特集 富士山アタック2004

富士山アタック2004レポート (その1)

なかはしいちろう

コーラ白書,富士山頂を目指す

コーラと御来光富士山は高い。どれくらい高いかというと,日本で一番高い。数字に直すと3,776m。同じ高さのビルを建てれば軽く700階を越えるだろう。普段は隣の階へさえエレベータで移動する怠惰な人々が,毎年大挙してこの山頂を目指す。これも考えてみれば奇妙なことだが,コーラ白書的な視点から言えば,興味を惹かれる点は別にある。

すでにイベント特設ページの方にも書いたのだけれど,富士山頂には都合3軒の山小屋があり,缶やペットボトルのコーラを販売している。当然これは日本最高峰のコーラ販売店であるし,考えてみれば,標高4,000m近い高地でコーラを買うことができること自体,世界的に見ても珍しいケースと思われる。つまり,コーラ白書にはその状況を調査する責務がある。

中本やなかはしのような素人が富士山に登ることができる期間は,事実上7月,8月の2ヶ月間に限られている(それに,それ以外の期間は山小屋が休業しているので調査の意味を成さない)。従って,子はないが妻ある身の中本は貴重な夏休みの一部もしくは全部をこのフィールドワークのために費やさねばならないことになった。ざまあみろ,じゃない,気の毒なことである。

計画を立てる

登山シーズン中の富士山は充分に人の目があるので,遭難の可能性はまずない。とはいえ,気象条件の厳しい場所であるから,事前に充分な計画を練っておく必要がある。

富士登山に関しては後悔しない富士登山あっぱれ!富士登山などの優れたwebサイトがあり,情報収集には苦労しない。なかはしは以前,富士宮口からの登山道で登頂したことがあるが,草一本生えない荒れ地の急斜面を延々登るコースで,正直全然楽しくなかった。そこで今回は,距離こそ多少長くなるものの,次のようなメリットがある(らしい)須走口からのルートを選択することにした(上記サイトからの受け売りだけど)。

  • 樹海の中からスタートするため,目に美しい
  • じっくり高度を稼ぐので,高山病になりにくい
  • 砂走りを滑り降りることができ,下山が楽
  • 比較的マイナーなので,空いている

日帰りはちときついが,途中山小屋で一泊すれば十分余裕を持って行動できるだろう。久しぶりの遠征だから,イベント告知をして読者の参加も募ってみたらどうだろう,なんていう話も決まった。6月中には企画の骨子は出来上がっていたと思う。

ところが,7月に入っても肝心の日程が決まらない。中本が仕事上のトラブルを抱えているらしく,先の予定の見通しがつかないというのである。

四季報7月号の編集も佳境に入った7月中旬,ようやく8月6日(金)〜8日(日)という予定が提示された。土曜の山小屋は相当混雑するので,金曜登山,土曜下山が可能なこの日程は悪くない。また,日曜にはじっくり休養できる。

四季報の仕上げと重なってしまったため後回しにされてしまったが,直前といえる7月末,イベント告知のページも開設された。準備は着々と進む。

ところが8月2日,中本から電話。

「8月6日,会議決定...」

コーラ白書の取材といえば,中本のドタキャン。今回もキター!

かくして,コーラ白書の富士山アタックは,8月7日〜8日の2日間という厳しい日程で行なわれることになったのだった。げろーん。

砂礫の果てに

五合目付近結局のところ,中本は6日の夜には会議から解放され,我々2名は三島行きの最終こだまに滑り込むことができた。チーズ蒲鉾と缶ビールの香りが充満した車内は,週末深夜独特の弛緩した空気で満ちている。三島駅で降り,15分ほど道に迷ってからビジネスホテルで一泊。翌朝,JR御殿場から登山バスで須走登山口に到着した。

空を見上げると,晴天の天気予報とは違い,生憎の曇り空。

須走口の駐車場は少し離れた場所にあるため,登山口はバスの転回スペースと公衆トイレ,数件の売店が見えるだけの比較的こじんまりとした雰囲気である(富士宮口と比較しての話だが)。

9:20,身支度を済ましていよいよ出発だ。中本は売店を覗いてコーラの値段をチェックしている。コケモモの木が並ぶ平坦な道を5分ほども歩くと,道は樹林の中へと入っていく。爽やかな森を少しずつ登っていくうち,バラバラと雨が降り始めた。

1時間ほどで樹林帯を抜け,周囲は砂礫地になる。あとは単調な登りを黙々と進むだけだ。11:06,本六合目に到着。中本は山小屋のコーラ売価をチェック。私は何故かトイレの利用料をメモに残している(水洗トイレ¥200)。12:40 本七合目(トイレ¥100)に到着,以下同様。持参した昼食を済ませる。

六合目以降中本の表情はやや苦しそうになってくるが,休憩して呼吸を調えると回復するらしいので問題ないだろう。ペースは至って順調だ。

登山道はさほど広くない階段状の人道と,ブルトーザーのための坂道とが交差,合流,分岐を繰り返しながら延々続く。本六合目あたりからは草一本さえ見た記憶がない。まるで火星みたいなところだ。時折小雨がばらつき,寒くなったと思ったら陽が射して蒸し暑くなる。

13:55 本八合目(トイレ¥100)。ここで河口湖・吉田口方面からの登山道と合流するため,人が増える。14:20 八合五勺(トイレ不明)。ここからラストスパート,一層急になる坂道を黙々と登れば,山頂の鳥居が見えてくる。

以上の間,ほとんど会話なし。15:15 私が山頂に到着。しばらくして中本もゴール。ガスと雨雲のせいで下界の展望が全く利かないのが残念だ。

電気を大切に

山頂は予想以上の賑わいだった。敷地が狭くなったところでは周囲の人と肩が触れ合うくらいだから,もうラッシュと言ってもいい。(見えない)景色を眺めたり,(大声で)携帯電話を始める人々を他所に,我々は人波をかき分けてコーラを探す。

あった,日本最高峰のコーラ。

しかも,自動販売機まで!

これは世界で最も高地にある自動販売機に違いない。違いないが,ちょっと地球に厳しい感じがして,そこはかとない罪悪感のようなものが・・・(ちなみに,300mlボトル缶の販売価格は400円であった)。

などと考えていたら,宿泊予定の山小屋から,にょきっとアンテナが伸びているのが見えた。DoCoMoのアンテナのようだ。その先を目で追うと,なんと,食堂の隅に基地局設備が置かれている。

富士山頂でも(シーズン中は)携帯が使えるというのは知っていたが,基地局が山小屋の,しかも食堂に置かれているとは思わなかった。普段間近で見られるものではないので,ちょっと観察してみたり。

ちょうどいいので,コーラ白書webサイトの更新を試みてみることにする。携帯電話のアンテナマークは3本立っているし(当然),i-modeも繋がるんだけど,データ通信はなぜかうまくいかない。繋がっているような,繋がっていないような,非常に不安定な状況。

いろいろ悩みながら,デジタルカメラの写真を吸い上げていると,カメラの電池が切れた。予備の電池に換えたら,それも切れていた。

[レポート2へ続く]


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