コーラ白書
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2001年4月号
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速報!! Pepsi Taste Challenge

中本 晋輔

地方に住むペプシファンの中には、4月28日を心待ちにしていた方も多かったことだろう。東京で先行スタートしていたペプシの公開比較実験「ペプシテイストチャレンジ」がこの日全国7都市で始まったのだ。もちろんコーラ白書の本拠地・大阪でもこの企画はスタート。ならば行かないわけにはいくまい。

★ ★ ★

人・人・人

我々が阪急梅田・ビッグマン前に到着したのは夕方6時過ぎ。この阪急ビッグマン前というのは大阪屈指の待ち合わせスポットであり、なかでも土曜の6時となるとその混雑は最高潮に達する。この時間帯にここで人と会うのはかなり困難なので、通はビッグマンの前ではなく上で待ち合わせをする。まぁ、それくらい混雑する場所なのである。

その雑踏のなかでもひときわ密度の高いところが特設会場であった。前日の夜おっちゃんが遅くまで大工作業をしていたその場所には立派なステージとブースが出来上がっていて、背後の黄色いボードには「21世紀のコーラを決めよう」のスローガンが華やかにライトアップされている。スピーカーからはクラブ系の音楽が流れ、いかにもペプシらしい会場の雰囲気に否が応でも期待は高まる。

この「ペプシテイストチャレンジ」というのはご存知のとおり、ペプシとコカ・コーラを実際に飲み比べてどちらが美味しいか決定してもらおうという意欲的な企画である。この原型は1974年から米国で行われた「PEPSI Challenge」で、このテストで米ペプシはコカ・コーラに2:1で圧勝している。

テスト方法はいたって簡単。パッケージをカバーしたコカ・コーラとペプシが用意されていて、被験者はコップに入ったそれぞれのコーラを順番に試飲。美味しいと感じたほうを選んだ後、スタッフが缶のカバーを取り選んだのがどちらのコーラだったのか確認する、というものだ。(詳しくはPEPSIホームページ参照)

会場にはこのイベントに参加しようと多くの人か列をなし、なかなかの盛り上がりを見せていた。並んでいる人の多くは20歳前後の男性で、待ち合わせのついでに来たのか携帯を気にしながら待つ姿も見られた。その中に、コーラ飲みそうもないようなおばちゃんが結構混じっていたのには驚いた。タダでジュースが飲める+プラス参加賞がもらえるとあれば、大阪のおばちゃん根性が黙っていないのかもしれない。

参加しようしてみよう

見ていてもしかたがないので、我々もとりあえず参加することに。思ったよりも並んでいる人は多く、列は舞台の裏側までぐるっと続いていた。最後方にはスタッフひとがディズニーランドのアトラクションさながら「最後尾」のプラカードを掲げて整理にあたっている。この時点でかなり萎えた我々だったが、仕事のためと思って列に加わる。

試飲は4つのブースで同時に行われているのだが、一人一人が試飲するとあってなかなか前に進まない。その間ずっとおねーちゃんのトークを聞きながら待つことになるのだが、これがなかなか面白かった。

「ペプシテイストチャレンジはどちらがペプシコーラかを当てるイベントではありません!」

・・ペプシが我々に挑戦してどうする。しかしきっとこういう勘違いをしていた人もいたんだろうなぁ。

また話によると、「コカ・コーラ vs ペプシ」の他に「ダイエットコーク vs ダイエットペプシ」の飲み比べもできるらしい。公正なじゃんけんの結果、私(中本)がダイエットを担当する事になった。

中橋の決断

20分ほど待ったあと、一足先に中橋がブースに入った。「コカ・コーラ vs ペプシ」のテストを頼むと、スタッフのおねーちゃんはカウンターの下から手馴れた手つきでセットを取り出す。これは小さな回転台にコカ・コーラとペプシ、それに紙コップ2つが載ったもので、紙コップには1/3くらいコーラが注がれている。缶には「LET YOUR TASTE DECIDE」と書かれた白いカバーが被されているので、当然どちらがペプシなのかは分からない。

