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中本 晋輔 小学校の頃、遠足の前日最大のイベントといえば「おやつ選び」だった。特に低学年の小学生にとっては300円という金額は破格であり、長い時間駄菓子屋の棚を眺めてお菓子の選択に頭を悩ませた記憶がある。そんな当時から必ず棚の中に1つ2つあったのが「コーラ味」のお菓子がであった。今回はそんな駄菓子の定番「コーラ味」モノについて考えてみたい。 「コーラ味」とは?コーラ味と称するキャンディを食べれば、それは(多くの場合)確かにコーラ味である。しかしながらそれがコーラを代表する「コカ・コーラ」と同じ味かというと、やはり何か違う気がする。では「コーラ味」とは何なのだろうか。 駄菓子の「コーラ味」の謎を解く鍵は、やはり駄菓子にあった。(株)コリスから発売されていた「へんなガム」というガムは3種類の味の違うガムを同じに食べると全然違う味になるというなかなか画期的なものだったのだが、そのなかに「オレンジ・レモン・ソーダをいっしょに食べるとコーラ味」というものがあったのだ。私も一度挑戦したのだが、たしかにあのコーラ味になる。 「For God, Contry and Coca-Cola」(Mark Pendergtast著)という本にはCoca-Cola社が公表したコカ・コーラのレシピが掲載されている。これによるとコカ・コーラには炭酸や砂糖、酸味料といったよくある材料の他に独特の風味の元となる"7X"というレシピが存在する。この7Xは様々な植物のオイルが含まれているのだが、その主成分はレモンオイル(0.88g/gallon)とオレンジオイル(0.47g/gallon)なのである。つまりソーダ+レモン+オレンジの組み合わせはコカ・コーラの調合の一部に他ならないのである。 もちろんコカ・コーラには他にも複雑な香料が含まれているため完全に同じ味になるわけではない。だが駄菓子のあのコーラ味がどこかコーラを連想させるのは、偶然ながらもコカ・コーラのレシピの一部を再現したものだからなのかもしれない(少なくともメロンとメロンソーダよりは近いと思うのだが)。 世界の「コーラ味」先に述べた「飲み物のコーラとは違うけども一般にコーラ味として認識されている味」は、決して日本独自のものではない。認知度で言えばアメリカや欧州のほうがずっと高いのだ。例えば米国では1910年代にCoca-Colaが"Cola Cola PEPSIN GUM"を発売しているし、スペインの誇るキャンディー"Chupa Chups"では「コーラ味」が全42種類(註1)の筆頭に記載されている。 興味深いのは生産国に関わらずコーラ味と銘打たれたお菓子は、多少の差はあれあの「コーラ味」がすることである。どこの国でも「コーラ味」というのは「Coca-Cola」への同じベクトルを持っており、その差はスカラー量の違いだけなのかもしれない(註2)。 難しい(馬鹿らしい?)議論はこの辺にして実践編に入ろう。世の中に星の数ほどあるコーラ菓子だが、その中でも個性的で比較的入手の簡単なものを中心にここで紹介したい。一応の目安として、それぞれのお菓子の「コーラ度」(どれほどコーラっぽいか)と「お菓子度」(お菓子としてのおいしさ)を、独断と偏見で5点満点評価してみた。 ノスタルジー系1. Mini Cola (オリオン)
私が物心ついた頃には既に売られていたコーラ駄菓子のスタンダード。発売元は関西の大御所・オリオン株式会社である。赤い缶型の容器と微妙なコンツールカーブがコカ・コーラを連想させる。やや酸味の強いコーラ味が特徴で、大阪で育った私にとってはかなり懐かしい味である。 2. コーラ餅(富士製菓有限会社)
こちらも長い歴史を持つコーラ駄菓子の定番のひとつ。硬めにねられた1cm 四方のコーラ餅が18個入っていて、付属の爪楊枝で刺して食べるようになっている。独特の歯ごたえが好きで、遠足には必ず持っていった記憶がある。 3.おこずかいコーラキャンディー(日之末製菓)
ノスタルジックなデザインが印象的な日之末製菓のコーラキャンディー。棒つきスタイルのキャンディーで、棒の色によって当たり外れがある。駄菓子では「当たりが出ればもう一本」が標準的だが、こちらはなんとキャッシュバック!赤棒が出れば投資額の3倍に当たる60円が返ってくるのだ。味のほうは今ひとつコーラらしくなかったが。 4.コーラボール (江口製菓)
昔駄菓子屋でよく見たゼリーのお菓子。その末裔ともいえるのがこの「コーラゼリー」である。何故か野球のボールを模した半球型のコーラゼリーで、上のビニールを剥がして吸うように食べる。お中元でもらうゼリーとは異質の、舌に残るザラザラ感がいかにも安っぽくて素敵だ。 新食感系5. バチバチCANDY コーラ味 (株式会社セブン)
炭酸からの連想か、二酸化炭素を使ったはじけるキャンディにはコーラ味が多い。本品もその一つだ。パッケージのデザインがいかにも駄菓子らしく好感が持てる。それほどコーラ味はしなかったが、食感は十分に楽しめた。 6. POP ROCKS DIPS (ZETA ESPACIAL)
スペイン産のコーラ味ぱちぱちキャンディ。このお菓子には親指(!)を象った棒つきキャンディと粉末状のはじけるキャンディが入っていて、粉をキャンディにまぶして食べるようになっている。そのうえオマケでモンスターのタトゥーまで入っているのだ(当然粉まみれである)。日本のものにはないバッド・テイスト全開の駄菓子である。 7. カリポリCANDY (カバヤ食品)
