
12年目のEst-Cola
今回のバンコクの訪問で、いくつか気になるコーラがあった。
一つ目はEst-Cola (エス・コーラ)、ご存じタイのローカルコーラの雄である。
タイで当時ペプシのボトラーだったSermSuk社が、2012年のペプシとの契約終了を機に立ち上げた自社コーラだ。的を絞った電撃的なマーケティングで瞬く間にペプシのシェアを奪い、一時期はタイからペプシが消えたと言われた。ペプシは早々に別のパートナーと組んでタイ市場に復帰したが、タイのメーカーがグローバルの巨人に一泡吹かせたこの出来事はいまでもタイの人々の語り草だ。バンコクの街角に残るEst Colaが看板は当時の勢い物語る。
誕生から12年、Est-Colaは現在でも多くのスーパーやコンビニで取り扱われ、タイのコーラ市場にしっかりと定着している。しかしながら彼らを取り巻く状況はなかなか厳しそうだ。多くの店でEstは棚の面積や場所でペプシやコカ・コーラに遅れを取っている。Est-Colaは当初低価格でシェアを奪う戦略を取ったが、10年以上経った今でも大手との価格差は残ったままだ。
エス・コーラもスパイス感の強化を打ち出したり、Sugar Freeやフレーバーソーダをラインナップするなど様々な手を打っているが、センセーショナルな発売当時に比べると存在感の低下は否めない。現地の知人の調べでは現在のタイのコーラシェアはコカ・コーラが50%超でトップ、ペプシが二番手で、エス・コーラは離された3番手だという。
Coca-Cola Thaiの矜持
もう一つ印象に残ったのは 新発売のCoca-Cola Zero Limeである。
タイでは健康志向の高まりから、ゼロカロリーのフレーバーソーダの市場が大きく伸びているらしい。シュエップスや先述のEst、それに新しくビールメーカーのシンハーがこの市場に参入し、カラフルなソーダたちが飲料棚を彩る。ここにCoca-Colaが投入したのがCoca-Cola Zero Limeだ。
ライムのイラストやシズル感などを一切排して、ライムグリーンのべた塗に黒で大きくロゴを入れたデザインは、シンプルながらコーラとは思えないインパクト。赤は小さなコカ・コーラのアイコン3か所に使用されているのみ。従来のコカ・コーラのイメージを逆手に取った力のあるパッケージだ。
そして何より面白いのは、缶正面にはCoca-ColaとCoca-Cola Flavorsのロゴ以外すべてタイ語で書かれている点だ。タイ語が読めないと一見しただけで何フレーバーすら分からない。(裏面には英語で小さくLime Flavoredと書かれている)
今でこそ英語のコカ・コーラロゴを使用しているが、タイは最後までグローバル化の流れに抗い自国語のロゴを使い続けた国の一つだ。新製品ではグローバルのガイドラインに従いつつ、その他の箇所すべてにタイ語をつかったZero Limeをデザインしたのは、本社へのちょっとした意趣返しなのではないかと想像したりする。
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