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中本 晋輔 天然の砂糖を使ったコーラは世界に数多くあれど、黒糖となれば話は別。ブラックケインコーラは黒糖を使った世界的にも珍しいコーラである。 黒糖は当然ながら伊江島産。それも製糖工場で大量生産したものではなく、特定の農家で手作りされたものを使用しているという。 案内して頂いたのは島の南側にある1件の農家。裏にはパパイヤやマンゴーが実り、ゴムの木やゴールデンシャワーが森のように大きく育っている。その一角にある建物でコーラに使われる黒糖が作られている。
ここのご主人の宮城さんに、黒糖について教えて頂いた。黒糖作りの手順、歴史、品種と特徴、植え付け方。時期によって甘い部分が違うことや、甜菜や甜薯からは黒糖は作れないことなど。宮城さんのお話には長年携わってきた人らしい、サトウキビに対する愛情と深い洞察が感じられた。 この名人が作る黒糖がブラックケインコーラには使われているのだ。原材料の生産者の顔が見えるコーラって凄い。
宮城さんのところで色々とお話を伺っているところに、ついに伊江島物産センターの松本さんが登場。このイエソーダの仕掛け人その人ある。聞けば今日はお休みで、用事で本島に出かけられていたとか。ああぁ、重ね重ねすみません。
松本さんにフェリーターミナルの事務所でお話を聞く機会を頂けた。 まずはじめの疑問。何故伊江島でコーラなのか? 松本さんによると、イエソーダのヒントとなったのは同じ沖縄県の離島、久米島のソーダ。ここの海洋深層水を使った炭酸飲料「No9サイダー」を参考に、伊江島でも特産品を使った清涼飲料をと考えたという。 そしてもうひとつはKOZA COLAというローカルコーラの存在。ロックの町、沖縄県コザ市で作られた幻のコーラだ。味より名前が先行したせいか6000本ほどで生産終了となったそうだが、この飲料の印象は強かった。 No.9ソーダという先行者の存在で、後追い商品は作りたくない。そんな中で特産の黒糖を使うというアイデアと幻のコーラの記憶が出会い、イエソーダトリプルエックス・ブラックケインコーラは誕生した。 はじめはブラックケインコーラとホワイトソーダの2種類だったが、後からピンクドラゴンとグリーンマースが加わり現在のラインナップになった。発売から2年で30万本を販売するヒット商品となり、中でも一番人気はコーラだという。 トリプルエックス(XXX)の意味については、「雰囲気を出したかったので」とのこと。特に大人向けという意味ではないようだ。 もうひとつ気になったのが、イエソーダシリーズのデザインコンセプトだ。あの遊び心のあるシンプルなデザインはどうやって生まれたのだろう? 「元々デザインコンセプトを考えた方がJones Sodaが好きでだったんです。あのパッケージのイラストもその方が描いたもので、プロのデザイナーさんのものではないんですが、ヘタウマでいいかなと」 Jonesは近年急成長した北米の清涼飲料ブランド。パッケージに公募した写真を使ったり、先の大統領選挙中にObama Yes We Can Cola などのキャッチーなコーラを発売するなど話題を呼んだ。松本さんの資料ファイルにもJonesに関するものが何枚か入っている。直感的に似てるなとは思っていたが、似ていて然るべきなのだ。 現在はこのオリジナルコンセプトを元に、松本さんが新製品のパッケージや販促ポップなどのデザインをされているという。 ちなみに現在イエソーダの製造は佐賀県の飲料メーカーで製造されている。伊江島から原材料を送り、委託製造され帰ってきた商品に伊江島でラベルを貼って仕上げるという手間の掛けよう。210円が結構ギリギリの価格設定というのも納得だ。 そして気になる新製品の情報も。 伊江島物産センターでは現在、新たなイエソーダを開発中とのこと。今度の製品はアルコールを使った大人向けになるそうで、黒糖コーラの新バージョンも入っているのが嬉しいところ。伊江島での一貫生産も視野に入れて準備中との事なので、今後もイエソーダから目が離せない。
沖縄の北に浮かぶ美しい島、伊江島。ここで生まれたコーラは、豊かな自然と情熱ある人たちによって育まれたものだった。 最後に今回の取材を快く引き受けてくださった松本様&奥様、宮城様、そして伊江島物産センターの方に厚く御礼申し上げます。
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