「バンコクコーラレポート2006」前編へ

 

14:00 パラゴン・グルメマーケット

お昼を過ぎると日差しが随分と強くなり、夏を思わせる陽気になる。大学訪問で長袖シャツを着ていた(その必要は全くなかったが)私は直ぐに汗だくになり、たまらず空調の効いたMGKセンターへ避難した。サイアムのあたりは大規模な複合商業施設の集まる一大ショッピングゾーンで、ここからNational Stadium 駅を通して、Revolution, Siam Centor, Paragonまで外に出ずに移動できるのが有り難い。

それぞれの商業施設には特徴があり、Revolutionが一般のショッピングモール Siam Centorが若者向け、そしてParagonは百貨店と高級ブランドの複合型である。待ち行く人もどこかお洒落で、学生やカップルの比率が高い。

Paragonの1階はカフェやフードコート・テイクアウト専門店、高級リカーストア(ソファに座って試飲できる!)などたくさんの店が軒を連ねる食のフロア。その奥に鎮座するのがバンコク最大のスーパーマーケットと謳われるGourmet Marketだ。清潔で途方に暮れるほど広い店内は、カルフールのそれと良く似た近代的な作りだ。

清涼飲料コーナーに行ってみると、いきなりコカ・コーラグラスを模った巨大な棚が姿を現す。3mくらいの高さのグラスを模った金属板には蜂の巣のように穴があいていて、そこに1.5リットルのペットボトルが差し込んである。単位面積の陳列効率は明らかに低いのに、それを一番目立つところにもってこさせるコカ・コーラの影響力は流石である。

隣の棚も上から下までコカ・コーラブランド一色で、その右にシュエップスなどその他メーカーの棚、その右にペプシゾーンがある。この真中は緩衝地帯なのかしらんと思って眺めていると、何処かで見たことのある紺碧の缶を発見。Royal Crown Colaである。タイ語面が表に向いていたため、もう少しで見逃すところであった。

缶飲料は全て基本的にバラ売りで、棚の一番下に申し訳程度に6-packが並べてある。24缶セットしか販売してくれない北米のスーパーには是非見習って頂きたい。ちなみに6-packのコカ・コーラがシュリンクフィルムに対しペプシが厚紙製と、パッケージに違いが見られた。

 

 

14:30 パラゴン・カフェテリア

すこし喉が渇いたので、一休みしようとフードコートにやってきた。ジュース屋さんでレモンティーらしきもの(35バーツ)を頼んで代金を払おうとしたら、何故かお金を受け取ってくれない。もちろんタダというわけではなく、何かカードなるものが必要らしい。

店員の指差した方向に行ってみると、お姉さんが3人座ったカウンターがある。試しにさっき払おうと手に持っていた50バーツ札を出してみると、「フィフティバーツ?」と何度も聞かれる。よく分からないのでそうだと応えると50バーツをレジに入れ、なにやら入力したあと厚紙のオレンジ色のカードを渡してくれた。

どうやらここのシステムは先にこのカウンターで現金をカードに替えて、それでフィードコートの各店で支払いをするシステムらしい。デパートの屋上でよくある金券のカード版で、磁気ではなくバーコード方式を採用している。これを一元管理することでキャッシュレス化しているようだ。

なかなかスマートなシステムだが、15バーツの食べ物が見つからず使い切ることができなかった。お姉さんの言うことを良く聞いておけばよかったとやや反省する。

妙に人工的な酸っぱさの紅茶を片手に、読みかけの開高健の本を読んで過ごす。噂に名高いタイの空調は私の体を芯から冷やしてしまい、直ぐに外気が恋しくなった。

 

16:00 ラチャダムリー通り

S先生からはParagonから観光名所ジム・トンプソンの家のコースを進めれらたが、残念ながら絹には全く興味がないのでパスすることに。新たなコーラとの出会いを求め、ラチャダラム通りを戻って今度はプラトゥーナムマーケットを目指す。

伊勢丹の北にやや歩道が広くなった一角があるのだが、日が傾いてくるとここに屋台がいくつも立ち始める。あたりは俄かに活気づき、バーベキューで薄く煙った通りにテーブルがいくつも並ぶ。

