四季報
特集
津々浦々
Collectibles
珍品
一冊
小説
お便り
バックナンバー
連載記事
小説募集中
コーラ小説 / コーラ1杯の謎
IPLD極東支部 草野京嗣

【私とコーラの思い出】

 思い出というものの程では無いのですが、私には子供の頃から長年抱き
続けて来たある疑問があります。題して、「コーラ1杯の謎」‥‥。

                                〜・〜・〜・〜

 私が幼稚園の頃、TVでコカ・コーラのホームサイズ(500ml)のCMが流れて
おりまして、そのキャッチコピーが『3杯注いでもまだ余る!!』というもの
でした。
 算数もできない幼稚園児の頭は、500mlの「3杯+余り」の分割比を「100
ml×3杯+200ml」と単純に考えていたのです。

 私の家族は両親と弟と私の4人でしたので、ホームサイズのコーラを4人
で分ける時は、余りを貰った方がおトク、と思い込み、ある日母に「僕は
余ったのでいい」と言ったのです。すると‥‥‥『3杯注いでもまだ余る』
筈のコーラは、グラス3杯で注ぎきって無くなってしまったのでした。

 ショックでした。自分の計算では1杯の2倍の量がグラスに注がれる筈だっ
たのに、それがゼロなのですから。勿論、グラスの大きさや氷の量等の要
素が頭の中にある筈がありません。だって幼稚園児ですから‥‥‥。

                                〜・〜・〜・〜

 小学生になって割り算ができるようになり、私は再び「コーラ1杯の謎」
に挑みました。
 幼稚園児の私が割り出した「余り」が1杯より多いのであれば、キャッチ
コピーは「4杯注いでも‥‥」になる筈です。そこで、小学生の私は、500ml
を「150ml×3杯+50ml」と分割したのです。『コーラ1杯は150ml』。氷を
浮かべれば小降りのグラスで丁度1杯分になる分量です。

 これなら完璧だろう、やるじゃん俺!!‥‥なんて思っていた時に、突如
新たな壁が出現しました。1リットルサイズの登場です。
 500mlの2倍なのですから「150ml×6杯+100ml」なのかと思いきや、キャ
ッチコピーは『ピッタリ6杯!!』‥‥‥。

 私は言葉を失いました。『3杯注いでもまだ余る』が、2倍すると『ピッ
タリ6杯』なのですから、よっぽど頭の悪い人がキャッチコピーを考えたに
違いないと思っていたのですが、その後『ピッタリ6杯』は定着してしまい、
完璧な筈だった『コーラ1杯は150ml』説は『1杯166.66666‥‥ml』という
現実の前に脆くも崩れ去ってしまったのです。「1000÷6」の商と同様、何
とも割り切れない思いでした。

                                〜・〜・〜・〜

 中学生になると、PEPSIコーラの1.5リットルサイズが発売されました。
こちらも『PEPSI 1.5は9杯分。どっちが得かな?』というCMを流しておりま
して、やはり『1杯166.666‥‥ml(以下167ml)』はPEPSIでも認知された分
量なのだと思い知りました。

 しかし、ここで新たな疑問が沸きました。150mlや 167mlが「コーラ1杯」
なのだとすると、150mlや167mlのサイズが発売されていないのは何故なん
だろう、という疑問です。
 それまでの缶のサイズの主流は250ml缶で、レギュラー瓶は200ml程度(コ
カコーラは180ml)。いずれもグラスに氷を入れて注ぐと、たいてい余るの
です。なぜ態々余るように作るのか、不思議でしようがありませんでした。

 それでもグラスに注がなければ結局全部飲んでしまうのですから、250ml
や200mlが1人分=1杯の基準なのだとしたら、1リットルサイズは6杯分では
無く4杯ないし5杯分でなくてはなりません。逆に、1リットルサイズが6杯
分なら、1杯は1人分にも満たない、という事になります。

 なぜ1人分にも満たない量が『1杯』なのでしょう? 腹八分目って事でしょ
うか? 「コーラ1杯の謎」は益々深まるばかりでした。

                                〜・〜・〜・〜

 その後、様々なサイズの瓶や缶が発売され、今では350ml缶(アメリカン
サイズ)が主流になりましたが、やはり350mlは『1杯』と呼ぶには多過ぎる
ような気がするのです。でも、250mlも『1杯』よりも少しだけ多い気がす
るし‥‥。

 私の「コーラ1杯の謎」は、長年の間 答えを見付け出せずに現在まで至っ
たのですが、今年の5月に『TRY! PEPSI テイスティング キャンペーン』で
配られた160mlのPEPSI缶を見付け、解決の糸口が掴めて来たような気がし
ました。
 多過ぎず少な過ぎず、グラスに氷を入れて注ぐと丁度良い分量で、しか
も缶1本でキッチリと収まっている。小数点以下も無く気持ちイイ!!これぞ
『コーラ1杯』の理想的な分量ではないか!?

 でも、160ml缶は、そのキャンペーンで配られたっきりで、その後商品化
されたという話は聞きません。せっかく光明が見えたと思ったのですが‥
‥‥。いや、もしかしたら、私自身がこの疑問を解決するのを無意識のう
ちに拒んでいて、一生コーラと身近に接しようと望んでいるのかも知れま
せん。

 いずれにせよ、私の『コーラ1杯の謎』が解決されるのは、まだまだずっ
と先の話になりそうです。

《おしまい》

この作品は「私とコーラの思い出」としてお送りいただいたメールを、 作者の草野さんの了解を得て転載したものです。 草野さん、ありがとうございました。

関連サイト

Copyright(C)2000 KUSANO Kyoji

[四季報 2000年7月号] [コーラ白書] [HELP] - [English Top]
Copyright (C) 1997-2000 Shinsuke Nakamoto, Ichiro Nakahashi.