コーラ白書
TOP 四季報 データベース 缶コレ 資料館 殿堂 検索 ヘルプ

魅惑のNishi Sagar Food Studio

1日プネーに滞在し、その翌日に次の目的地のムンバイへと向かう。ムンバイはかつてボンベイと呼ばれた港湾都市で、プネーから150km西に位置する。市内の渋滞を避けるため早朝に車で出発する。

プネーとムンバイはMumbai-Pune Expresswayと呼ばれる片側3車線の高速道路で結ばれている。高地のプネーから港町ムンバイまでの間は、都市から山岳地、林とダイナミックに変化するインド西部の風景を堪能できる(そしてデリー近郊のように牛が侵入することもない)。

早朝のプネー市内を抜けた車はインドの山岳地帯を抜け、緑豊かな丘陵地帯に入る。インドのデコトラと並走しながら大自然を貫く高速道路を2時間ほど走ると、道路脇にいくつかの商業施設が見えてくる。Pune-Mumbai間の貴重なサービスエリア、Nishi Sagar Food Studioである。

朝9時なのに駐車場はほぼ満車。特にトラックの姿が目立ち、物流の大動脈にいることを実感する。

大きな吹き抜けのフードコートの周りにはいくつものフードブースや商店、アパレルショップなどが軒を連ねる。 マクドナルドやスターバックスなどのグローバルチェーンもいるが、人気なのはインド風の朝食の店のようで長い列ができている。暖かいチャイが腑に染みる。

施設の中を歩き回っていると、ある売店のガラスショーケースの中に見たことないデザインのペプシが目に留まった。どうやらゼロシュガーペプシの新デザイン缶のようだ。ただ容器が日本と同じ背の低い350ml缶で、背の高いインドの缶とは異なる。どうやら東南アジアからの輸入品のようだ。

1地域1ボトラー制を取るコカ・コーラやペプシは、原則他の国からの製品の輸入を認めていない。インドもその例外ではないのだが、何故かサービスエリアでだけは海外のコーラが販売されている。過去にアグラの近くのサービスエリアでベトナムのCoca-Cola Plus Fiberを購入したことがある。何か抜け道があるのだろうか。

店員にショーケースを指さして買いたい旨を伝えると、まさかのNG回答。どうやら賞味期限が切れているらしい。

「飲まないから売ってよ(多分飲むけど)」

「ダメ。古いから売れない。これから返品するから」

しばらく交渉を続けたが、結局購入はかなわず、賞味期限内の別のコーラをいくつか購入して店を後にした。ちぇっ。

復活するThums Up

今回のインド訪問で気になっていたのが、インドのローカルコーラThums Upの復活だ

Thums Upは1977年の外資系コーラのインド撤退後長くトップシェアを誇ったインドを代表するコーラである。1991年の外資再参入後はペプシと激しいシェア争いを演じ、1993年にはコカ・コーラに買収され傘下に入った。コカ・コーラはThums UpとCoca-Colaを共存させる戦略を取っていたが、元々知名度の高かったインドでは積極的なプロモーションは行わず、インドの同僚をもって"Silently killing the Brand"と言わしめていた(多少のバイアスはあるだろうが)

これまでもThums Upはスーパーや個人商店では必ず見かける定番商品であったが、今回の訪問では何か雰囲気が違った。以前に比べ並べられている面積が広くなっていて、店によっては棚一段全部Thums Upなんてところもある。

そしてFood StudioではなんとThums Upの「記念缶」を発見。2024年のT20 男子クリケットワールドカップのインド優勝を記念したスペシャルエディションで、中央にはトロフィーと活躍した選手のイラストが描かれている。Thums Upと言えば親指を上げた大きな赤いロゴの青い缶のイメージがあるだけに、シルバー基調のデザインはなかなかインパクトがある。

これはあくまで想像だが、このThums Upの販売戦略の変更は前述のCampa Cola復活への対抗策のように思える。リライアンスは市場参入にあたり、低価格でシェアを取る戦略に出ると言われている。 受けて立つインドのコカ・コーラはフラグシップの価格を守りつつ、同じインドのローカルブランドであるThums Upでシェア防衛を図ろうとしているのかもしれない。


今回インドで入手した新しいコーラは5種類。目玉はなんといっても復活を遂げたCAMPA COLAだが、ドライブインでUAEやベトナムのコーラを入手できたのも幸運だった。

清涼飲料の巨大市場のインドでもここ数年健康志向からゼロカロリーのフレーバーソーダや塩レモネードのようなインドの伝統的飲料の人気が高まり、コーラの人気に陰りが出ていた。しかし今回はCAMPA COLAの再参入やThums upの復活など、コーラが盛り返しているのを感じた。インドのコーラ市場の動向から目が離せない。

→津々浦々 プネー・ムンバイ編 前編へ