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![]() II イージーオープンの時代プルタブの登場第一世代の缶の開封には、共通する問題があった。フラットトップ、コーントップとも開封には特別な道具が必要という点である。より扱いやすい缶を目指して開発が進んだ結果、60年代初頭には単品で開封できる容器が相次いで登場した。 この中でも有力視されたのが、ジューストップ(Juice Top), ジップトップ(Zip Top)、プルリング(Pull Ring)といったフラットトップに開封用の金属部品を取り付けるスタイルだった。 ここでイージーオープン開封機構の各部呼称について述べておく。(缶詰技術研究会「容器と包装」より引用) ジューストップは缶の上蓋の穴にスコア(切り込み)のついた金属のパーツをはめ込んだもの。リングを引っ張るとスコアが切れて開口し、一部が上蓋に残るのが特徴だ。現在のオロナミンCのビンの空け口に近いイメージである。Double Colaなどが採用した他、コカ・コーラもプロトタイプを作成したと言われる。
Dayton Reliable Tool & Mfg社のErmal Fraze によって開発されたこの技術は、特許を購入したAlcos社によって精力的に広められていった。1962年にバージニアのビールメーカーが採用して大ヒットを記録し、他のビールメーカーもこぞって採用を決めた。清涼飲料市場にも速やかに受け入れられ、63年にはコカ・コーラの12オンススチール缶に採用されている。65年には缶飲料全体の1/4を占めるほどに広まった。 ただジップトップにはジューストップに比べ開封に力が必要で、うまく開けないとタブや蓋の一部が折れてしまう問題があった。
この指で簡単に開封できるスタイルは爆発的に広がり、60年代後半には殆どの缶がこのスタイルが採用された。66年発売のコカ・コーラのスモールダイヤモンド缶や、ようやく缶市場に復帰したペプシの12オンス缶などもこのタイプが採用されている。
日本にも65年には導入されて以来急速に広まり、80年代後半にステイオンタブ(後述)の出現まで殆どすべてのコーラ缶で使用された。現在でも中国のコカ・コーラなどで採用されている。 開けても取れないタブプルリングはその利便性から世界中に広まり、清涼飲料缶のスタンダードの地位は揺るぎないものに思えた。しかし80年代に入るとこれまで予想もしなかった点を問題視する声が上がる。タブの廃棄問題である 当時は缶に限らず、ほとんどすべての容器は開封時に一部を本体から取り外す方式であった(ハッチンソンボトルとフラットトップはその少ない例外だ)。ガラス瓶の王冠なんて1世紀近く放置だったのだが、当時の環境保護の動きは悲しいかな最もメジャーな缶を見逃してはくれなかった。このため缶メーカーは開封後もタブが上蓋に残る、いわゆる”Stay-on”タイプの缶の開発を急いだ。
プルタブに比べクリアランスがタイトなこの方式はより厳しい品質管理が必要で、缶メーカーの負担は増えたという。しかし90年代に入るとその利便性と環境の観点からほとんどの缶がタブトップへ移行。 現在では口幅の広いタイプや、タブにペプシのグローブをプレス加工したものなど様々なバージョンがある。 ちなみにゴミを出さないタイプの缶は、すでに70年代に開発されている。プッシュボタン(プッシュエンド)と呼ばれるこの缶は、円形の大小2つのスコアを指で押して開けるタイプのものだった。タブを後加工でつける必要がなくゴミも出ない画期的な方法で、新し物好きのRoyal Crownがいち早く採用した。 しかし開口片が内容物に触れる点が不衛生であるとみなされたそうで、すぐに姿を消した。ちなみにこの点は、ステイオンタブでも全く改善されていない。消費者の要求の変化は時として残酷である。
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