炭火のコンロがあちこちに設置されて、羽を毟っただけの鶏や丸っこい二枚貝、口に草を詰められた謎の40 cmくらいの魚が炭火でガンガン焼かれている。実に開放的な、にわかレストランの開店だ。

この青空食堂で供されるコカ・コーラは、すべてガラスのリターナブルボトル。コカ・コーラ標準のホブルボトルと形状が異なり、壜を縦に引き伸ばしたような独特のスマートなデザインのものだ。2種類の大きさの規格があるようで、大きいほうは1リットルくらいありそうだった。

早朝にこのあたりを通ると、コカ・コーラの壜を目一杯積み込んだトラックが横付けされて、盛んに空瓶と交換しているところに出くわす[写真]。山積みされた回収される空瓶のケースが、タイでどれだけコーラが愛されているかを物語っている。

 

16:30 トゥクトゥク缶細工屋

屋台街を抜けるとセンセプ運河にさしかかる。土色の水を湛えたそれほど広くない運河だがチャオプラヤ川から繋がる水上バスのルートになっていて、時折乗客を満載した細長いボートがざばざばと走ってくるのが見える。

このあたりにくると露天商が随分と多くなる。歩道だけでは収まらず、橋の欄干の上に小さなテーブルを置いた「カウンター露天」みたいなのまである。その一つ、コーラやビールの缶で作ったトゥクトゥクを並べている店が私の目を引いた。空缶細工はベトナムが有名だが、タイで、それも実演販売を見るのは始めてだったからだ。

このトゥクトゥクがなかなか良く出来ている。天井にロゴ部分を使うことはもちろん、バーコードを車体の後ろに回してナンバープレートに見立ててみたりと、缶のデザインをうまく利用して作られているのだ。簡素ながらハンドルやアクセルも再現されていて、屋根にはご丁寧に「Thailand」のプレートまでついている。[写真]

机の端では浅黒い肌をした男がテーブルで黙々と缶を捌いている。聞いてみると190バーツ(約600円)というので、悪くない値段と思いながらも一応150で打診してみる。男は少し困ったように、細い腕を店見せて1つ作るのに3時間もかかるんだから勘弁してくれと笑う。彼の手さばきなら1つ時間もかからず仕上げれそうだが。

結局170バーツで折り合いがついた。男は私が指定したコカ・コーラのトゥクトゥクをそっと手にとると、2回りほど大きい円筒のプラケースにいれてくれた。スーツケースの中でも潰れないようにという配慮だろう(事実、日本で鞄をあけるとプラケースはボコボコに潰れていたがトゥクトゥクは無事だった)。何枚か写真を撮らせてもらって礼を言おうと振り返ると、男はもう次の作品にかかっていた。

そういえば、街からトゥクトゥクが減ったような気がする。

 

17:30 プラトゥーナム・マーケット

信号のない大通りを。車の隙を狙って渡る。この4日間毎日渡ったおかげで、タイミングを取るのが随分うまくなった。

この市場はバンコク最大の服飾で、Tシャツから巨大なギラギラの被り物まで身に付けるものならおおよそ何でも手に入る。船場センタービルの密度を倍ほどにした感じだ。この周辺には露天や雑貨店が隙間なく並び、ちょっとしたアーケードみたいになっている。雑然としていてエネルギーに満ちた、誤解を恐れずに言えば最もバンコクらしい一角である。

いくつかのT-シャツ屋を覗いてみたが、コーラでめぼしいものは定番のタイ語コカ・コーラTシャツくらいだった。4年前バンコクを席巻していた謎の日本語服は残念ながら既にに姿を消していた。

定番のビニール入りのコーラを飲みながら迷路のようなマーケットを散策してみる。外国の服飾事情はなかなか興味深いが、コーラに関するものは特に発見できなかった。個人的には足だけのマネキン(?)を大量に並べたサンダル屋が非常に印象的であった。

その後、パンティットプラザで時間をつぶす。ここは表向き少しおとなしくなったものの、やんちゃぶりは相変わらずだ。

プラザで小一時間ほど買い物をして外にと街には黄昏が迫り、電灯の煌く通りはさらなる喧騒に包まれていた。

まだ続いている名物の渋滞や客で賑わう屋台街を横目に、ずっしりと重くなったリュックを肩にバス乗り場へと向かった。

 

 

 

 

 


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