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Cola Collectibles / RC 木製ボトルキャリアー
中本 晋輔

RCキャリア コーラにとって19世紀は「ファウンテンの時代」であった。人々はコーラを飲むためにファウンテンのある店に出向き、その場で調合されたものを飲んでいた。しかし1899年にFranclin ThomasがCoca-Colaとボトラー契約を結んだことにより、続く20世紀は「瓶と缶の時代」となる。瓶詰めされたコーラは当時整備が進んだ鉄道によって強力な機動力を得、アメリカ大陸を何百キロも旅することができるようになったのである。

このとき輸送用に作られたのが「ボトルキャリアー」と呼ばれる木製の箱である。このコーラを運ぶためだけに作られた箱は半世紀以上ボトル流通を支えつづけた。結局プラスティックケースの台頭とともに1970年代には姿を消すのだが、それが今アンティークとして再び注目されはじめているのである。今回はそんなボトルキャリアーの中でも比較的レアなRoyal Crown社のものを紹介したい。

本品は木箱を金属で補強したもので、非常に実用的な作りなっている。側面には菱形のRoyal Crownのロゴが赤で印刷されている。また一般的なキャリアーと異なり中に木製の仕切りがついていて、そのため一回り大きくなっているのが特徴。RC Colaは当時16オンス瓶が主流で(コカ・コーラは8オンス)、大型の瓶を安全に運ぶための配慮だと考えられる。

側面 また持ち手のある側面の表示も興味深い。上段の"CHICAGO ILL"はこの箱がイリノイ州シカゴの貨物会社のものであったことを物語る。シカゴはアメリカ随一の鉄道基地で、当時様々な物資がここを経由して全米へと運ばれていたのだ。 また右の"NEHI"は1928-65年までのRoyal Crown社の旧社名。これは彼らの使用した大型ボトルが「ひざの高さ(Knee-High)」であることに由来するという。その下には同社の電話番号もあるのだが、なんと5桁!時代を感じる一行である。

現在目にするボトルキャリアーのほとんどは長年の激務に耐えてきたもので、使い込まれた独特の味わいがある。本品は中でも保存状態の良い部類で、Royal Crownのネームバリューも加わって5000円くらいの価値があるという。ちなみに比較的数のあるPEPSIのものは1500-2000円くらいで入手できるぞ。

最近アンティークとして注目され輸入される数も増えたが、アメリカの在庫はかなり少なくなっているらしい(業者によると西海岸には既になく、シカゴまで買い付けに行くそうだ)。興味のある方は輸入雑貨・アンティーク店でチェックすべし!


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