コーラ白書
TOP 四季報 データベース 缶コレ 資料館 殿堂 検索 ヘルプ

西アフリカでナイジェリアに次ぐ経済規模を持ち、産油国としても知られるガーナ共和国。経済発展著しいその首都アクラて、いま数多くのローカルコーラが発売されているという。今回はこれらの幾つかを入手できたので、飲み比べてみたい。

ガーナのコーラの歩み

多くの国でそうであるように、ガーナのコーラ史もコカ・コーラの伝来で幕を開けた。しかし1928年に販売が始まった南アフリカ共和国や、第二次世界大戦で米軍に帯同した北アフリカと比べると赤道アフリカ地域のコカコーラ上陸はずっと遅く、ローカル供給体制が整うのは1989年まで待たねばならなかった。

コカ・コーラがコーラの市場を確立し国の経済が成長すると、障壁の低い市場に数多くの飲料メーカーが参入を試み、より安価なコーラが市場に溢れる。現在のガーナはおそらくこのフェーズにあると考えられる。この現象は市場形成初期に発生し、その後急速に淘汰が進むことがほとんどだ。我々はガーナの貴重な「コーラのカンブリア爆発」に立ち会っているのかも知れない。

ガーナコーラの特徴

ガーナのローカルコーラのパッケージは350lのPETボトルが主流だ。お馴染みコカ・コーラのコンツアーボトルを除くと、ガラス瓶での流通は少ない。缶入りのものは一部のプレミアコーラや輸入品に限られる。ラベルも赤をベースにしたデサインのもが多く、ガーナでもコカ・コーラがベンチマークとなっている。

パッケージでいえば、ガーナの350〜500mlのPETボトルのキャップはすべて共通の形状で、日本のそれと比べるとちょっと浅いくで開けにくい。またキャップにはガーナのFDA認可を示すステッカーが張られている。

Bell Beverage をガーナで展開する飲料大手のBlow Chem industriesは、その名の通りPETボトルの成形加工メーカーで、パッケージの生産から清涼飲料業界に参入している。

ガーナではローカルメーカーが複数のコーラ飲料を製造・販売することが珍しくない。例えばKasapreko社はPumaとRoyalの二つのブランドでそれぞれ別のコーラをラインナップしている.。またTwellium Industrial Compan社は自社ブランドと共に、北米Monarch Beverage Companyからライセンスを受けたコーラを製造している。

ガーナでは日常の飲み物といえばまず水であり、清涼飲料水は(本来の意味での)嗜好品という位置付けのようだ。ポリ袋入りの500ml飲料水(井戸水や水道水を浄水処理したもの)が0.5ガーナセディ(約5円)で売られている中、ペットボトル入りの清涼飲料水(2〜10ガーナセディ、約20円〜100円)はかなり割高感がある。 ちなみにCoca-Colaは250mlPETで6ガーナセディ(60円)ほど。

アクラの住宅街でコーラを販売する露店 写真:中橋一朗

またそれら清涼飲料水の中でも、コーラは必ずしも主流ではない。どちらかといえば、Malt(モルト)と言われる麦芽飲料(いわゆる麦汁。ビールやウイスキーの原料のひとつ)や、Sobolo(ソボロ/パイナップル果汁にショウガその他のスパイスを加え、ハイビスカスの花弁で着色したもの)の方が人気があるように思われる。数多存在するローカルコーラを一体誰が何処で買っているのか謎なのだが、ビジネスとして存続している以上、一定の需要はあるのだろう。

なお他の途上国同様、ガーナのローカルコーラには砂糖と人工甘味料を併用したものが多い。特に低カロリーを謳っているわけではなく、コストダウンが目的だろう。

ガーナのコーラ飲み比べ

ガーナの首都アクラで手に入るコーラを飲み比べてみた。なお価格については現地スーパーマーケットでの実売価格を参考にした。

Puma Cola

l
C2.20 (約29円)

1989年創業、ガーナで蒸留酒やソフトドリンクの製造販売するKasapreko社のコーラ。王冠をかぶったプーマのイラストがチャーミング。同社はコーラの他にクランベリーやモルト、エナジードリンク等をPumaブランドで展開している。

甘味料に砂糖・コーンシロップと人工甘味料を使用しているためか、甘みが複雑。酸味、フレーバー、炭酸が控えめで、ジュースのようにゴクゴク飲める。

 

Royal Cola

C2.70 (約35円)

