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コーラ津々浦々 / 怒りのひらパー編
中本 晋輔

言っとくが、今回のコーラ津々浦々は面白くないぞ。その上筆者が大変ムカついているので不適切な表現などが含まれるかもしれない。だから今回のは心に余裕のある方に読んでいただきたい。今回は大阪北東部、枚方市のアミューズメントパーク「ひらかたパーク」(通称ひらパー)に行ってきた。

そもそも何故ひらパーに男二人で行くことになったかというと、友人のまろ氏(仮名)から「ひらパーにコーラのオブジェがあるらしい」との情報が寄せられたからである。コーラのオブジェといわれれば行かざるをえない。というわけで夏も終わった9月6日、我々は朝の10時から京阪で悲劇の場、ひらパーへと向かった。

10時半、枚方公園駅到着。空には鉛色の雲が重く垂れ込めている。駅前に人影はまばらで、遊園地へ向かうような人は見当たらない。我々はコンビニで食料を調達したのち目的地を目指す。途中同じ方向へ向かうグループを何組か見たが、地元の家族連れなのかみなタオルと水着を小脇に抱えてさくさくと歩いていた。本当に遊園地なのか、我々は激しく場違いではないのか、不安は募る一方である。活気があるとは言いがたい通りをしばらく歩くと、ひらパーの巨大なゲートが見えてきた。私の人生の中で遊園地に来てこんなにワクワクしないのは初めての経験であった。

入場料とプール代(オブジェはプールにあるとの情報を得ていたため)で計2100円を払った我々は、空元気を全開にして入場ゲートをくぐった。そこで我々を待っていたのは・・・金色の目の描かれた樽であった。「きんめだる」。そのオブジェの横の看板には確かにそう書かれていた。絶句した我々の目に次に飛び込んできたのは墨で話が書いてある団扇であった。タイトルは「うちわばなし」だった。

この激しく寒いオブジェはひらぱーのキャンペーン「そんなバカな!シリーズ」の一部で、この悪夢のような期間中はこんなものが遊園地中に点在しているのである。この前で記念写真を撮って応募すると抽選で「そんなバカなTシャツ」なるものが当たるらしい。この流れでは件のコーラのオブジェも「そんなバカな」シリーズに違いない。かなりブルー入りながらも我々は、プール「The Boon」へと向かった。





























はたして、そのオブジェはブールの入り口の軒の下で風に吹かれていた。丸竿にぶら下がった11個の缶にはマジックで大きく「コーラ」と書かれていた。恐る恐るタイトルを見る。 「こーらぼし」 。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・怒りを通り越した悲しみを噛み締めていると、となりで何かの切れる音がした。中橋だった。


絵:「心理描写」中橋画伯作

私は中橋と知り合ってずいぶんになるが、荒れた彼を見たのは初めてだった。いつもはおとなしい彼が植木を揺する、柵を蹴るなど反社会的な行動を取り始めた。ほっとくにほっとけず必死に彼をなだめながら、出口のアーケードへと向かう。彼はゲーセンでしばらくパンチングマシンを探していたが、無いと分かるとSEGA DAYTONA USA(車ゲー)の座席に座り、いきなり逆走していた。その姿を横目で見ながら「これから原稿の催促をするときはもう少し優しく言うようにしよう」と私は心に誓った。


[四季報 1998年10月号] [コーラ白書] [HELP] - [English Top]
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