コーラ白書
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中本 晋輔

春といえばコーラ新製品の季節!今年も主要メーカーから新作・リニューアルのリリースが相次いだ。今回の特集では2009年春コーラを取り上げてみる。

☆ ☆ ☆

新政権の元で「Change!」を推し進めるアメリカでは、米PEPSI Coが主要ブランドのグラフィックの刷新に踏み切った。

PEPSI/diet PEPSIで象徴的存在であるグローブ(赤・白・青の丸いアイコン)とフォントが変更された。同社は定期的にペプシのグラフィックを変更しているが、グローブそのものに手をつけるのは18年ぶりとなる(註1)。

Big Smile(左)とLittle Simle(右)。白の帯の幅に注目

赤・白・青のシンボルカラーを継承しつつ、これまでの点対称から右上がりのアシンメトリックな形状となった。形状がレギュラーとダイエット系(diet PEPSI, MAX)で異なり、白い帯の形を笑顔にたとえて前者が”Big Smile”、後者が”Little Smile”と呼ばれる。またPEPSIのフォント細身のものに変更され、ミニマルなグラフィックとなった。

この新しいデザインはグローバルに展開される予定で、既にメキシコなどでも採用されている。現在のところ国内のペプシでは変更の予定はないとのこと。

 

国内ではCoca-Colaがダイエットコーラのポートフォリオを一新した。

日本コカコーラは従来の「女性向けヘルシー路線」の製品として1月よりCoca-Cola Plusを発売した。これはカロリーゼロに加えビタミンCを加えたコーラで、コンセプト的には昨年のNo-calorie Coca-ColaとNo calorie Coca-Cola plusを合わせたような製品だ。新製品の発売を期に両旧製品はすでに生産を終了しており、ブランドをPlusに集約した格好だ。

また3月にはもう一つのダイエットブランド”Coca-Cola Zero”をリニューアル。これまで人工甘味料を使ったコーラの常識であった安息香酸ナトリウムを使用せず、保存料フリーを達成した。昨年来高まりつつある食品安全性への関心を反映した新商品だ。

これまで国内固有だったグラフィックは、グローバルデザインである黒地に赤のグラフィックに統一された。イメージキャラクターには安室奈美恵さんを採用しブランドイメージを一新。「ワイルドながらヘルシー」という独自のコンセプトを掲げたキャンペーンを展開している。

昨年度は様子見だったコカ・コーラがついにZEROのブランド確立に本腰を入れた、そんな印象を与える春のキャンペーンである。

 

一方のサントリーには新製品発売やリニューアルの予定はなく、好調なPEPSI NEXに今年もリソースを集中する方針のようだ。NEX関連のCMやキャンペーンを連打する一方で、ロングセラーのDiet PEPSIの500ml以下パッケージを廃止するなど選択と集中を加速させる。

同社の資料によると08年度の全コーラ市場に占めるダイエットコーラの比率は40%に達するそうで、そのカテゴリー首位(註2)のNEXをさらに伸ばしてく戦略なのだろう。

 

国内でポッカコーポレーションが販売するVirgin Colaも3月に内容を一新。これは同製品のグローバルでのリニューアルに対応したもので、内容とグラフィックが新しくなった。

Virgin colaの旧缶(左)と09年新缶(右)

ロゴを目一杯に配置した型破りな旧デザインから一転、赤と黒をベースにしたこじんまりまとまった。裏面の自社グループ広告スペースもなくなり、なんだか普通のコーラになってしまった感じだ。国内でのVirginグループの状況を考えると仕方ないところだが、「気球王のコーラ」の面影はなくなってしまった。

既存路線の継続が多いなかで、完全な新製品の発売に踏み切ったのがダイドーだ。新製品”ZeroSlim Cola”で急成長中のダイエットコーラ市場に打って出た。

パッケージにはシルバーと黒のスタイリッシュなデザインを採用。レモン果汁の使用や甘味料の組み合わせ(アセスルファムK+スクラロース)はPEPSI NEXと同じで、ダイエットコーラ市場首位のサントリーをかなり意識した配合である。価格は500mlPETボトルで130円と若干低価格。

ダイドーが扱うコーラは本品と復刻堂版ペプシコーラのみ。ペプシは「期間限定」のステッカー付きで100円にて販売されており、同社の自販機では価格が混沌とした状態になっている。

ZeroSlim Cola(左)とSIMPLE & QUALITY(右)

ダイエット市場拡大の流れにあえて逆行したメーカーもある。アサヒ飲料が4月20日に発売した「Simple & Quality Cola」は素材にこだわった原点回帰的なレギュラーコーラ。アサヒがレギュラーコーラを発売するのはSchweppes Cola以来実に21年ぶりとなる。

商品コンセプトは「王道コーラの味わい」。甘味料に砂糖のみを使用したコーラは現在国内で本品だけだ。コーンシロップに慣れた舌にはかなり重厚で奥深く感じられる。

販売はサークルKサンクス限定。価格は500mlPETで115円と、一般の350mlよりも低く設定されている点もうれしいところ。

☆ ☆ ☆

100年に一度といわれる不況の中、近年まれに見る活況の今年の春コーラ戦線。国内ではダイドーの新規参入など急成長するダイエットコーラ市場での動きが目立った。今後もこの勢いが続くことを期待したい。

*2009年春発売の記念缶

コカ・コーラ Enjoy HAPPY 缶 350ml缶(左)と280ml缶(右)

 

コカ・コーラZERO Jリーグキャンペーン缶 350ml缶(左)と280m缶(右)

註1:点対象で文字が中央に入らないグローブは1991年から使用されている。ペプシのロゴの変遷は公式サイトのペプシコーラの歴史参照のこと。

註2:「SUNTORY 2009年春 新商品&キャンペーンのご案内」より。この資料では「好感度」と「飲用意向」でNEXと他社のノーカロリーコーラ・ゼロカロリーコーラが比較されている。具体的なシェアについては触れられていない。