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「売れ! コカ・コーラ」メモ帳

中本 晋輔

「Coca-Cola」の前につくキャッチといえば何を思い浮かべるだろうか。おそらく"Always"や"Enjoy"が定番で、新しいところでは"No Reason"なんかもあるだろう。しかし中にはハッとさせられるような強烈なキャッチの入ったものも存在する。今回紹介するのはそんなCoca-Colaのメモパッドである。

このB6サイズのメモ帖は1988年に製造されたもので、黒地に銀文字というシックなデザインが目を引く。表紙中央にはCoca-Colaのロゴが大きく斜めにエンボスされているという手の凝んだ一品なのだが、問題はそのキャッチ。"Sell Coca-Cola"、つまり「売れ!コカ・コーラ」なのである。

実はこのメモ、88年に大阪で開催された「日本コカ・コーラボトラーズ会議」で関係者に配布されたもの。ご存知のようにコカ・コーラは各地域のボトラー・ボトリングによって製造・販売されており、親元である日本コカ・コーラの主催で年に一度このような会議が開催されている。当時は今よりも各地域のウエイトが大きく、コカ・コーラの売上は彼らの努力にかかっていると言っても過言ではなかった。日本コカ・コーラからすれば「頑張って売ってくれ」とエールを送りたいところだったのだろう。

この聞きなれないロゴは同年に発行されたコカ・コーラグループ内の雑誌"WE FEEL COKE"にも見ることができる(左上のロゴの部分)。ただここでは"Sell"の文字は見逃しそうなほど小さく、メモ帖ほどのプリミティヴなパワーは感じられない。あまりに直接的なので雑誌のほうにはちょっと遠慮が入ったのかも。

またこのメモの2ページ目には、"The Power of Coca-Cola"という筆書きのやたら迫力のあるイラスト(矢印か?)入っている。これらは「コンベンション・テーマ」と呼ばれるもので、会議ごとに決められたスローガンである。当時このテーマは先の雑誌の表紙をはじめ社内の様々なシーンで使われたようで、ノベルティグッズ(何故コンパス?)さえ作られている。ただこれは消費者向けに用いられておらず、一般にはほとんど知られていないのが興味深い。

慣れない我々には若干感じ悪く映るロゴだが、日本コカ・コーラとボトラーとの関係を窺うことのできる貴重な一品であることは間違いない。当時とはずいぶんシステムの変わった現在、このロゴは使われているのだろうか?


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