コーラ白書
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ミリエンダはコーラとバナナで 最終回 「めくるめくローカルコーラの世界」

なかはしいちろう

私が青年海外協力隊の一員としてフィリピンに赴任したのは2006年3月末[→連載第1回]。2年の任期もあっという間に過ぎ去り、先日無事帰国することができました。その間の活動を直接的に、あるいは間接的に支えてくださった両国の皆様にまずは御礼を申し上げます。

さて、そんなわけで、これまで5回に渡って比国のコーラ事情についてダラダラと語ってきたこの連載も、そろそろ終わりにしようと思います。今回は、いよいよ比国のローカルコーラ事情に踏み込んでみましょう。ローカルコーラは地域的に偏在していたり、ガラス瓶のみの流通で持ち帰りが難しいなど、資料の収集が大変です。ですが、だからこそ興味深いともいえます。

国民的ローカルコーラ「Pop Cola」

Pop Cola比国のローカルコーラといえば、やはりPop Colaから話を始めないわけにはいきません。

Pop ColaはCokeよりやや低い価格帯を狙った商品で、同じ8オンス(240ml)瓶でいえばCokeの10ペソ(1ペソ=約2.5円/2008年4月現在)に対して8ペソといったところが相場です。市場占有率も高く、Coke、PEPSIに続き国内第3位を占めると思われます。

甘味料として砂糖とアスパルテーム(人工甘味料)が利用されている点も特徴でしょう。人工甘味料はカロリーオフではなく、コストダウンを目的としたものと想像しています(連載第4回参照)。

Cokeのような苦味成分は少なく、香りも弱め。人工甘味料がブレンドされているため甘みの質が軽く、それでいて不自然な感じは目立ちません。さっぱりとして飲みやすいコーラです。

流通は8オンスのガラス瓶、1.5リットルのPETボトルが中心です。1リットル瓶もあったかもしれません。手持ちのデータによると355mlのアルミ缶も存在したようですが、私の滞在中には見かけませんでした。

ほんとはグローバル「RC」

Royal CrownRC(Royal Crown Cola)は1905年アメリカ生まれ。世界第3位のシェアを誇る堂々たるグローバルブランドです。ですが、ここフィリピンでは極めてローカルな扱いを受けています。

まず、生息地域。私の知る限り、RCはマニラ首都圏に限られて存在しています(もしかしたらセブやダバオにもあるかもしれませんが、確認していません)。バラック同然のトロトロやサリサリに掲げられた、RCの色褪せた看板を目にしたことのある方も多いでしょう。

そして驚くべきはその価格。8オンス瓶の希望小売価格は5ペソ。Cokeの半額です。

RC 8oz流通は8オンスと1リットルのガラス瓶が中心。コンビニには1.5リットルのPETボトルや355ml缶もあるようですが、メジャーとはいえないでしょう。

この、ある意味で入手困難なコーラを求めて、先日キアポ界隈を探索してきました。LRTをカリエド駅で下車し、中華街周辺を探すも姿は見えず、そのまま30分ほど彷徨。ドロテオ駅近くのレクト通りを若干北へ入ったあたりのサリサリでようやく発見することができました。

ここで購入したRCは1本6ペソ。昔日本で売られていたRCは砂糖全開の「濃い」コーラでしたが、本品はPEPSIを少し甘さ控えめにしたような、これまた飲みやすいコーラでした。

その時は人工甘味料の味は感じられませんでしたが、もらってきた王冠の原材料表記によると砂糖、高果糖液糖、アセスルファムKの3本立てのようです(これもコストダウンのため?)。酸味料もリン酸、クエン酸の両方が使われており(通常はリン酸のみ)、そのためか心持ちフルーティーな味わいとなっています。

恐らくフィリピンのコーラとしては最安値を誇るRC、今後も生き延びて欲しいと思います。

ビサヤの味?「JAZ COLA」

JAZ COLAずっと「JAZZ」COLAだと思っていたのですが、改めて確認してみたら「Z」はひとつでした。

主にビサヤ圏で販売されているらしく、マニラでは一度だけ見かけたことがあるものの、それきりです。

何度かビサヤを訪れる機会を持ちながら、結局試飲をすることができなかったので、セブ駐在の中野特派員にレポートを送ってもらいました。

このコーラはセブのサリサリストアーのみで購入できるローカルコーラである。もちろんPETボトルや缶入りはなく、瓶のみの販売となっている。値段もCoca-Colaより2ペソほど安く、庶民の飲み物と言えよう。

味はと言うと、Coca-Colaにそっくり、RCのような化学の味はまったくない。しっかり飲み比べると、少し甘みが抑えてあるような気がするが、気になるほどの違いではない。

お客としてフィリピン人宅にお邪魔した際「ごめん今Cokeが無いの、JAZでいい?」と言う風に聞かれることがよく有るのだが、日本で言うビールと発泡酒のような扱いなのであろうか? 僕には飲めればどちらでも良い。いや、安いJAZのほうがセブではお勧めである。

「化学の味はまったくない」とありますが、実際には人工甘味料(アセスルファムK、ネオテーム)が含まれているようです。

謎。「Cool na cool Cola soda」

Cool na cool太平洋戦争の激戦地として有名なレイテに近いビリラン島。ここに友人を訪問した時、スーパーマーケットで偶然発見したコーラがこれ。荷物が重くなるから嫌だなあと思いながらも、コーラとの出逢いは一期一会と思い直し、購入。

微妙にCokeをパクった絵柄と、謎のアニメ調少女のコンビネーションが否応なくテンションを高めてくれます。300mlのPETボトル(しかもベコベコ)入りで7ペソと、値段もリーズナブルです。

レイテ限定商品かと思いきや、製造元はマニラ首都圏のマラボン市ということになっています。案外色々なところで手に入るのかもしれません。

冷蔵庫で2か月くらい寝かせておいたものを今飲もうとしたら、まずキャップが開かない! 安物のミネラルウォータでもよく起こるのですが、キャップを封印しているセーフティー・リングがうまく外れないのです。

無理矢理引きちぎってフタを開けると、予想外に強いアロマが漂ってきました。バニラとシトラスを中心としたケミカルな香りで、ちょうど日本のスーパーで1本50円くらいで売られている廉価コーラのようなフレーバーです。

味は…。なんだかこれまでにない斬新な味、と思ったら、全くの無炭酸。原材料表記には炭酸使用とあるから、いつの間にかすっかり抜けてしまったのでしょう。この薄々ボトルと適当なキャップでは、止むを得ません。

微妙にサッカリンぽいテイストを感じなくもないのですが、甘味料は砂糖のみとなっています。酸味料にクエン酸のみを使用しているのも少し珍しいケースです。おかげで酸味が柔らかく、逆に言えば刺激が足りないかもしれません。これで強炭酸だったりしたら、それはそれで旨いかもしれませんね。

ローカルコーラの王道を行く、何だか心和む一品でした。

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私が2年弱の間に発見したローカルコーラはこれが全てですが、甘い物好きのフィリピンのことですから、他にも未知のコーラが存在する可能性は高いと思います。もし発見した方がおられたなら、ぜひ私までご一報ください。