コーラ白書
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中本 晋輔

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台湾の飲料事情

二日目は事実上の最終日。朝早く目を覚まし、ビュッフェスタイルのレストランで朝食を済ませるとすぐに街へと繰り出した。空は快晴で、前日より暖かいのが嬉しい。

台湾の町並みに違和感を覚えないのは、日本で馴染みのある店舗がそこらじゅうにあるからかもしれない。マクドやケンタッキーなどのグローバルフランチャイズはもちろんのこと、モスやファミマ、ダイソー、無印良品など日系企業の出店も多い。

またコンビニなどで普通に日本のお菓子や飲料が販売されているのも特徴。特に無糖の緑茶飲料は国内メーカーが圧倒的に強く、コンビニのラインナップは日本のそれとほとんど変わらない。ちなみに「お〜いお茶」ペットボトルは39元(約120円)だった。

コンビニに比べて少ないのが圧倒的に自動販売機。日本の多さは異常だが、台湾では日本以外の国に比べても目にする機会は少なかったように思う。各飲料メーカーが自販機を設置するのではなく、汎用(?)の販売機にいろんなメーカーの飲料を入れるスタイルのようで、コカ・コーラとペプシが並んで売られているなんてことも。

また同じ自販機の中で商品によって微妙に価格を変えてある点も興味深い。コカ・コーラ製品の350ml缶が20元であるのに対して黒松(註1)は18元、ペプシは17元が相場のようで、同じ自販機内で競争原理が働いているのが面白い。当の本人たちは居心地悪いだろうけど。

 

対決! 白菜vs豚の角煮

この日まず目指したのは台北市の郊外にある故宮博物館。蒋介石が台湾に持ち込んだと言われる中国の至宝が数多く展示される世界有数の博物館である。

ガイドブックにはMRT士林駅からタクシーと書かれているが、駅の表示板には故宮行きのバス停の地図が張られている。地図で示された場所を見ると、まさにそれらしきバスが到着するところだった。渡りに船とばかりに、急いでバス向かって走る。

入り口で温厚そうな老齢の運転手さんに「Is this bus going to the Palace Museum?」なんて確認してみたら、「故宮博物館行きよ」と日本語で速攻レスポンス。その上「一人2元、降りる時の支払いで良いよ」と親切に料金の払い方までレクチャーしてくれた。

2年前にリニューアルした故宮博物館は宮殿のような外観と近代的な内装を持つ美しい建築物だった。中は3層に分かれていて、時代やテーマによって分かりやすく区分されている。

遥か古代の王朝の青銅器や、息を呑むほど精巧な作りの象牙細工など見るものには事欠かないが、中でも私がどうしても見たいものが2つあった。それは玉の銘品「翠玉白菜」と「肉形石」である。

 【画像リンク】 翠玉白菜  肉形石  (国立故宮博物院WEBサイトへ)

ご存知の向きも多いと思うが、この二つの作品は清王朝時代に作られた石細工。翡翠の緑と白のグラデーションを生かして見事な「白菜」を彫りぬいた前者と、天然の石の形状を生かしてどうやっても「豚角煮」にしか見えない後者。この稀代の食品系芸術をどうしても此の目で見ておきたかったのだ。

件の2作品は4階の一番奥の部屋にあった。まず目に付いたのはガラスの箱に入れられてライトアップされた「翠玉白菜」。大きさは市販の白菜の1/3程度だが、精巧に彫られた菜っ葉のディティールと見事なまでの白菜的な翡翠の発色に驚かされる。よく見ると菜っ葉の上にキリギリスとバッタが乗っているが、これは子孫繁栄の象徴とのことらしい。

もう一人の主役「肉形石」は壁側の展示棚にやや控えめに置かれていた。白菜に比べると注目度は低いようだが、リアリティではむしろこちらのほうが上だ。艶のある豚の皮、その下の柔らかな脂肪、そしてよく味の染みた赤身肉の質感。沖縄料理屋で「はぃラフテーお待ちどう」と持ってこられたら絶対橋をつけてしまうほどの圧倒的なリアリティだ。

故宮博物館としては翠玉白菜を全面的に売り出し中のようで、土産物コーナーには大量の白菜グッズが溢れていた。リアルなミニチュアや絵葉書はもちろん、キリギリスとバッタをデフォルメした文房具やシャーペンなど修学旅行生向けのお土産物レベルのものまで販売されていた。デフォルメしようのない肉形石は絵ハガキなどに留まった。

