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中本 晋輔 牛乳瓶の蓋、ワインのコルク、そして瓶ジュースの王冠。これらは全て飲み物の保存を目的に作られた、ただ栓をするだけの存在である。それでいながらこれらの栓には不思議な魅力があり、何故かコレクター心をくすぐる。テーブルマナーにはワインのコルクに関する「特例」があるし、幼い頃給食の牛乳の蓋を集めていた方も多いのではないだろうか。王冠に関してもまた然りで、私は小学校の頃珍しい物をまるで宝物のように大切にしていたのを思い出す(この頃からおかしかったのか?)。今回紹介するのはコーラの王冠を使用したバッジ「コーラヴィンテージクラウンバッジ」である。 本編に入る前に王冠の歴史について少し述べる事にする。瓶入りの飲料が開発された当時、炭酸飲料の栓にはワインと同様コルクが使用されていた。1894年に製造されたコカ・コーラの初代ボトルなんかもコルク栓だったのである。コーラを飲むのに栓抜きが必要というのは、何だか変な感じだ。 20世紀に入ると板金加工の進歩により、金属を折り曲げて瓶の口を外から覆う技術が開発された。王冠(クラウン)の誕生である。ただしガラスに金属を直接押し付けただけでは炭酸が抜けてしまうので、当時は内側に薄いコルクを貼り付けてガスバリアー性を高めていた。60年代に入ると合成ゴムやプラスチックが安価で供給されるようになり、現在のような王冠になった。ちなみに王冠のぎざぎざの数は常に3の倍数になっている。これは王冠を瓶に取り付けやすくするための工夫だとか。 この「コーラヴィンテージクラウンバッジ」は古い王冠を使ったアクセサリーで、裏面に安全ピンを取り付けただけのもの簡単なバッジである。この中の多くは裏面にコルクが使われており、1960年以前の物が主流である事が分かる。 40年も前になると今では製造中止になっているものやロゴデザインが現在と違うものがほとんどで、レトロでありながらも新鮮だ。 コーラに関するものは7種類が確認されており、中には珍しい物も多い。たとえば現在滅びてしまった"LOTTA COLA"の16オンス瓶のものや、現在とロゴデザインの異なるCoca-Colaのコーラブランド"TaB"のものなどはコーラファンにとってかなり魅力的である。物によっては当時の原材料の情報なんかも載っていて大変興味深い。 本来なら開封と同時に捨てられる運命にありながら、40年の年月を経てアクセサリーに生まれ変わった王冠。そこには、コーラの歴史の1ページが確かに刻まれていた。このレトロなアイテムはフリマや東急ハンズで購入できる。価格は800-350円くらい。でもハンズでクラウンバッジがジョークグッズにカテゴライズされているのはちょっと可哀相な気がするぞ。 [四季報 1999年4月号] [コーラ白書] [HELP] - [English Top] Copyright (C) 1997-2000 Shinsuke Nakamoto, Ichiro Nakahashi. |