわよくば新たなコーラが見つかるかもしれない。

かくして我々は9月の晴れた日、まだ真新しさの残る中部国際空港から機上の人となった(註1)。

高っ!

私がBanffを訪れるのは10年振りになる。当時はVancouverから汽車が出ていたのだが、今は一部のリゾート列車(とても高額)を残すのみとなっている。なのでBanffへは、Vancouverから飛行機で一旦ロッキーを飛び越えて、そこでバスに乗り換えるのが一般的だ。

バンクーバーに着いて驚いたのが、カナダの物価。空港のMoney Exchangeではややぼられ気味とはいえ1カナダドル=100円を超えており、昔の2割増の計算だ。また実際にレストランなどを見ても日本より高いことが多くて、以前の物価の安いイメージは完全になくなってしまった。

コカ・コーラもC$1.00〜1.20と、日本とほぼ同じだ。アメリカのほうが全然安いじゃん。

聞くところによると、今カナダは未曾有の好景気に沸いているそうだ。木材・鉱物・石油など、カナダで取れるものは何でも中国が買ってくれるという。原材料を産する国の強みである。

Vancouver国際空港で2時間ほど時間を潰してから、JazzというAir Canada系航空会社の小型機でCalgaryへ。座席の前には四角形の窪みがあり、「あなたがコントロールできるビデオシステムがもうすぐ付きます!」という旨のステッカーが貼ってある。テレビなどなくても、窓からのカナディアンロッキーの風景だけで十分満足なんだけど。

ライム祭り

Calgary空港を出たのは夕方の4時を回った頃だった。フロントグラスのひび割れたワンボックスのタクシーを捕まえ、インド訛りの運転手にホテルの名前を告げる。場所に確信が持てないのか運転中何度も住所を確認し、その度に車がラインをはみ出す。いいぞ、これこそカナダのタクシーの醍醐味だ。

この日のお宿はHoliday Inn Calgary。フロントには大量のトランクをカートに山積みにした老夫婦とか、裏のプールから上がってきた子供とか、クラブの遠征中と思わしき高校生の一団とかがたむろしていて、いかにも現地の宿といった雑然とした雰囲気だ。無骨で緩慢なエレベーターが実に良く似合う。

シャワーを浴びてベッドでうとうとしていると、突然電話が鳴る。フロントが、チェックインの際にカードの番号を控えるのを忘れたという。しかたなくフロントまで出向いて所用を済ませたあと、ちょっと散歩に出かけてみることにした。

人間のことを全く考えていない歩道と信号をいくつか越えると、ガソリンスタンドの並びに小さな店を見つけた。年期の入った平屋をペンキで少し見栄え良くしたような、アメリカの田舎でよく見た個人商店の類だ。窓の格子越しに、飲料棚のコカ・コーラのロゴがぼんやりと光っている。手始めとしては悪くない。

カウンターの物憂げな店員に目で挨拶をして、スナックの通路を抜けて飲料棚に向かう。ペプシとコカ・コーラのロゴの入った冷蔵棚が最奥に鎮座しており、これが店内で唯一の人工照明であった。こういうロゴ入りの棚のある店はメーカーの影響力が強いため、掘り出し物が期待できないことが多い。今回も内容は2社の独占で、ローカルものは見当たらなかった。

棚を見た印象は、フレーバーのトレンドが随分と変ったなというものだった。バニラやチェリーといった「甘味系」の影が薄くなり、替わりにライムが一大勢力を形成している。占有面積ではオリジナルを凌ぐほどの勢いだ。種類も豊富で、古参のDiet Coke with Limeに加え今年春発売のCoca-Cola with Lime, その後を追って発売されたPEPSI Lime Diet PEPSI Limeと全種揃い踏み。早速4本購入。

飲み比べてみると、同じライムでもフレーバーの印象が随分違う。元々主原料にライムが使われているからなのか、それともペプシの開発期間が短すぎた為なのかは分からないが、レギュラー・ダイエットどちらをとってもコカ・コーラのほうが完成度は高かった。

ライムの後味をもう少し堪能する予定だったが、一通り飲んだ後で口直しにと開けた”Rave EXTRA SALT & VINEGAR”が涙ぐむほどすっぱく、これに味覚の全てを持っていかれてしまった。この日の優勝はこのポテチに決定である。

Banffへ

翌日。バンフへのバスは空港発なので、ホテルでシャトルバスの送迎をお願いする。外で暫く待っているとさっきチェックアウトの手続きをしてくれた姉ちゃんが走ってきて、バスを動かしてくれた。ちょっとビビったが、行きのターバン氏よりは随分安定した運転だった。

“BANFF AIRPORTER”のカウンターで荷物を預け、ロゴの入った白いバンに乗り込む。満員の車内はバックパッカーや若いカップル、登山家などバラエティに富んだ顔ぶれ。恰幅のいい白人のドライバーが時折振り返って話すその土地のトリビアがなかなか面白い。個人的に気に入ったのが「カルガリーの家の半分は築6年未満」。石油景気に沸く同地の成長ぶりが伺える。

途中CAMMOREで一人降ろし、バンがBANFFの街に入ったのは午後2時を過ぎた頃だった。街の外れに宿を取った我々は真っ先に降ろされた。Calgaryに比べれば気温は随分低いが、鞄の底からコートを引っ張り出すほどではない。

街は良く整備されていて、メインストリートには様々な店が軒を連ねる。フードコートのある複合施設とSAFEWAYが1件づつ、それにローカルの商店が何軒かあり、日常生活には困らない。オフシーズンに入りつつあるBanffの街は人影も疎らで、やや寂れた観光地といった印象だった。

Bannfその1 Banffその2

カスケードガーデンやボウ滝を見て回るついでに何件か店を覗いてみたが、残念ながらCaribou Colaとか Bow Colaみたいなのはなく、予想どおりコカ・コーラとペプシの寡占状態。値段も他と変らず特筆すべきものはなかった。残念。

ちなみに今回のお宿はCaribou Lodge InnのDeluxe Loft Suite。吹き抜けのある開放的な部屋で1階にカウチとテーブルがあり、暖炉の煙突を巻き込むような階段を上がったロフト部分にベッドが据えられている。暖炉には薪まで用意されていたが使い方が分からず、とりあえず床の電気ヒーターで寒さを凌いだ。

とりあえず観光

2日目は定番BrewsterのMountain Lakes & Waterfallツアーに参加。小雨の降る生憎の天候だったが、霧に曇る渓谷や湖は晴天のときとは違う神秘的な美しさを宿していた。ただ寒いのだけはどうしようもなくて、仕方なく店でレインコートを購入。$C120は手痛い出費だが、どんな山奥でもクレジットカードが使えるのはあり難い(通信はダイヤルアップだったけど)

Lake Louiseを見下ろす展望台で、前の日にセーフウェイで買ったターキーサンドイッチと青りんごとオレンジ色のチーズペースト入りクラッカーの昼食を取る。暫くすると雲間から漏れた光が湖上に緩やかな虹を架ける。旅の醍醐味である。

その後ホテルレイクルイーズの食料店やお土産ショップを覗きながらバスの時間を待つ。超有名どころだけあってロビーは人で溢れ、周りの会話の半分が日本語と中国語だ。耳の寒さに耐え兼ねた妻が真っ白のふかふか帽子を購入し、レゴ人形みたいになっていた。

その後Takakkaw 滝・Emerald Lakeと回ったけれど、ここでも特筆すべきコーラは発見できず。まぁ大方予想はついていたし、何より期せずバージェス頁岩の地を訪れることが出来た私は至極満足であった。

 

(註1) 関空発の便が2便とも満席だった為。

 

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