そういえば故宮博物館のウェブでも白菜は「玉器」なのに肉形石は「珍玩」にカテゴライズされていた。コーラ白書は肉形石を応援します。

 

スーパーは塔の下に

right故宮博物館を堪能した後、バスで士林駅まで戻ってMTRで南へ。台北車站駅で板南線に乗り換えて市政府駅で下車する。駅から南へ少し歩くと、甲冑を着たような巨大な塔が姿を現す。世界で2番目の高さを誇るビル、台北101である。この高層ビルにやってきた目的は観光だけではない。

海外で(コーラを含め)その土地の食品事情を最も的確に知ることができるのは地元のスーパーである。しかし多くのガイドブックでは観光名所や史跡に多くの紙面を割くがスーパーの情報は極めて少ない。時間があれば足で探すのだが、今回のような弾丸ツアーではその時間すらない。そこで目をつけたのが台湾101であった。

以前クアラルンプールで得た教訓は「スーパーは塔の根元にある」というものだった。都心のランドマークとなるようなビルの周辺は複合商業施設やブランドショップのモールだけ。スーパーを見つけるにはXY方向ではなく、Z軸の探索が必要なのだ。

そしてここ台湾でもその教訓は生きていた。

大きな“MARKET PLACE”の看板を掲げたその店はいかにも高級スーパーといった雰囲気。入り口には「富士りんご」がプレミアのついた法外な価格で山積みにされている。価格は全体的に高めながら、店内はお客さんで一杯だ。

買い物カゴを取っていそいそと飲料コーナーに向かう。と、なんだか見覚えのある缶が並んでいるではないか。前年の夏ごろに日本で発売されたコカ・コーラの500ml缶である。ははぁ、日本の余剰在庫を海外で売りさばいているのかと思って値段を見ると、なんと70元(210円)!高っ! 隣の250ml缶も65元という大インフレだ。

よく見るとその棚には金色でBeverages From Japanの文字が燦然と輝いている。日本製というだけで、現地のコカコーラの3倍のお金を払う人がいるんだろうか?

高い日本製品を買って帰っても仕方がないので、隣のローカル飲料コーナーに移動。可口可楽(コカ・コーラ)の製品が目立つ場所を占拠しており、次に台湾飲料メーカーの黒松が続く。百時可楽(ペプシ)はかなり端っこのほうに追いやられており、かなり苦戦を強いられているようだ。

コカ・コーラ社製のコーラはレギュラー・ダイエット(健怡)・ZEROに加え、バニラ(香草口味)、チェリー(櫻桃)とバリエーションが豊富。価格は350ml缶が18元、500MLペットボトルが25元、6缶パックが91元と日本の半額程度だ。ロゴは英語と台湾語の2種類が裏表に使用されている。グラフィックはグローバルデザイン準拠だが、バニラの6缶パックのデザインが秀逸だった。

数は少ないものの日本以外からの輸入品もある。米BLUE SKY社のNEW CENTURY COLAは「有機新世紀可楽」とエヴァンゲリオンみたいな名称で販売中。通常35元が19元で叩き売られていたところを見ると、あまり人気がないのかも。

むしろ間違いなくDr Pepperの味がするであろう隣の姉妹品「DR. BECKER」のほうが気になった。

コーラ以外で特筆すべきはマレーシア製のソーダGlinter。透明樹脂製の缶に金属の蓋をつけた意欲的なパッケージは、20年前のコカ・コーラのテストプロダクトを彷彿とさせる。

透明性を生かしソーダに着色しないなど尖ったコンセプトの商品だが、パッケージの表記はなぜか日本語。間隔スカスカのフォントは御愛嬌だ。

無事現地のコーラと職場用の格安土産を購入できた私はいたくご満悦であった。

 

台北の日は暮れて

その後は101の展望台へ。多すぎる荷物(大半はコーラだ)のせいで警備員とひと悶着おこしつつも、東芝製の世界最速エレベーターに乗って37秒で展望台までやってきた。

地上500mの展望台からは、まさに沈もうとする夕日が見えた。次第に紺の色を濃くする空を眺め、あまり冷えていない売店の70元のコーラを飲みながら、次はこの居心地のよい隣国にもう少し長く滞在したいなと思った。

 

註1:台湾の大手飲料メーカー。看板商品の黒松沙士は国内でも入手可能。

→ おまけ。気になる台湾のオンパックキャンペーン