コーラ白書
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JET君を使ってみよう

ソーダメーカーJET君にはコードや基板といった電気的な要素は全く入っていない。その構造は驚くほどシンプルだ。

まず背面のカバーを開けて、付属の炭酸ボンベを本体に取り付ける。ボンベの口の部分がネジになっていて、それを本体の樹脂製のメネジに固定するだけ。構造部品は全て非強化の樹脂で、ボンベを締結しながらクリープとか大丈夫なんだろうかと不安になる。

アセタール製のメネジ部
ボンベを締結固定した状態

そしてその上には樹脂製のスイッチ部分があり、押し込むとボンベの弁が押し下げられて炭酸ガスがリリースされる。それがノズルを通って正面のボトルに吹きこまれる仕組みだ。

ガスリリース用スイッチの構造。この下にボンベがある

 

まるでおもちゃのようなプラスチッキーな構造。ボンベ側で安全は担保しているのだろうが、高圧ガスを使用する製品でこの割り切り方はさすが海外製品である。でもこの作りで$80というお値段はちょっと高い気がするなぁ・・・。

 


 

ボンベの固定ができたら次はお待ちかね、カーボネーション(炭酸化)である。

事前に付属の1リットルPETボトルの線のところまで水をいれて、冷蔵庫で冷やしておく。水は冷えるほど二酸化炭素の溶解度が上がるため、ここで十分に冷やしておくのがポイントだ。

水が十分に冷えたら、前面のパネル下にPETボトルをねじ込んで固定する。パネルは前方に30度ほどチルトするように作られていて、取り付けは簡単。炭酸吹きこみノズルが水につかればOKだ。

そして最後に上部のボタンを押すと、「ボシュー」っという音とともにボンベ内の炭酸ガスがノズルを通して流れ込む。

傍から見ると水がボコボコしているだけに見えるのだが、10秒ほど押したあとコップに注いでみると・・・おおぉ、炭酸水になってる!

 

ボタンを押す時間を調整すれば好きな強さの炭酸が作れる。ただある程度以上は炭酸が解けなくなり、押し続けてもいわゆる「強炭酸」まではいかなかった。

 


 

炭酸水ができれば、あとは好きなソーダミックスを混ぜるのみ。

前述したように、Soda Streamには「純正ソーダシロップ」が用意されている。これは甘味料・香料・酸味料がすべてブレンドされた液体で、炭酸水に適量加えるだけでソーダが出来上がるという代物なのだ。500mlのシロップで、約12リットルのソーダを作ることができる。

通販でシロップも一緒にアメリカから取り寄せはしたが、10月から日本で発売されたのでシロップは国内で購入したものを使用した。シロップは日本版もアメリカ版もイスラエル製で、原材料も希釈濃度も同じ。多分中身は同一のものだろう。

国内パッケージ(880円)と北米パッケージ($5.95)

早速コーラのシロップを開けてみると、中には粘度の高い真っ黒な液体が現れた。このシロップと炭酸水を1:23で混合すればコーラができるらしい。要するに、コーラを24倍濃縮液したものなのだ。

このシロップを蓋の裏の軽量カップに取り、さきほど作った炭酸水に混ぜる。なんだか洗剤を図っているような気分だ。ボトルに注ぎ軽くかき混ぜると、あっというまにコーラが出来上り。この簡単さにはちょっと感動した。

 

高濃縮シロップの限界

市販品ほぼ同じ工程で作られた待望の自家製コーラ。前回のような爆発もせず、酵母の匂いもしない。これは期待できそうだ。

一口飲んでみると、ちゃんとコーラの味がする。これが家庭で作れてしまうのは確かに新鮮だ。しかし、えーっと、

 

・・・美味しくない。

 

フレーバーにインパクトがなく、酸味はほとんど効いていない。一昔前の安いアメリカ輸入品のような、のっぺりとしたコーラなのだ。シロップが足りないのかと追加しても全体的に濃くなるだけで、この傾向は改善されなかった。

そして何より気になったのが後味。飲み進むにつれ舌に妙な苦味が残るのだ。安物のダイエットコーラを飲んでいるような気分になる。

この後味についてはシロップボトルの原材料を見て理解できた。このコーラシロップはレギュラー(加糖)コーラ用であるにも関わらず、砂糖以外に人工甘味料であるアセスルファムKとスクラロースを使用しているのだ。

この理由としては、SodaStreamのスキームが高濃縮のシロップにこだわったからだと考えられる。コーラ1リットルに含まれる砂糖は約100g。SodaStreamで1リットルに加えるシロップは42mlであり、ここには20℃で頑張っても約80gしか砂糖を溶かすことはできない。これを補うために使った人工甘味料が、後味に影響しているのだ。

調べてみると同社のシロップのほとんどにスクラロース、またはアセスルファムKが使用されていることが分かった。高濃縮タイプはコスト面で有利であるが、味が落ちてしまえば元も子もない。最近は人工甘味料の後味をマスキングする技術も実用化されてきたので、今後改善されることを期待したい。


 

しかし、これでSodaStreamが否定されるわけではない。パンがなければケーキを、純正シロップがダメならサードパーティーのコーラシロップを使えば良いのだ。

そこでコーラ白書が注目したのがお茶のコーラとして有名な「しずおかコーラ」。発売元の木村飲料は、業務用にこのコーラのシロップを販売しているのだ。こちらは4〜5倍の低希釈タイプで、甘味料は加糖ブドウ糖液糖のみ。さらに緑茶(国産)まで入っている逸品だ。

SodaStreamで炭酸水を作りこのシロップを加えればあっという間に緑色のコーラが出来上がった。飲んでみても、市販のしずおかコーラと変わらない味わいだ。ちょっとしたファウンテンの気分が味わえて、大変ご満悦であった。

 

コスパは如何に?

SodaStreamの導入するに際し、気になるのがコストパフォーマンスだ。市販のコーラに比べてどの程度安くなるのか、日本での販売価格をもとに計算してみた。

国内での炭酸ボンベ(ガスシリンダー)の価格は3600円。1本で60リットルのソーダが作成できるので、初回は一リットルあたり60円となる。ボンベの再充填は2100円なので、2回目からは35円/リットルとなる。

純正シロップは1本880円で、こちらは12リットルのソーダ分に相当する。シロップのコストは73.3円/リットルと、かなり高価だ。ボンベ代と合算すると、1リットルあたり133円(再充填の場合は108円)となり、市販のコーラの1.5ペットボトルの価格とあまり変わらなくなってしまう。

その上ソーダメーカーの価格(JETの国内価格: 12600円)が乗ってくるので、現状では市販の炭酸飲料に対するコストメリットはなさそうだ。

ただボトルやボンベを再利用できるので、環境への負荷は軽いかもしれない。また何より家でソーダが作るのは非常に楽しい体験であるという点も、私の感想として付け加えておきたい。

 


 

これまでにも、家庭で炭酸水を作る機械は存在した。しかしSodaStreamは家庭にマッチするデザインに加え、純正ソーダシロップやボンベ充填などのインフラを整えることで自家製ソーダのハードルを大きく引き下げた。この功績は大いに評価されるべきである。

現在の課題はソーダシロップのレベルとコストパフォーマンスだろう。特に前者については、Soda Stream1社で解決するのは難しいかもしれない。今後飲料メーカーを巻き込んで良質なソーダミックスを供給する仕組みができれば、清涼飲料業界の台風の目になる可能性は十分にある。そんなポテンシャルを感じる装置だった。

 

→ おまけ編 色々炭酸化してみた