こちらもKasapreko社のコーラ。頭でっかちな独自形状の500mlペットボトルを採用し、350mlが一般的なガーナのコーラの中ではお得感がある。Royalブランドではグレープやアップル、モルトをラインナップする。

砂糖と人工甘味料を併用したコーラで。甘みと酸味が強い。炭酸も控えめ(抜けたのかも)。コーラのフレーバーが弱く、途中で何を飲んでいるのか不安になることも。

後味がどこかキュウリっぽい。

 

5 Star Kaesar Cola

C1.70(約22円)

2009年にガーナで創業し、5 star の清涼飲料ブランドを展開するMulti-Pac社のコーラ。ロゴの上とペットボトルの胴に5つの星がデザインされている。

Bigoo Colaと同じレベルの低価格帯ながら、甘味料は砂糖のみを使用している。甘さの強いコーラで、フレーバーは弱め。微炭酸レベルの炭酸強度だが、これは試飲までの間に炭酸が抜けてしまったらかもしれない。後味はスッキリとまとまっていて、飲みやすい。

ちなにみ同社はKolah Coolというモルトでもコーラでもない謎飲料も発売している。

 

Bigoo Cola

C1.60(約21円)

2013年創業のTwellium Industrial Companyのコーラ飲料。ミネラルウォーターのVernaも手掛けている。

今回飲み比べたコーラの中で最も価格は低いが、甘味料に砂糖100%を使用している。

しっかりとした甘みと砂糖の飲みごたえがあり、炭酸も強め。フレーバーがチープだが、これはこれで十分美味しい。おススメ。

 

Original American Cola

 

こちらもTwellium Industrial Companyのコーラ。前述のBigoo Colaが同社のオリジナルコーラであるのに対して、 本品はアメリカのMonarch Beverage Companyからライセンスを取得して生産している。甘味料は砂糖+アセスルファムK+サッカリンという珍しい組み合わせ。

アメリカンコーラとしか表現できないような、汎用的なコーラフレーバー。後味にバニラの香りと、ウリのような独特の酸味が残る。他のガーナのローカルコーラに比べて甘さはやや控えめ。

 

 

 

Bel Cola

 

ペットボトル成型メーカーとして1994年に創業し、その後飲料業界に参入したBlow Chem industries。彼らの展開する炭酸飲料ブランド「BEL beverage」のコーラがこちら。

甘味料に砂糖のみを使用しており、しっかりとしたボティ感がある。フレーバーはチープだが、普通にコーラとして美味しい。炭酸が強いのも良い。

 

Bel Cola Premium

C7.90(約103円)

BEL ブランドのプレミアムコーラ。価格は7.9ガーナセディと他のコーラの3倍以上。今回の飲み比べで唯一のガラス瓶入り。

ガラス瓶のためか、他のペットボトルのローカルコーラに比べて炭酸が圧倒的に強い。フレーバーは強くないが上品。砂糖のしっかりとした甘さと飲みごたえが楽しめる。奇をてらわず、しっかりと作りこまれたプレミアムコーラという印象を受けた。美味。

 

BEL BLACK MIX

同じくBELブランドの、いわゆるコーラハイ。アルコール度数は8%とまあまあ高めで、その分パンチはある。一応ウイスキーらしいトップノートはあって、そのあとで砂糖の風味がグーンと追いかけてくる感じ。まあ、日本のコンビニで時々売られている、ごく普通のコーラハイとさほど違いないと考えてよろしい。

半年ほど前にスーパーマーケットで発見して捕獲していたものだが、その後一向に見かけない。コーラとの出会いはまさに一期一会である。(中橋)

余談・カカオの実

ガーナと聞くとチョコレートを思い出される方が多いかもしれない。日本にとって最大のカカオ輸入相手がガーナであることは事実なのだが、実のところガーナ国内でチョコレートの生産はほとんど行われていない。チョコレートはヨーロッパ発祥の洋菓子であり、その原料のカカオは中米原産の果実である。ガーナでは、板チョコ1枚はコーラ10本分くらいの価値がある。

そしてチョコレートの原料になるのはカカオの実の種子部分だけで、果実の部分は捨てられている。ビワの種だけを使い、身の部分は捨てることを想像していただければよい。そしてその実の部分こそ程よく甘酸っぱく、果汁はもしかしたらコーラより美味しい。いささか釈然としない話である。

四季報 TOPへ