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![]() 中橋 一朗
今回紹介する「コーラ戦争に勝った!」は、そういう意味では貴重な「ペプシから見たコーラ史」である。著者はなんと、当時ペプシコーラ社の社長であったロジャー・エンリコその人。 本書は、1985年4月23日、コカ・コーラ社がニュー・コークを発表するくだりから始まる。コカ・コーラは何故、90年に及ぶ歴史と伝統のコカ・コーラを捨て、「ニュー・コーク」なるものを発表するに至ったのか。それはペプシがコークに勝ったからだ、とロジャーは断言する。 そして何故ペプシはコークに勝ったのか、という長い物語が始まる。人工甘味料アスパムテールについての確執。有能な人材を巡る攻防。そして何より、より効果的な宣伝活動とは何かについて、彼は熱く語りつづける。本書は80年代におけるマーケティング理論の集大成といえよう。 ペプシが天文学的な費用を投入し、マイケル・ジャクソンとの契約に成功したあたりで、物語はクライマックスを迎える。世界的な大スターを従えた全米キャンペーンの興奮が伝わってくる。 そしてついにペプシのシェアはコークを追い抜き、コークは苦渋の決断を迫られる...。 ★ ★ ★ 本書は新潮文庫から昭和62年に発行され、残念ながらすでに絶版となっているようだ。通常ならあらすじはこの辺で打ち切るのだが、続きが読めない読者のために続けよう。 綿密なマーケティング調査の結果、結局コカ・コーラ社は「コークの味は時代に合わない」と判断し、よりペプシに近い(苦味の少ない)味付けに変更することになる。これが冒頭でも触れた「カンザス計画」である。 ところがいざ「ニュー・コーク」を発売してみると、非難轟々、市場には全く受け入れられず、わずか90日で撤回。コカ・コーラ・「クラッシック」が再発売された。 興味深いのは、この90日の間に、ペプシが「コカ・コーラ味のコーラ」サバンナ・コーラの発売を検討していたことである。ペプシ側はすでに、コカ・コーラの秘密の処方を解読していたという。だがそれが商品化されるチャンスは、もう2度と訪れることはないだろう。
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[四季報 2000年10月号] [コーラ白書] - [English Top] |