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コーラ小説 / スクールフェスティバル
藍住美麗(寄稿)

佐奈: 明日はね、うち文化祭なんだ。よかったら来てみない?
勇太: え? いくいく。学校は第四だったよな? 何時から? どうせだったら会いたいな。
佐奈: うーん、でも明日はクラブで一日中運動場だから構わないよ。8時30分からだよ。じゃあ、2時にクラブの方、来てくれる?
勇太: 了解。じゃあ、楽しみにしてるよ。あ、そうだ。確か炭酸飲料好きって言ってたな? 差し入れしようか?
佐奈: うん。じゃあ、コーラをよろしく。
★ ★ ★

「今日は私のメル友が来るから顔も知らないし案内してあげてね。『部長さんに会いたいのですが』って言うと思うから」
 部長権限を少し利用してクラブのメンバー全員に呼びかけた。ふふ。1年以上かけて仲良くなった勇太君。初めて会う楽しみは不安を遥かに上回った。
 ネットから始まる恋愛……カッコいい!
「じゃあ、各自仕事についてください。解らないことがあれば私か副部長に言うように」
 その後、私は俄然忙しくなった。猫の手も借りたいとはこのことかもしれない。

 時刻は1時40分。昼ご飯も食べずにほとんどぶっ通しで接客をしていた。それと、後輩からの質問に答えていっていた。
「あ……」
 1年の後輩からの質問に答えた後、不意に身体の動きが止まった。
 目の前が徐々に白くなっていく。急にライトを見た時に目が眩む、そんな感じだ。普段から目眩は多い。しかし、こんなに長い間続くのは久しぶりだ。
 昨日2時間しか寝ていないのがいけないのか、それとも休憩をさぼっていたのがいけなかったのか……私は、部室へ一旦戻ろうとしたがとてもそれまでもちそうになかった。思わず、その場にあった椅子に座り込む。
「大丈夫ですか!?」
 後輩がきいてくれているようだがどこか遠い。あ、ヤバイな……と思っていたら身体から力が抜けた。ちょっとぉ…私がいないとこのあとメール友達が来るのに……あぁ……あと20分で2時じゃない……
 力が抜けた後、目の前も思考も真っ白になった。

「……さん、佐奈さん……」
 誰かの声がして私は目を覚ました。目に入ったのは見慣れた保健室の天井。
「今。何時?」
 どれくらい倒れていたのだろう? クラブの方、放っておいたらまずいのに!
「あ、目、覚めました? 大丈夫ですか? あ、今2時3分です」
 友達の声ではない。後輩の声でもない。……誰?
 そこには白い花柄のワンピースを着た同い年くらいの女の子が座っていた。制服ではないので外部の人らしい。こんな知り合い、いただろうか? 人目でお嬢様と解るような……
「はじめまして。里見嶺香と言います」
「あ……加藤佐奈です。えっと……」
 嶺香さんが笑う。品のある笑顔で笑うと同時に長い髪が揺れた。どこの御令嬢さんだう?
「多分、佐奈さんには勇太と言った方がわかりやすいと思いますけど」
 私は一瞬、目が点になった。
「え?」
「炭酸飲料は飲めます? コーラを買ってきたんですけど冷えてて気つけにはいいと思いますよ」
 差し出されたコーラを一気に飲み干す。
 なるほど、彼女は私を騙していたのか。そう思ったが腹は立たなかった。ピリピリとーラが喉元を刺激する。
「怒ってます?」
 心配そうに彼女が私の顔を覗き込む。私はクスっと笑って見せた。
「コーラに免じて許してあげるよ」
 彼女も笑った。

 ネットから始まる恋もいいけど友情も悪くはないんじゃない?
 いや、ネットからというよりはコーラからというべきかしら?

★ ★ ★

■作者のプロフィール

ハンドルネーム:藍住美麗
誕生日:19??年7月14日(夏です)
血液型:B型(おおらか?)
職業:オンライン小説家(自称)・学生(本来)
趣味:小説執筆・手芸・HPづくり(他にもたくさんあるのですが・・・時間が無く て)
e-mail: aiaiai@kitaoka-honten.co.jp
ホームページ:「美麗の本棚」
応援メール、HPカキコ、よろしくおねがいします。

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