特集 C2 vs Blue 徹底比較

中本 晋輔

2004年6月、2つの新しいコーラが日本市場に登場した。コカ・コーラのローカロリーコーラ「Coca-Cola C2」と、PEPSIの青いコーラ「PEPSI Blue」である。今回は何かと話題のこの2つのコーラについて、コーラ白書的に徹底比較してみた。

1. プラットフォーム

Coca-Cola C2(以下C2)は糖類と人工甘味料を組み合わ、カロリーをカットした「ローカロリーコーラ」である。通常のCoca-Cola Classic のカロリー約42kcal/100ml に対し、C2は19kcal /100mlと半分以下に抑えられている。

甘味料には従来のアスパルテーム・アセサルファムKに加え、新甘味料「スクラロース」が使用されている。

コカ・コーラ社はC2について「「コカ・コーラ」だけが持つ独特のおいしさを変えずにカロリーを半分以下にした新製品」としている。

PEPSI Blue (以下Blue) は青色1号と赤色102号を使った「青いコーラ」である。国内では夏季のみの限定発売で、PEPSIに比べ炭酸との強さと酸味が変更されている。

サントリーはBlueについて「暑い日にぴったりのゴクゴク飲める、新しい味わいのコーラテイスト飲料」としている。コーラテイスト飲料・・・?。

2. 歴史

C2は6月7日に発売されたコカ・コーラの最新作。日本で先行発売され、今後北米やヨーロッパでも順次展開していく予定である。コカ・コーラ社のグローバルブランドが日本で先行発売されるのは今回が初めて。 

「ローカロリーコーラ」の概念は新しいものではなく、既に日本のCoca-Cola lightやカナダのPEPSI MAX などが存在した。C2はスクラロースを使用している点と、それをグローバルブランドに昇華させた点においてこれら従来品と一線を画する。

PEPSI Blueが初めて市場に登場したのは2002年。当時アメリカではJohn’s やVirgin Drinksなどの「原色系ソーダ」がブレイク中で、流行に敏感なペプシが自社カラーのコーラを開発したことは想像に難くない。

この初代PEPSI Blueは市場アンケートで希望の高かった(らしい)ベリー味(野イチゴ味)のフレイバーコーラだった。また発表時期がVanilla Cokeの発売日の直前だった為、ライバルへの目くらましとも揶揄された。濃厚すぎるフレイバーが災いしたのか、03年に生産中止となっている。

米国の消費者には2番煎じんと映った青いコーラは、海外では新鮮に受け止められた。シンガポールやマレーシアでは現在でもPEPSI Blueが販売されている。米国版と違ってこちらはフレイバーの無い単なる青いコーラで、ロゴやパッケージデザインも全く別のものが使用されている。

日本のPEPSI Blueはパッケージこそ米国版だが、中身はむしろアジア版に近い。

3. 名前の由来

コカ・コーラのよるとC2とは 「新しさや次世代感、カロリー半分などを意識した、世界的に通用するネーミング」であるらしい。一部で「カロリーコントロールの略」との説があったが、同社曰く「様々な意味でお客様に取っていただければ」とのこと。

名前の由来になるとCSのお姉さんのセリフが急に棒読みになるのが微笑ましかった。

ペプシブルーの名前の由来はあまりにも明らかである。が、そもそも何故青色なのかをサントリーに確認してみたところ、「そもそもペプシブルーは欧米40カ国以上で発売され大変人気のあったもの」と前置きした上で「新しいもの、斬新なものをお届けするのがペプシのスタイルであり、日本でこれまになかった青いコーラを発売した」との回答であった。

ちなみに青の着色料については「飲むと舌が青くなってビックリされるかと思いますが、お体には全く問題ありません」とのこと。サントリーのCS(カスタマーサービス)は相変わらず質が高い。

4. マーケットポジショニング

米国を含む大部分の地域ではこれまで糖100%のCoca-Colaと人口甘味料のみのDiet Coke または Coca-Cola lightのみで(註1)、今回の新製品はその中間にポジショニングされている。

日本コカ・コーラの資料によると、C2は「10代〜40代のカロリーを気にする層」をターゲットしている。ただし同資料ではDiet Coca-Colaも同じ層をターゲットとしており、明確な住み分けは行なっていないようだ。

