コーラ白書
TOP 四季報 データベース 缶コレ 資料館 殿堂 検索 ヘルプ
第二特集「北京オリンピック・キャンペーンレビュー」

中本 晋輔

204の国と地域が17日間の熱戦を繰り広げた北京オリンピック。期間中、公式スポンサーであるCoca−Cola社はこの世界最大のスポーツの祭典に合わせて世界中でイベントやキャンペーンを展開。国内でも日本コカ・コーラが「Live Olympic,On the Coke side of Life, 世界とつながろう。喜びをみんなと」を掲げ大規模なキャンペーンをスタートさせた。

しかしそれとは別の北京オリンピックのキャンペーンをあちこちで見かけた向きも多いだろう。このオリンピックでは特定のコンビニやリテーラーとタイアップしたものも数多く展開された。今回は国内の北京オリンピックキャンペーンを振り返ってみる。

フライング気味

先陣を切ったのはJR東日本系のコンビニエンスストア「NEW DAYS」のものだろう。期間が5月1日から30日で抽選が6月1日という、まだ最終選考が終わっていない時期に終了してしまうかなり気の早いキャンペーンであった。。

内容的にはオリジナルのスポーツタオルやビーチサンダルが計600名に当たるというこじんまりしたキャンペーンで、外れた中から500名にオリジナル扇子が当たるというダブルチャンス付き。この残念賞が竹製のしっかりした国産扇子であったため、本景品よりも人気があったとか。私もこの夏愛用させて頂いた。

Tシャツ1日9,000枚

6月に入ると日本コカ・コーラが2つのキャンペーンをスタートした。

一つは350ml缶や500ml PETを対象にした小型パッケージキャンペーン。商品のシールに印刷された番号をネットで応募するインスタントウィン方式で、対象商品1本から応募できる敷居の低さが特徴。賞品はオリンピック競技をデザインしたオリジナルTシャツで、サッカー・陸上・野球・柔道・シンクロ・バレー・体操・卓球・新体操・ボクシングの全10種類。特筆すべきはその規模で、10秒に1枚当たりがでるという大判振る舞いなのだ。これは8月24日までの期間中に60万枚以上のTシャツが提供される計算になる。

ちなみにこのTシャツはペットボトルのリサイクル繊維を50%使用した「エコTシャツ」。一着にペットボトル2〜3本分の樹脂が使用されるという。アンチモンとか大丈夫なんだろうか?

もう一つは1.5リットル以上のペットボトルを対象とした大型パッケージもの。こちらはキャップについた王冠シールをはがきに貼って応募する昔ながらの方式だった。

期間によって内容が異なり、6月16から開催前日までは金メダルの数を予想するという内容。見事当てれば5大陸のデザイナーがデザインしたコンツァーグラス5個セットが必ずもらえるが、応募にはシール10枚(=コカ・コーラ15リットル)が必要となり敷居はかなり高め。

また開会式の8月8日からは第二弾がスタート。こちらはシール5枚で「チャイニーズパーティセット」なるものが2,000名に当たるという内容となった。要するに陳健一氏が監修した中華料理9品目を食べながらオリンピックをテレビ観戦しよう、という趣旨らしい。

通常国内のコカ・コーラのパッケージは1.5リットルが最大だが、オリンピック期間中は2リットル入りのご祝儀サイズも発売された。

久々の豪華ラインナップ?

これと同時期にコンビニでのオンパックキャンペーンがスタート。コカ・コーラシリーズとアクエリアスの500ml PETを対象としたもので、リテーラーが主導のため各コンビニによってグッズが異なるのが特徴。日本コカ・コーラ社のホームページでは告知されておらず、コンビニに行かないと気付かない地味なキャンペーンとなった。

セブンイレブンではマスコットキャラ「Fuwa(福娃)」の携帯ストラップがオンパックされた。キャラ5種類+スポーツ7種類の全12種類のラインナップ。ファミリーマートでは世界のコカ・コーラロゴマークの入ったミニボトルのキーチェーンで、全10種類。またローソンはFuwaオリジナルピンバッチで、こちらも全12種類が用意された。特にローソンのものは立体のミニチュアボトルが組み込まれた見栄えのするアイテムだ。

セブンイレブン
ファミリーマート
ローソン

 

 3社あわせて34種類という豪華ラインナップだが透明袋のオンパックにかつての勢いはなく、大きな話題になることはなかった。

3本+αのハイレベルな戦い

また一部コンビニではコカ・コーラ3本+オマケの特別セットも発売された。専用パッケージを使うこの種のセットは法律による景品価格の制約をうけず、また物理的にも景品を大型化できる注目の販促法。今回はサークルKサンクスとセブンイレブンが北京オリンピック記念セットを発売した。

サークルKサンクスは500mlペットボトル3本+オリジナルのミニファンのセットを発売。コカ・コーラのボトルを模した高さ10cmほどのボディのモータとファンがついていて、ネックのボタンを押すとファンが回転する仕組みだ。グラフィックの異なる4バージョンがあり、箱の穴から確認することができた。

肝心のミニファンだが、これがなかなかよくできているのだ。

例えば底面は底蓋と電極蓋が別々になっているため電池の交換が可能。電池交換不可のおまけが多い中でのうれしい配慮だ。

またファン中央部にダイソンばりの銀色の着色樹脂を使っていたり(ウェルドもバッチリ)、羽に安全面を考慮して柔らかいウレタン材を採用するなど、オマケとは思えない丁寧な設計がされている。

