コーラ白書
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中本 晋輔

フェリーのハッチが大きな音を立ててゆっくりと降ろされる。生活用品のパレットを運ぶフォークリフトの脇を抜けてオレンジ瓦のフェリーターミナルに向かった。

黒糖コーラなどのイエソーダを開発したのは、実は伊江村役場の商工観光課。そこが運営する伊江島物産センターがこのターミナルの中にあるという。少し中に入ってみると、早速イエソーダのポスターがお出迎え。ここに間違いない。

「アツクナレ アツクナレ イエソーダノキセツダ」

イエソーダのパッケージデやポスターは洗練された都会的なイメージで、地方の特産品的な「田舎臭さ」がない。アメリカのJones Sodaを連想させるシャープなグラフィックはなかなかの完成度。それを企画した人物ともうすぐ会えるとあっては、テンションは嫌が応にも上がる。

お土産物店でもイエソーダは最前列にあった。入り口の冷蔵庫には冷えたボトルが並び、店内のテーブルにもイエソーダが所狭しと並んでいる。オリジナルメンバーのブラックケインコーラ・ホワイトソーダに加え、ピンクドラゴンとグリーンマースの4色がずらりと並ぶ姿は壮観だ。冷蔵庫がペプシなのはご愛嬌。

手前からBLACKCANE COLA, WHITE SODA, MARSE GREEN, DRAGON PINK。

単体販売(210円)だけでなく2本セット(箱入り500円)や木箱入り12本セット(3360円)などパッケージも様々。面白いところでは南大東島のラム酒「CORCOR」とのコラボセットもあった。

オリジナル木箱入りセット
パッケージがかわいいCORCORセット

とりあえずブラックケインコーラを1本購入。お店の方にアポの件を伝えるとすぐに連絡を取っていただけた。イエコーラご担当の松本さんは次のフェリーで帰ってくるとのことで、それまでの間奥様が島を案内してくださるとこちらに向かっているという。ああぁ、早く着いちゃってすみません・・・。

お言葉に甘えて、ブラックケインコーラゆかりの場所に案内していただくことにした。

 


 

イエソーダ・ブラックケインコーラを「地コーラ」と呼べるのには理由がある。それはコーラの命である甘味料と水がこの伊江島産であるからだ。すなわち黒糖と、島の湧き水「湧出(わじい)」である。

湧出はフェリーターミナルのちょうど反対側、絶壁の連なる北海岸の波打ち際に湧く真水のこと。古くから島の貴重な飲料水として大事にされてきたという。

湧出展望台からの景色は息を呑むほど美しかった。緑の絶壁と紺碧の海、そして抜けるような青空。まさに島の雄大な自然がそこに広がっていた。

湧出の展望台からの景色。

その風景に見とれていると、松本さんが崖の下のほうを指差す。

「あそこが湧出の取水地なんですよー」

見ると崖のはるか下、海岸線にそって伸びた道の先にセメントの建物が見える。あれが取水用のポンプ室だという。

車が1台やっと通れるほど道を海岸に向けてゆっくりと下りてポンプ室の前までやってくる。現在の取水はこの小屋だが、水が湧き出ているのは波打ち際らしい。干潮の時は湧き水を飲むこともできるのだが、残念ながらこの時は潮が満ち始めていた。それでも果敢に湧き出しポイントに向かう松本さんの奥さん。革靴を履いてきた自分を呪った。

湧出(わじぃ)の湧き出すところ。現在はこの上のポンプ室からくみ上げている。

今でこそ物産センターが取水業務を行っているが、イエソーダの立ち上げのころは家族でここまで湧出を汲みにきていたという。風が強い冬の日は波に持っていかれそうだった奥さんは笑う。

ちなみに湧出は硬度230以上のかなりの硬水。そのままでは炭酸飲料に向かないため製造の際は湧出を通常の水とブレンドして使用しているということだった。

ブラックケインコーラの小さなビンには、大自然の雫が入っているのだ

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