コーラ白書
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3時間半の列車の旅を終えて古都フェズに着く頃にはすっかり日は落ちていた。アフリカ大陸とはいえ緯度的には大阪とあまり変わらないので、11月にもなると夜はぐっと冷える。

駅でカタコトの日本語を話すガイドさんと合流し、ミニバンでフェズの宿まで案内してもらった。夕暮れの街は仕事から帰る車で溢れ、あちこちでクラクションが鳴り響いている。渋滞を抜けて10分ほど走ったところ、メディナの端で車が止まった。ここからは歩くという。

道路脇の小さな階段を上り、土色の建物が並ぶ路地を進むと「Riad Ghita」に到着。周囲と同じ土色の建物で、小さな色タイルの看板が出ているだけの質素な外観だ。重厚な木の扉を抜け細い通路を進むと、不意に視界が大きく開けた。そこには色とりどりの調度品と色タイルやで飾られた、3階までの吹き抜けの空間。その美しさにと開放感に部屋を見上げたまま息を呑んだ。

この箱庭のような構造の建物は「リアド」と呼ばれる、モロッコの伝統的な邸宅のスタイルなのだそうだ。元々「中庭のある家」を意味するリアドは、近年プチホテルに転用され人気を博しているという。外に閉じて内に開いたこの形は、安心とリラックスを求める旅行者には最高だ。

このリアドの女性の主人が実に気さくで感じが良かった。「自分の家と思ってくつろいで」という言葉どおり、雰囲気はとてもアットホーム。夕食のタジンはちょっと塩辛く、家庭の味がした。

 


 

6時に目が覚めたので、リアドの屋上へ登った。朝日に照らされた白い建物がはるか遠くまでぎっしりと並んでいて、その規模に圧倒される。モロッコでは衛星放送が大人気のようで、街の上にはおびただしい数のパラボラアンテナが並んでいる。

朝食はリアドの中庭に用意されていた。天窓から降り注ぐ太陽の光がとても気持ちいい。ヨーロピアンスタイルの構成に加え、不思議な味の薄いパイのような一品もある。クロワッサンとオレンジジュースがびっくりするほど美味しい。

このリアドで使われている美しい模様の食器はすべてこのフェズのコセマ社によって作られたもので、ヨーロッパでも人気が高いという。

フェズのメディナ「フェズ・エル・バリ」は、街ごと世界遺産に登録されているモロッコ最古の都市。1000年以上の歴史をもつこの街は路地が複雑に発達し、世界一複雑な街と称される。

素人が1日で見て回るのは到底不可能と言われたので、現地のガイドに半日案内をしてもらった。流暢な日本語を話すアミンさんはフェズの王宮やユダヤ人街を手馴れた感じで案内すると、メディナの入り口のブー・ジュルード門で車を降りた。

「ここから向こうは車やバイクは入れません。入れるのは人間とロバだけです」 

門をくぐるとそこは8世紀の街並みだった。曲がりくねったメインストリート(といっても幅4mくらい)の両側には小さな店が軒を連ね、その隙間から路地がまるで木の根のように無秩序に延びている。遠くにカラウィン・モスクのミナレット(尖塔)が見えるが、そこにどうやったらたどり着けるのか見当もつかない。地形は起伏に富み、これがさらに方向感覚を狂わせる。

カサブランカのメディナとは比べ物にならない密度と複雑さ。「世界最大の迷路」と呼ばれるのも納得の、ものすごい街だ。

「僕もたまに迷いますよ」とアミンさん。このメディナには約13,000本の路地があるという。

無秩序にも思えるメディナの街だが、その中に同じ商品を扱う店が集まったスーク(市場)が形成されている。生鮮食料品のスークからスリッパ、ブライダル用品、テレビに至るまで店の場所が決まっていて、街全体が巨大なショッピングモールのようになっている。

そんな8世紀の面影を残す世界遺産にも、コカ・コーラのロゴは自然に溶け込んでいる。食料品店やレストランの軒下には、メディナ仕様の小さな看板が壁から飛び出すように設置されている。また赤い通函が山積みされている場所もあり、コカ・コーラが広く浸透していることが伺える。

美しい細工の残る神学校「ブー・イナニア・マドラサ」やカラウィンモスク、彫金屋、なめし革の作業場などフェズのメディナを一通り見回った後、アミンさんお薦めのレストランで昼食を取った。中庭のある落ち着いた雰囲気と上品な味のクスクスを堪能したが、おそらく2度とこの場所には戻ってこれないだろう。

 



アミンさんと別れた後、リアドの周りを散策していると一軒の食料品店を見つけた。

メディナ唯一の車道沿い、それもバス停の目の前という好立地にあるそのお店は、メディナの店としてはかなり大きい部類だった。店舗の半分は「Telebtique」という公衆電話コーナーになっていて、残りの半分で飲料やお菓子を売っている。冷蔵庫は全部で3台あり、うち1台がコカ・コーラ用、もう一台がペプシ用なっている。

モロッコのコーラのパッケージ規格は複雑だ。興味深いのは日本と同様350ml缶と250ml缶が存在する点。フランスを含め欧州は330mlが標準なので、この2つのサイズはモロッコの独自規格なのだろう。価格はコカ・コーラの250ml缶が3.8DH(=42円)、350ml缶が5.5DH(=61円)で、ペプシはそれより若干安い。

リターナブルボトルは細長い250ml瓶に加え、懐かしい1リットル瓶も存在する。250ml瓶は3DH(=33円)で同じサイズの缶より安い。購入の際におっちゃんがその場で栓を開け、飲み終わったら通函に返却するシステム。すぐに飲みたいときはこちらのほうがお得だ。

 

この他に500mlのPETボトルもあり、ペプシにいたっては330mlのミニPETボトルまでラインナップしている。モロッコの人はいったい何を規準にパッケージを選ぶんだろう?

メーカー
パッケージ
価格(実売)
コカ・コーラ
350ml缶
5.5DH
250ml缶
3.8DH
250mlリターナブル瓶
3.0DH
1000mlリターナブル瓶
500mlPETボトル
ペプシ
350ml缶
5.2DH
250ml缶
3.5DH
250mlリターナブル瓶
500mlPETボトル
330mlPETボトル

3DH

 

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