準備が揃うとおねーちゃんは回転台を何回か回し、手元にあったゴングを鳴らすとおもむろにこう言った。

「それではペプシテイストチャレンジ、スタート!」

このときのおねーちゃんの若干変なアクションも気にせず、右のコップに手を伸ばす中橋。口に含んでからゆっくり味わうのはコーラ白書の試飲会の時とおなじやり方だ。二つ目も同じよう試飲した彼は一瞬間を置いて「こっち」と左側を指差した。

カバーを取ってみる。そこにあったのは、「No Reason」と書かれた真っ赤な缶であった。

「お客様が選ばれたのはコカ・コーラでした」とおねーちゃん。ここでペプシを選んでいると「これからもペプシを〜」みたいなコメントが入るのだが、もちろん今回それはない。参加賞のストラップとアンケート葉書が手渡され、彼のテイストチャレンジは終了。

「分かりやすいわ」

と私に言い残して、中橋はステージを降りていった。

「カロリー、気になりますか」

で、次は私の番である。先のじゃんけんの結果により「ダイエット」を選ばざるを得ない私はその旨をおねーちゃんに伝える。と、彼女は笑いながらこう言った。

「カロリー、気になりますか」

一瞬言葉に詰まる私。うう、たしかに最近体重は増加傾向にあるし、学会を1ヵ月後に控えしばらく体重が減ることはないだろう。確かにかカロリーは気になるさ。でも、この台詞はマニュアルどおりなのかもしれないけど、初対面でいきなりそんな事言わんでもええやんか!

思わずムッとしたのが分かったのか、おねーちゃんはそれ以上なにも言わなかった。しかし彼女、そしてペプシにネガティヴな感情を持ってしまった私は心の中でこう誓う。

「絶対ペプシは選ばない」

すぐに私の前にセットが一式用意され、ゴングがテイストチャレンジの開始を告げる。右のコーラを一口飲むと、アスパルテームの香りが広がった。間違いなくダイエットコークだ。一方左のものは甘味料臭さがほとんどなく、どこかアンバランスであるが飲みやすい。こちらがダイエットペプシだろう。

私は黙って右を指差した。中にあったのは、もちろんダイエットコークであった。

「お客様が選ばれたのはダイエットコカ・コーラでした」と屈託なくおねーちゃんが言う。使い道のよく分からない参加賞の「ペットボトルストラップ」を受けとって、若干の罪悪感を覚えながら会場を後にした。

これだけの話である。

★ ★ ★

今回の「ペプシテイストチャレンジ」で興味深かったのは、ペプシはテストの結果をオフィシャルに記録していない点である。アンケート用紙に「どちらのコーラを選びましたか」という項はあるが、母集団が偏りがちなアンケートの結果だけでは信憑性に乏しい。ブースを見ている限り、コカ・コーラとペプシの比は50:50くらいだった。このキャンペーンの目的は「PEPSI Challenge」のようなコカ・コーラとの直接対決ではなく、話題性なのかもしれない。

気になったのがもう1点。チャレンジ終了後、被験者がどちらを選ぼうとスタッフはコカ・コーラ製品にだけすぐにカバーをつけるのだ。これはペプシのブースにコカ・コーラがあることでライバルの宣伝になるのを防ぐためなのだろうか。この企画のマニュアルなんかも読んでみたいものだ。

ああ、それとこれは個人的な意見なのだが、私はダイエットペプシはダイエットコークより美味しいと思う。アスパルテーム+新甘味料アセサルフェムKの組み合わせの効果は大きく、特に人工甘味料独特の後味が格段に改善される。コカ・コーラがこの甘味料ブレンドを採用しないかぎり、ダイエット市場でのペプシの優位は揺るがないだろう(スプレンダ、という手もあるが)。

その後我々がどうしたかというと、阪急8番街のペルーレストラン「クスコ」でインカコーラを飲み、唐辛子の肉詰めに大いに満足して帰ったという噂である。


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