特集「'05 コーラレビュー」

中本晋輔

年明け早々後ろ向きな企画で恐縮だが、2005年のコーラ市場動向について振り返ってみたい。

進む寡占化

世界のコーラ市場にとって2005年は、コカ・コーラとペプシの寡占化が一層進んだ年であった。2000年頃からののニューエイジコーラの流行が一段落した影響から特に北米市場で新鋭企業からの意欲的なコーラの発売が大幅に減少。BevNetに登録された05年の新メーカーのコーラはついにゼロになった。

Royal CrownやVirgin、Urban Juiceといった中堅どころも元気がなく、目立った新製品の投入は見られなかった。唯一気を吐いたのがWet Planet で、旗艦ブランドJoltのパッケージをリニューアル、独自のバッテリーボトルで存在感を示した。

その一方でコカ・コーラとペプシとの対決は激しさを増している。主戦場は成熟した北米コーラ市場から伸びの大きいアジア・アフリカ圏に移りつつある。2005年はオリンピックやW杯などの世界的なイベントが少なかったことから大きなキャンペーンはなく、替わって新製品の投入が目立った。

ライム&コーヒー

Coca-Cola with Lemon彼らの開発戦略の中心となったのがフレーバーコーラである。これまでもCherry Cokeのようなフレーバーコーラは存在したが、ここ数年で開発が加速し両陣営から乱発気味にリリースされている。

05年最大のトレンドはライムであった。

コカ・コーラはこれまでフレーバーコーラにあまり積極的でなかっただけに、今年の変貌振りが目立った。3月にライム味のコカ・コーラ Coca-Cola with Limeを発売、これまでダイエット市場に限定していた柑橘系のフレーバーをレギュラーコーラに拡大した。またこれまでの世界的なブランドの統一を止め、ローカルなフレーバーコーラも積極的にリリース。日本のCoca-Cola Lemon, ニュージーランドのCoca-Cola Raspberry flavorなどがその例だ。

また03年にリリースされたVanilla Cokeも梃入れがなされ、コカ・コーラ初のミックスフレーバーコーラBlack Cherry Vanilla Cokeを発売。既存のVanilla Cokeは年内に製造中止となったが、今後の復活に含みを残すなど長期戦略が定まっていない感は否めない。

ペプシもこの動きに追従し6月にPEPSI Lime とDiet PEPSI Limeをリリース。コカ・コーラとの対決は米国の飲料コーナーを緑色に染めた。また同社の試験場とも噂されるマレーシアでは、PEPSI FirePEPSI Ice,後述するPEPSI Tarikなどユニークなコーラが続々と登場した。

もう一つのトレンドはコーヒーフレーバーだ。これまでコーラ+コーヒーのコンセプトは新しいものではないが、Joltなど一部のメーカーが散発的に販売するのみであった(→コーラ四季報「謎のコーヒーコーラ」)。05年後半にはコカ・コーラ、ペプシの両社がこのコンセプトの新製品を発表した。

PEPSI は10月にコーヒー味のPEPSI「PEPSI Tarik」をマレーシアで発売(→Topics!)。またヨーロッパではPEPSI MAXにCappuccinoフレーバーを追加した。これに対してコカ・コーラは12月8日の株主説明会で「Coca-Cola Blak」のリリースを発表。来年1月のフランスを皮切りに広げていく予定だという。

サントリーがピンチ!?

PEPSI X大手2社による寡占は日本市場でも同じで、コカ・コーラとペプシが9割以上のシェアを占める。清涼飲料の多様化や少子化により国内のコーラ市場は縮小傾向にあるといわれ、限られたパイの奪い合いという厳しい状況である。

サントリーとの提携以来年々シェアを伸ばしてきたペプシだが、05年はやや翳りが見え始めた。スターウォーズとタイアップした得意のオンパックキャンペーンを大々的に展開したが社会現象ともなった過去のものに比べると話題性に欠けた。また夏にはガラナフレーバーのコーラ「PEPSI X」を期間限定発売したが04年のPEPSI Blueほどのインパクトはなく、一部では12月頃まで売れ残ってしまった。

また9月には公正取引委員会がガンダムのブラインド方式のオンパックを「懸賞品」と判断、景品表示法(過大景品)に違反する恐れがあるとサントリーを注意した[リンク]。コレクター心を掴むマーケティングでシェアを伸ばしてきただけに、この注意が今後の同社の方針に影響を与えることは避けられないだろう。(本件以後のオンパックキャンペーンには全て透明の袋が使用されるようになった)。05年は提携後初めてシェアを落とす可能性もある。

対する日本コカ・コーラは「つながる瞬間に」をテーマに日常の中でのコカ・コーラをアピール。また夏には従来の白熊をアレンジした新キャラ「KUMA(クーマ)」を採用し、人気のiPod Shuffleのオリジナルスタンドなどを賞品としたキャンペーンを展開した。大きなスポンサーイベントがない分地味な印象を受けるが、それでもシェアが保てるのは同社のブランド力の高さ所以であろう。

また先にも触れたが、日本コカ・コーラが独自のフレーバーコーラ「Coca-Cola Lemon」を発売。PEPSI Twistが好調な日本市場とはいえ、アメリカで発売予定のないコーラをローカルで発売するのは異例だ。これまでグローバル戦略を推し進めてきたコカ・コーラも、地域主導型へ軌道修正を迫られているのかもしれない。

新規参入相次ぐ

明るいニュースは、国内で05年春に大手以外から新しいコーラがリリースされたことだ(→コーラ四季報「05春コーラレビュー」)。特に日清ヨークの無炭酸コーラ「乳酸菌コーラ」はその新しすぎるコンセプトから一時Blogの話題を独占した。春一番のようにすぐに姿を消してしまったのは残念だが、妥当な引き際だったという説もある。

また輸入コーラでは、ドン・キホーテが中国産コーラ「非常可楽(Future Cola)」の販売を開始。 製造元の娃哈哈集団公司は宗氏の手腕で急成長した注目の中国飲料メーカーで、同国ではコカ・コーラ、ペプシに次ぐシェアを持つ。まじめに作り込まれたコーラが売りで、以前流行したアメリカ産の廉価コーラよりレベルは高い。中国製コーラの輸入という新しいパターンだけに、今後の動向に注目したい。

今年のコーラ市場予想

06年の前半は欧州・北米市場を中心にコカ・コーラとペプシの「コーヒーコーラ対決」がメインとなるだろう。両陣営とも日本での発売は予定していないが、成り行き如何によっては国内でも同様の戦いが見られるかもしれない。また他の飲料メーカーから類似コーラが発売される可能性もある。

日本市場で注目すべきは、サントリー(ペプシ)の動きだろう。これまでの成長を支えてきたマーケティング手法が限界にきており、さらなるシェア拡大のためには新しい戦略が必要とされる。マーケティングに定評のある同社だけに、巻き返しに期待したい。

この夏の限定ペプシは、PEPSI ICEと大胆予想。これまでの限定モノ(PEPSI Blue, PEPSI X)はペプシ・マレーシアの後追いで、順番としてはICE(とFIRE)となる。個人的にはコーヒーペプシ「PEPSI Tarik」を期待したいのだが、発売1年以内の評価の固まっていないコーラを持ってこれるか疑問が残る。


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