Cola Collectibles コカ・コーラ コンツール缶

中本 晋輔

最近、表面に凹凸などの特殊処理を施した缶飲料をよく見るようになった。視覚と触覚に直接訴えるこの手法は質感向上を目的に主にアルコール飲料のパッケージに採用される例が目立つ。おそらくその先駆けとなったのは、97年に発売されたコカ・コーラのテスト品である。

「コンツール缶(Contour Can)」のと呼ばれたこの缶は、アリゾナ州Tacsonなど全米5都市で試験販売された。この名前は缶側面にコカ・コーラのコンツールボトル(ホブル瓶)を模した凹凸が着けられていたことに由来する。ロゴ部分の幅5センチの平坦とその上下の膨らんだ部分は、アルミ缶とは思えない「持ちごたえ」を与えてくれる[拡大写真]。

American National Can社はスイスのOberburg Engineerimg社の技術を元に、2ピースのアルミ缶でこの複雑な形状の缶を製造することに成功した。コカ・コーラはこの缶を大変気に入ったようで、消費者の反応をみるべくテスト販売を開始した。缶のデザインをLipson, Alport, Glass & Assocに依頼するあたりにも同社の意気込みが感じられる。

その後スチール缶バージョンをヨーロッパで発売するなど市場調査を続けてきたコカ・コーラだったが、翌98年4月に突然コンツール缶の撤退宣言を出した。

同社によると消費者の反応はすこぶる良かったが、しかし「それに余分に払うほどではなかった」という。いくらデザインや質感が良くても、パッケージに余分な金は払えないというのが消費者の本音ということなのだろう。

さらに致命的だったのが「自販機に入らなかった」という点だった。アメリカの飲料販売に占める自販機の割合は日本ほど高くないにしろ、使用できない販売ルートがあるのは致命的である。形状を変更する時に考えておいてもよさそうなものだが、この革新的な缶ではインパクトが優先されていたのかもしれない。

コカ・コーラはこの撤退について「これは自然なテストと学習(Tesing & Learning)である」と述べており、その後機能性を削ってまでデザイン重視したパッケージは発売していない。やはりコーラは中身で勝負、ということなのだろう。


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