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Cola Collectibles / Coca-Cola 印鑑箱
中本 晋輔

印鑑箱 コカ・コーラグッズと呼ばれるものには、その用途によっていくつかの種類がある。一つは清涼飲料と全く関係ないメーカーが、コカ・コーラ社に金を払ってロゴの使用権を得て製作したもの。おそらく一番目にする機会が多いのがこれで、価値も(よほど古くない限りは)それほど高くなることはない。2つめはコカ・コーラ社がプロモーションを目的に製造したロゴ入りのグッズで、ノヴェルティと呼ばれるものである。これはいわば「純製」のグッズであるうえほとんどの場合製造数が限定されており、コレクターの間で高い人気を得るものが多い。

これらとは別に、コカ・コーラ社及びボトラーが何かの記念として社内用に製造するコカ・コーラグッズといものも存在する。これらは同社と仕事上の関わりがない限りなかなか目にする機会が無いもので、一般にはその存在すら知られていない事が多い(かの有名な"3 minute glass"ですら、実物を見たことのある方はほとんどいないのではないだろうか)。今回紹介するのはそんな記念として作られた(と思われる)「コカ・コーラ・印鑑箱」である。

これは1989年に利根コカ・コーラボトリングによって作られたもので、関係者に配布されたものらしい。一般にコカ・コーラグッズにはどこか明るく軽い印象があるが、この重さ1キロを超える鋳鉄の箱には威厳すら漂う。錆止めで深緑に塗装された表面の、梨の実のような手触りが心地よい[写真]。とにかく、他のグッズには無い凄い存在感である。中には朱肉(それもスポンジではなく綿に朱を染み込ませたもの)と朱肉拭き、それに印鑑二本分のコンパートメントがあり、実用的な作りになっている。なかなか趣深い逸品である。

日本では企業が内部用に自社の銘入り品を作るというのは決して珍しい事ではなく、中でも印鑑箱はかなりメジャーな部類に入るものだ。しかしコカ・コーラ製となると、何とはない違和感を感じてしまう。この鉄の箱は、普段決してみる事のできないコカ・コーラ社の企業としての素顔を垣間見せてくれる貴重な一品といえるだろう。


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