同じCO2でも重曹を使うと炭酸飲料に似たしゅわしゅわ感がでる。カバヤの「カリポリソーダ」は重曹を上手く使ったスティック状キャンディーだ。コーラとソーダと2種類が入っていて、噛むと炭酸の刺激が口に広がる。コーラと炭酸のバランスもよく、完成度は高い。各所にレモン12個分のビタミンC入りであることを謳っているが、ほとんどの子供は気にも止めていない事だろう。 8. スーパーコーラ (Kanebo)
こちらはカネボウから発売されたコーラ味のラムネで、重曹ではなく膨張剤(?)を使用した興味深い一品。キャッチに「かむとアワアワ!」とあるように、噛むと本当に口の中が泡だらけになってします。注意書きの「泡の出る商品なので一度にたくさん食べると、おなかがいっぱいになる場合があります」が光る。 国産ニューエイジ系9. シゲキックス・シュワリンコーラ (UHA味覚党)
強烈な刺激でファンも多いUHA味覚党のハードグミ「シゲキックス」シリーズ。そのコーラ味が昨年発売された。これまでのグミの常識を覆すハードな噛みごたえと酸味の強い強烈なコーラ味ではまると止められなくなる。既に駄菓子の範疇ではないがそのあまりの個性ゆえ紹介してみた。 10.SHOCK WAVE・スパイシーコーラ (Glico)
江崎グリコが"Kiss Mint"シリーズで培った技術を投入して送り出す次世代ガム「SHOCK WAVE」、そのコーラ味が本品だ。ガムの中に刺激成分の入ったカプセルが配合されていて、これが破れるたびに口の中がピリピリする。お菓子としては刺激はかなり強く、ブラックブラックを髣髴とさせる。ただコーラの味がほとんどしなかったのが残念である。 舶来モノ11. PUSH POP コーラ味 (丸紅)
今年日本でブレイクした中国のキャンディー。円筒状のケースにキャンディーが入っていて、下から指で押し出す仕組みになっている。「コーラ味」とはあるもののコーラの味はほとんどしなかった。この他にもPUSH POPには3種類のキャンディー(グレープ・オレンジ・コーラ)が一つになった"TRIPLE POWER"と言うのがあるが、こちらは重い上にギミックが複雑でひたすら食べにくかった。 12. CHARMS COLA (チャームズ・セールス)
アメリカではかなりメジャーなブランド"CHARMS"のコーラ味。昔ながらのセロファンに包まれた丸いキャンディーで、「コーラ味」の王道を行くとても懐かしい味がする。絶対アメリカから輸入していると思っていたのだが、米CHARMS社のレシピを元に国内生産しているらしい。ちょっとびっくり。 13. Happy-Cola (HARIBO)
コーラの瓶の形(明らかにホブルスカート瓶だが)をしたドイツ製のグミキャンディ。グミの上と下で色が違うあたり手が込んでいる。日本のぐみと違ってかなり粘るのでたくさん食べるとあごが疲れてくる。「しゅわしゅわと爽やかなコーラの風味」とあるが、食べても特にしゅわしゅわしなかった。個人的にはお気に入りのお菓子。 14.PEZ COLA (Ed. Haas)
様々なホルダーで世界的に人気のある"PEZ"のコーラ味。試験的に今年作られたものらしい(未確認情報)。CGで描かれたイメージキャラがやたらと怖い。 開封してまず意表を突かれるのが、その色。なんと白い。中にビミョーなオレンジ色の粒々が見えなければ、コーラ味とは信じられないところ。非常に素朴な味。シナモンの香りがするのが欧米的だった。 Chupa Chups15. Chupa Chups "Cola" (Chupa Chups)
スペインで生まれ、いまや世界中で愛されているキャンディ"Chupa Chups"。日本ではそのコーラ味が発売されている。やや酸味の勝っているものの、うまくコーラ味にまとまっている。さすがロングセラーである。 16. Chupa Chups XL Cola (Chupa Chups)
今年から関東限定で発売されているXLサイズのチュッパチャップス。「こんなに食えん!」と思うほどのサイズだが、実はコアにはガムが入っている。飴の層は結構薄く、無理に噛むと割れて粉々に飛び散ったりするので食べるときは忍耐を持って臨むようにしたいものだ。(写真左側は500円硬貨!) 17. Chupa Chups Cola MIX (Chupa Chups)
今回のとりを務めるのはChupa Chupsのマルチプルパック、その名も「Cola MIX」だ。これは定番の「COLA」に加え、そ日本では発売されていない「LEMON COLA」「CHERRY COLA」の計3種類がそれぞれ4本ずつ入ったコーラ限定チュッパチャップスセットなのである。またケースもコーラの缶を象った金属製のもの。中でもCHERRY COLAはかなりの傑作で、コーラキャンディの中では抜群の完成度であった。たまに輸入食料品店なんかに入荷しているので、気になる人はこまめにチェックすべし! ★ ★ ★ ここに挙げたのは、現在市販されたいるコーラ菓子のうちのほんの一部である。それほどこの手のお菓子の数は多いのである。「コーラ」というつかみ所のない、しかし人気のある飲み物の味を模そうとするお菓子メーカーの試行錯誤が、「コーラ味のお菓子」に素晴らしい多様性を与えたと言っていいだろう。 貴方も今度、コーラ味のお菓子を買ってみては如何だろうか。忘れかけていた懐かしい味に、きっと出会えるはずだから。 註1:世界中で発売されている種類の数。日本では8種類のみ。ちなみに全種類のリストはwww.chupachaps.comで見れます 註2:スカラー量はベクトルの絶対値の2乗 |
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[四季報 2000年10月号] [コーラ白書] [HELP] - [English Top] |