コーラ白書
TOP四季報データベース缶コレ資料館殿堂検索ヘルプ
English

Cola Collectibles 「夢の共演 70's Ronrico Rum 広告」

中本 晋輔

コカ・コーラとペプシは本当に仲が悪い。同じ業界の2大勢力なのだから仲が良いわけはないが、彼らの戦いはほかのライバル企業同士のものに比べてかなり残酷で大人気なかったりすることが多いのだ。だから両社が同じイベントのスポンサーになることはありえないし、ましてや同じ広告に登場することなど考えられない。もし仮にあったとしても、それはどちらかの比較広告である。

しかしコカ・コーラとペプシは70年代に同じ広告の中に登場したことがあるのだ。それも自分たちではなく、他の製品の宣伝として。この今では考えられない「夢の共演」を実現したのは、プエルトリコ産のラム酒であった。

1970年代前半、RONRICO RUMは清涼飲料を使ったカクテルをアピールするキャンペーンを開始する。ご存知の向きも多いかと思うが、コーラは特にラム酒ととても相性がよい。どれくらい相性が良いかは、バーで「キューバリバー」というカクテルを注文すればすぐにわかるだろう。アルコール系コーラの本場オーストラリアではこの組み合わせは非常に人気が高く、数多くの製品が酒屋をにぎわせている。

そして当時雑誌に掲載された広告がこれだ。RONRICO RAMのボトルの横にコーク・ペプシ・RCコーラのボトルが並ぶという、凄い構成になっている。今で言えば、ゲームソフトの広告PS2・ゲームキューブ・Xboxが並んでいるようなものである。デザイン的にも良く練られていて、ロンリコのハイライトやキャッチ下のスペースなど非常にインパクトのある広告になっている。

またキャッチコピーも秀逸。「Can Simple American Cola find find happiness at the side of Puerto Rico's most aristocratic Rum?」 婉曲な言い方だが、つまり混ぜろということだろう。コカ・コーラ社などは当時 Cokeに物を混ぜることを徹底的に嫌っていたので、このような表現になっているのかもしれない。

実は同じころ、RONRICO RUMのライバルであるBACARDIも清涼飲料との相性のよさを謳ったキャンペーンを展開している。こちらはBACARDIの箱に当時のソーダ類が詰め込まれたイラストで、中にはコカ・コーラとペプシもちゃんと入っている(RCコーラはないが)。キャッチコピーも「A Bacardi Party to go.」とRONRICOに比べてひねりがない。とにかく当時ラムのカクテルブームがあったことは確かなようだ。

この宣伝か掲載された2年後PEPSIは「ペプシチャレンジ」でコカ・コーラに宣戦布告し、本格的なコーラ戦争が幕を開ける。この広告は戦後のコカ・コーラ黄金時代の雰囲気を伝えてくれる貴重な資料と言えるだろう。