おまけ 「突撃!ザ・リッツ・カールトン大阪」

中本晋輔

以前から気になるホテルがあった。

ザ・リッツ・カールトン大阪。超高級として名高いリッツ・カールトン・ホテルカンパニーが日本で初めて開業したホテルである。

ビジネス誌でNo.1に選ばれたの初め、「社会のトップ5%がターゲット」「クレド」「お客様に「ノー」と言わない」など、このホテルにまつわる話は数知れない。

これまでこのホテルに泊まる機会がなかったのは、その価格と立地である。最高級クラスだけあって、シングルの正規料金は一泊46,273円。社会のトップ5%でないと厳しい価格である。

それ以上に問題なのがロケーションで、ホテルのある西梅田から我が家まで約45分(乗り換え一回)。中津で朝5時とかのアポであれば泊まれるかもしれないが、残念ながらそんな酔狂な客はいない。

しかし今回ホテルのコーラについて調べていくにつれて、この日本最高評価のホテルは避けて通れなくなってきてしまった。それは標高とコーラ価格の依存性調査における富士山頂上の自動販売機と同じ、ベンチマークとなる存在だからだ。

予約してみる

ぶっちゃけた話、リッツ・カールトンっていくらで泊まれるのよ?

とりあえず某ホテルディスカウントサイトでザ・リッツ・カールトン大阪のお値段を調べてみると・・

【スペリオーレ2005】スーペリアルームダブル 40.2平米
17,797円 (消費税・サービス料込)

 

うわ安!

 

スーぺリアルダブルの正規料金って、58,138円っすよ。それが一人あたり9,000円弱って、下手したらその辺のビジネスホテルより安いかもしんない。これにその他諸々が乗ってくるだろうが、それでも取材で決して払えない値段ではない。

ここで不安がよぎる。社会のトップ5%の人間は部屋でコーラを飲むのだろうか? 頑張って泊まったらコーラ無しというのはオチとしては美味しいが、そこまで割り切れるほど人間はできていない。

しばらく悩んだ末、電話で確認してみることにした。

「はい。リッツ・カールトン大阪です」

「すみません。宿泊を検討しているのですが、お部屋のミニバーにコーラはありますでしょうか」

ここで宿泊を匂わせるあたり、我ながら器が小さい。この明らかに怪しい電話にもフロントは動じない。

「少々お待ちくださいませ」

10秒ほど間があって、

「大変お待たせいたしました。お部屋にはダイエットコカ・コーラとコカ・コーラがございます」

との丁寧な回答。いや。全然待ってないですよ。

ここで「では予約を」と言えればカッコよいのだが、そんなことしたら宿泊代がえらいことになるので、ネットで予約する旨を伝えて電話を置いた。

フロントの対応の速さと気持ちよさに流石一流ホテルだ感心したが、それは彼らのミスティークの一端に過ぎなかった。

泊ってみる

7月11日、月曜の用意の入った会社用のカバンを手に、すこしお洒落して午後遅くに我が家を出発。難波で四つ橋線に乗り換えるものの、普段通りなれているためかリッツ・カールトンに泊まる実感が湧かない。

地下鉄西梅田駅は西と東で雰囲気が全く違う。1ビルや立飲み屋・アリバイ横丁などに続く東側と、ハービス大阪を中心にブランドショップが並ぶセレブな西側だ。大阪の典型的な庶民である小職が西梅田より西に立ち入るのは、実は今回が3度目だったりする。

落ち着かない広々とした地下通路を暫く歩きハービスの西の端で地上に出ると、そこには「The Ritz Carlton Osaka」のロゴが。おお、これがホテル王セザール・リッツの血を引くホテルか。意外に地味だ。

玄関は深いパリティになったロータリーの奥にあり、こじんまりとした落ち着いた雰囲気。やや薄暗い雰囲気の中に、ロゴの入った鮮やかな青いシェードが浮かび上がる。

デジタルカメラを取り出すと、それに気づいた2人のドアマンがすっと動いた。静止する為ではない。私が撮影することにすぐ気づいて、邪魔にならないように入り口から離れてくれたのだ。このさりげない心遣いがなんとも心憎い。

まぁ、暗いピロティで撮ったその写真は人がいるのか判別できないくらいブレていたわけだが。手ぶれ補正ついたの買おうかな・・・[写真]

18世紀の貴族の邸宅をイメージしたというロビーは、重厚な木材と品のあるインテリアをふんだんに使った落ち着いた雰囲気。小さなコンパートメントがいくつもつながったような構造で、The Empress やThe Banff Springsのようなのを想像していた私にはやや狭く感じられた。

中に入るとすぐにベルマンがやってきて、荷物を預かってくれる。そこで名前を告げ、チェックインにレセプションへ行くと

「中本様、ようこそいらっしゃいませ」

と、名前で呼ばれる。名前を呼ぶのは相手の警戒感を解く手段で、私もやばい打ち合わせなどでよく使うのだが、ホテルでいきなり呼ばれたのは初めてだ。もちろん、悪い気のするはずがない。この後も滞在中ずっと名前で呼んでもらえて、その徹底ぶりに驚かされた。

部屋まで案内してくれる間ベルマンが積極的に話をしてくるのも新鮮だ。レストランやバーの営業時間もすぐに出てくるし、途中エレベーターに他の宿泊客が乗ってくるとすぐに会話を止めるのも基本に忠実で気持ちがいい。

お部屋は11階の西側。40平方メートルの空間は、日本の客室ではありえないほど広い。必要なものが手の届く範囲にまとめられたデザインといい、アメニティの充実した大理石のバスルームといい、格の違いが伝わってくる。気になったのはテレビがCRTだったことくらい。


部屋に来る前にさりげなく「記念日ですか?」と聞かれ、まさかコーラ買いに来ましたともいえず「まぁそんなもんですね」とごまかしていたら、ウェルカムドリンクにケーキをつけれくれた。リッツ・ブルーの箱に入った、アプリコットの小さなパウンドケーキだった。

私も大阪の人間なので、モノをもらうと弱い。もうハートわしづかみ状態である。

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