惜しむらくはソフト羽のせいでほとんど風がこないことだが、それは些細な問題であろう。

ミニファン

このミニファンと専用のカートンケースがついてお値段375円。単純に3で割ると1本当たり125円と普通に500mlを3本買うより安い。お得感の強いパッケージである。

またセブンイレブンでは250ml記念ボトル3本+マグカップのセットを330円で発売した。これまで特製グラスがついてくるセット企画はあったが、今回は容量190mlの景徳鎮製の磁器製マグカップ。ベルグラスをかたどった白い艶やかな磁器は、ファイアーキング社のソーダマグを連想させる。絵柄は龍と輪の2種類で、それぞれ北京オリンピックのゴロマークが鮮やかに入る。

マグカップ

そのオマケの域を超えた実用性と完成度で人気が高く、ネットオークションでも頻繁に取引きがなされていた。

この把手つきマグは見た目以上に幅があり、化粧箱の大きさも40cm×45cm×55cmとかなり大きい。このためパッケージも大きくなり、250mlボトルなのに前述の500mlボトルセットよりさらに大型化してしまっている。その嵩高さから飲料棚ではなくお弁当コーナーやレジの前のカウンターに陳列する店舗もあった。

ちなみに近所のイトーヨーカドーでは未組立のケースとボトル、マグカップの箱がそのまま山積みにされた「セルフタイプ」の売り場が登場。あまりの投げやりな売り方が不評だったのか数日後にはポニョ率いる三ツ矢サイダーに売り場を占拠されていた。個人的には販促品の配布方法がリアルに分かって面白かったんだけど。

フィールダー VS 純金ボトル

リテーラー限定で最も派手だったのはイオンやセブン&アイが展開した一連のオープン+クローズドキャンペーンである。なんといってもオープン懸賞の賞品が派手なのだ。

イオンとダイエーでは7月1日から8月24日まで「北京オリンピック、ビッグドリームプレゼント」を開催。○○・○○○にあてはまるカタカナを答えるとなんとトヨタのCAROLLA FIELDERが5名に当たるという太っ腹な企画である。セブン&アイホールディングスの「コカ・コーラフェア第2弾(註)」ではやはり○○・○○○を埋めるだけで100万円相当の純金ボトルが5名にあたるという話題性の高い内容だった。

この2つに共通しているのが、ハガキではなくコカ・コーラのウェブサイト「Coca-Cola Park」を通して応募する点だ。このサイトは日本コカ・コーラが近年力を入れているいわば囲い込み用の情報サイトで、利用には個人情報を登録して会員になる必要がある。これらの派手な看板は会員の獲得に大いに貢献したことだろう。

クローズドキャンペーンには2社ともレシートを集めてはがきで応募するスタイルを採用。金、銀、銅とコースによって景品や必要なレシートの金額が異なり、ビッグドリームプレゼントの金メダルコース「Panasonic ブルーレイディスクレコーダー DMR-BR500」に応募するには4,500円(税込)以上のレシートが必要。開催期間中3日に2日350ml缶を買い続けてなんとか届く額である。かなりハードルが高いが、これは一般懸賞の景品最高額(=取引価格の20倍まで)を意識した設定と思われる。

キャンペーンの概要を下表にまとめる。

  北京オリンピックドリームプレゼント コカ・コーラフェア第2弾
開催店 イオン+ダイエー セブン&アイホールディングス
オープン カローラ フィールダー  5名 コカ・コーラ純金ボトル 5名
クローズ    
ブルーレイディスクレコーダー(レシート4,500円一口) 30名 家庭用ゲーム機(Wii)+ソフト+オリジナルディスクケース(レシート2,000円一口) 500名
17V型液晶テレビ(同2,500円) 50名 防水ポータブルワンセグテレビ(同1,500円) 1,000名
VISAギフトカード10,000円(同500円) 200名 福娃中国食器セット(同500円) 1,500名
Wチャンス オリジナルタオル 8,608名 アルミボトル 12,000名

興味深いのはイオングループンのドリームプレゼントがすべてオリンピックのスポンサーの製品で固めているのに対し、セブン&アイはそうでない点だ。このためコカ・コーラフェアの金賞は誰が見てもWiiなのに商品名を伏せて「家庭用ゲーム」と記載されている。

ちなみにこの2つのキャンペーンは日本コカ・コーラが主催しており、同社のホームページでも告知されていた。

祭りが終わって

これだけの布陣でスポーツの祭典を盛り上げたコカ・コーラのキャンペーンも、閉会式の翌25日にはほぼすべて店頭から姿を消した。さながら狐につままれた気分だが、このメリハリと統制は流石である。

本大会のキャンペーンには過去に例をみないほど多様なスタイルが採用された。メインのキャンペーンはシール5点集めて応募するだけだった前回のアテネからウェブサイトを利用したインスタントウィン形式へと進化を遂げた。またリテーラー限定ものが広がり、オマケ戦略もオンパックからカートンへのシフトが起こりつつある。

4年後のロンドンではどんなキャンペーン形式が登場するのか、今からちょっと楽しみである。