日本が先行発売地に選ばれた理由として、日本独自のローカロリーコーラ「Coca-Cola light」が11年間販売された実績があったことは想像に難くない。Diet Coca-Colaの発売によって空白なったこのニッチを他社に奪われない為にもC2の国内発売を急いだのではないだろうか。

PEPSI Blueのインパクトのあるパッケージやメリハリの利いたテイストは、明らかに若年層をターゲットとしたものだろう。米ペプシが「PEPSI GENERATION」で躍進して以来若者に的を絞ったキャンペーンは同社のグローバルポリシーであり、SUNTORYもペプシの販売においてこの層を強く意識している。

より自然で体に良いものが求められ緑茶や健康飲料が幅を利かせる日本市場で、「青くて強炭酸なコーラ」はアンチテーゼ的な存在である。物珍しさが先行しがちだが、緑茶に飽きた若い世代を掴むことができれば一気にブレイクする可能性もある。

5. キャンペーン

アメリカでコカ・コーラが新ブランドを立ち上げるときには必ず大規模なキャンペーンを展開する。日本が先行発売地の今回も例に漏れず、かなり大掛かりなキャンペーンが展開された。

発売日の6月7日には東京タワーを使った大胆なパフォーマンスを決行。タワーの上下を交互に赤く点灯させ、「カロリー半分」をアピールした。ちなみに当日東京は雨で、視界はかなり悪かった。

また「TRY! Coca-Cola C2 コンボイ」なるものを投入、発売前日の「レッドジャック in Shibuya」を皮切りに、全国で500万本のサンプリングを予定している。そんなに配ったら売上に影響しちゃうんじゃないかと思ってしまうほどの、桁外れのスケールである。

発売後もプロモーションの手は緩むことはなく、複数のコンビニ・スーパー・自販機限定キャンペーンが矢継ぎ早に展開された。特に自販機のストラップキャンペーンは300mlボトル缶の形状をうまく利用したキャップが使われており、今後の当たり型キャンペーンのスタンダードになりそうだ。

また今回は自販機を使ったプロモーションも随所で行なわれた。発売2週間前にはコカ・コーラの自動販売機に先行してC2のダミー缶を設置、「Coming Soon」のステッカーを添付し消費者にアピールを行なった。

また発売後もボディをC2デザインにしたり、商品全てをC2にしてみたりと、かなり積極的に自販機を利用している。この手のキャンペーンは回転率を下げる為敬遠されがちだったが、今回は話題性を重視して実施に踏み切ったようだ。

C2とは対照的に、ペプシブルーのプロモーションは現在のところほとんど行なわれていない。以前なにかにつけて展開していたオンパックキャンペーンもTVCMもなく、国内のペプシ製品としては最も不遇な扱いを受けている。サントリーは7月よりペプシツイスト・ダイエットペプシツイストでMLBキャンペーンを開始しており、好調な既存製品に力を入れたいと言うのが本音なのだろう。

総括

初めから分かっていたことなんだけど 、Coca-Cola C2とPEPSI Blueは全然違うコーラである。実際C2のライバルはアメリカのPEPSI Edgeであり、海の向こうでは激しい戦いが始まっているようだ。

今回の新製品対決の特徴は、コカ・コーラが仕掛けてペプシが応戦するという従来と「逆の構図」と言えるかも知れない。コカ・コーラは全社を挙げて新製品C2の拡販に臨み、ペプシはライバルに注目が集まるのを阻止すべく青いコーラを投入した。ペプシがC2の狙うマーケットに本当に興味があるのなら、投入するのはBleuではなくEdgeであったはずだ。

ライバルの話題独占を阻止したという点では、PEPSI Blueは国内で十分な成果を上げたといえるのかもしれない。しかし今年の勝負の主導権を握っているのは、やはりC2で本気勝負に出たコカ・コーラであろう。今後のコカ・コーラ陣営の動きに注目したい。

オマケ企画

混ぜるな危険! C2とPEPSI Blue 混合の謎に迫る!


(註1)日本のCoca-Cola light は例外的にローカロリー(12kcal/100ml) であった。


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