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![]() 富士山アタック2004レポート (その2)なかはしいちろう 山頂はスシ詰め,そして雷雨
食事を終えて,明日の計画についてブリーフィングでも,と思ったら,突然強烈な低音が鳴り響いた。続いて屋根を打つ雨音。・・・雷雨だ。スコールのような雷雨。 「雷なんで,電気消しま〜す。お手持ちの電気機器は全部電源切ってください。」 言い終わる間も無く,あたりは真っ暗。あとは寝るしかない。しかし,さすがは超繁忙期の富士山頂。布団はスーパーすし詰め。 どれくらいスーパーかというと,布団1枚に3人は詰め込もうかという,まさに寝返りどころか身動きさえ取れないスーパーさ。しかも右は柵,左は中本。気温が低いので暑苦しいということはないが,押しつぶされそうな圧迫感だ。ずっと続く雨音のせいもあってか,相当の疲労にも関わらず,ほとんど寝られない。 恐らく9時か10時頃のことと思うが,あたりがやや騒がしくなった。どうも不意の来客らしい。この時間,この寒さで,しかも雷雨の中,なんとかここまで辿り着いた熟年夫婦のようだ。「本当に死ぬかと思った」と漏らす2人に対し,山小屋の従業員は 「濡れてるものは全部脱いで寝ないと死にますよ」 と,親切なのかクールなのかよくわからない指示をしていた(関西人にとって関東方言はやや冷たく聞こえる,ということもあるのだが)。まあ,遭難事故に至らず,何よりではある。 二人きりのお鉢巡り・トイレ発煙山の朝は早い。翌朝,というより未明,3時頃になると周囲が段々騒がしくなってくる(スシ詰めで寝苦しいせいもあるだろうが)。トイレ(離れにある)から戻った中本によれば,天候はすっかり回復しているというので,地図上の最高地点である剣ケ峯からご来光を眺めることにした。 余分な荷物は広場の隅に置き,カメラ,懐中電灯と少量の食料,そして缶コーラだけを持って,3:30出発。はるか下方には街の明かりが瞬いて見える。
そんなこんなで,1時間ほどで剣ケ峯に到着。かつてのランドマークだった白いレーダードームは撤去されているが,測候所自体はその最後の夏をそこで過ごしていた。周囲には同じくご来光を拝しに来た人々が数十人ほど。 やがて正面の空がみるみる明るくなり,5時頃,ついに太陽が姿を現した。なかはしは写真を撮りまくったのだが,現像してみると失敗作ばかりだった。 荷物を置いた場所まで戻る途中,なかはしはトイレを利用したのだが,どうも処理装置の調子が悪いらしく,用を足すと下から煙が噴き出してくるのだった。イヤな煙だ。 なかはし,ヒザ死亡
7合目までは,登りとほぼ同じコースを引き返す。そこからは砂走りと呼ばれる下山専用の道だ。名前の通り砂地の道なので,適当に勢いをつければ,ズルズルと滑りながら走り降りることが出来る。とても速い。 ・・・のだが,必ずしも楽ではない。足腰への負担はそれなりにある。なかはしは途中から持病のヒザ痛が発症。8:20砂走五合に到着した時には,既に後ろ歩き体制(註)に移行していた。 さらに30分ほど足を騙しなら歩き,なんとか新五合目のバス停まで到着。冷や汗を拭った。あとは帰阪するだけだ。御殿場線で沼津まで向かい,東海道線に乗り換えて三島で降りる。ちょうど次のこだまが近付いていた。 (註)坂道を降りる時,後ろ向きに降りると何故か足腰への負担が和らげられる。でも,危険だから試さないように。 消えた三脚
・・・三脚だ。三脚が無い。 三脚には足が3本生えているが,自分で歩くことは無い。逃げたのではないとすると,どこかに置き忘れた? そういえば,下りの途中から,三脚は中本に持ってもらっていた。で,帰りのバスに乗った時には,持っていた。御殿場の駅で立ち食い蕎麦を食った時にも,持っていた。御殿場から電車に乗った時も,持っていた。そして,それを網棚に置いていた。網棚? 網棚! 駅員さんに調べてもらったところ,そのような忘れ物は見つかっていないというので,この場は諦めて帰ることにする。中本は非常に申し訳なさそうな顔をするが,横で見ていた私のミスでもあるので,まあ仕方ない。 ・・・でも,ちょっと気まずい二人。 コーラ白書の富士山取材は,ちょっと微妙な雰囲気のうちに終わったのであった。 後日談。1週間ほどしてから関係各所に問い合わせたところ,三脚は沼津警察署に拾得物として保管されていた。 「どんな三脚ですか?」「普通のです。」 「メーカーは?」「忘れました。」 「目印とかありませんか?」「ありません。」 みたいな厳しいやり取りの末(註),それは着払いの宅配便で無事送り返されてきた。精神的には激しく疲労したのだけれど,一応めでたし,めでたし。 (註)沼津警察の名誉のために付言しておくと,本当は真面目なやり取りがあった。 |
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