今月のキューバ・リブレ 帝国ホテル大阪 The Old Imperial Bar

中本 晋輔

キューバ・リブレだけを飲みに行くというのが、お気に召さなかったのかもしれない。向かう途中でスコールのような夕立に遭った。慌てて傘を買ったが、帝国ホテルにつく頃にはすぶ濡れになっていた。

帝国ホテルの「The Old Imperial Bar」は、フロントを抜けた2階にある。23階にも眺めの良いバーがあるが、このホテルのメインバーはこちらだという。旧帝国ホテルの設計者フランク・ロイド・ライト氏の設計思想に基づくと謳われた店内は、その名にふさわしい落ち着いた雰囲気だ。

ここのキューバリブレは実にシンプルだ。褐色のカクテルの底に、厚切りのライムが沈んでいる。ややラムが勝っているが、ライムとコーラの香りもしっかりと残る。浮ついたところのない辺りは、バーの雰囲気と似ている。

野暮と知りつつも、バーテンダーにレシピを尋ねた。バカルディ・ホワイトにコカ・コーラ、ライムだけですよと笑ったあと、逆に尋ねられた。「他のラムも試してみられますか?」

コーラは知っていても、ラムはからきしだ。「おすすめのラムで」と答えると、手馴れた手つきで褐色の瓶を取り出した。大きな氷の入ったグラスに少し注ぎ、マドラーが心地よい音を立てた後、目の前でコカ・コーラで割って見せてくれた。

「これもカクテルによく合うんですよ」と、ハバナ・クラブの7年のラベルを見せる。一口飲むと芳醇な香りとラム独特のコクが広がる。ラムでキューバ・リブレは随分表情を変えるものだと、当たり前のことを納得させられた。

ここにはジャズも夜景もない。しかしここには酒を楽しむ雰囲気と、腕のいいバーテンダーがいる。そこで飲むキューバ・リブレが旨くない筈がない。

いつか、ここで独り酒を楽しめるようになりたいなと思った。


今月のキューバ・リブレ

帝国ホテル大阪 
「The Old Imperial Bar」(ザ・オールド・インペリアル・バー)

1100円

Total 5,428円 (2名)


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